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60 ノノンのフルコース


→ノノン主観→


 ノノンです。

 いやーついに私の時代が来ちゃいました?ヒーローは遅れてやってくるものですから。あれ?ヒロインを狙ってるんでした。


 状況は良く分かりませんが、ミラちゃんが沙耶さんに、ほっぺをむにむにされてます。


「悪い子はこうだー」

「ミラはもうしません」


 いつもの光景ですね。

 それを見て、そわそわしてるレムさんもいつもどおり。揺れる尻尾が可愛いですね。

 尻尾?尻尾ってありましたっけ?


「レムさん、尻尾を触らせて貰ってもいいですか?」

「はい、どうぞ?」

「ありがとうございます」


 うわあああ。


「最高ですぅぅ もふもふだぁ」


 あれ?沙耶さんがちらちらとこちらを見てますね。触りたいけど、恥ずかしくて言えないといった所でしょうか。

 むふん。ママに任せてください。


「皆で一緒にもふりましょう!」


 沙耶さんだけ誘っても、クールぶって断られそうですし。


「行こ、沙耶ちゃん」

「ううん。仕方ないなあ」


 レムさんの尻尾がピクン!と嬉しそうに、反応しました。

 ぐいぐいとミラちゃんが沙耶さんの手を引っ張ってきます。ナイスですよ。沙耶さんのクールぶった顔が崩れかけてます。


 仲良く3人で、もふもふします。

 くすぐったそうに身を捩るレムさんもまた良いですね。容赦しませんが。

 もふもふ〜。



 ぐぅ〜。


 あれ?お腹が鳴ってしまいました。

 そういえば、もう夕方ですね。


「ノノン、お腹空くの早くない?」

「沙耶さん、聞いてくださいよ!食堂で無料で食べれるという噂を聞きつけて行ってみたら、豚の餌とかいうメニューでガッカリの味だったんです」


 沙耶さんとミラちゃんが、うえって顔をした。


「あーあれ、食べたんだ」

「ミラは食べたく無いな」

「隣りの学生が、ふっとか笑ってくるし最悪ですぅぅ。でも他のメニューは、街で食べるより高いし。そうですよ!あの高級フルコースなんていったい誰が食べるって言うんですか!高すぎます」


 何故か沙耶さんが気まずそうに目を反らし、ミラちゃんが美味しそうな顔をした。


「ははは」

「美味しかったよね、沙耶ちゃん」

「え?・・・もしかして、皆さん。私を差し置いて食べたんですか?」


 嘘ですよね?沙耶さんが顔を合わせてくれません。レムさんの声が上から聞こえます。


「・・・」

「申し訳ありません、ノノンさん」

「ママも、フルコース食べたいですうう」

「ミラもまた食べたいな」


 ミラちゃん天使!

 沙耶さんが、はぁーってため息をつきました。


「今夜はフルコースにしよっか?」

「沙耶さん!」

「沙耶ちゃん!」


 思わず、2人で沙耶さんに抱き付きます。

 フルコースゲットです!


 あの学生に、今度はノノンが鼻で笑ってやります。ふっふふ。

 ここに就職して良かったーーー。


「ミラ、お着替えしてくる!」

「マスターお手伝いします」


 待つこと少し、お姫様が現れました。ミラちゃん可愛いです。


 歩いている途中、ガラス窓に映った並んで歩く4人をちら見します。まるで、どこかの姫の一団のよう。


 お姫様のミラちゃん、姫騎士の沙耶さん、有能メイドのレムさん。

 私は、さしずめ使用人といった所でしょうか。ミラちゃんも冴えない同盟だったはずなのに。悲しいです。


 すれ違う武芸者ルックの少年達も振り返りぽーとした顔で見てきます。

 この学園は女性が少なめなので、ついさっきまで私はこれでも、合流するまでは、かなり見られていたのですが、今は空気です。空気。


 食堂に着くと、沙耶さんが注文してくれました。


「フルコースを4つお願いします」


 あれ?ボーイさんが出て来ました。

 ひええー。

 さすが、フルコース!


「これは、一文字様。ようこそ食堂へ。席まで御案内します。希望は御座いますか?」

「空いてる席にしてください」


 食堂は混んでおり、離れた端の方になりそうです。沙耶さんは右端を見ました。


「はて、何処でも空いていますが? 遠慮などなさらず」


 ボーイさんが驚いた顔をした後、不思議そうに、指をポキポキ鳴らしながら、ニッコリと笑顔になりました。


 それをトリガーに、近くにいた生徒達から、敵対的な視線を感じました。「ちっ、一文字が」「不正にルーレット操作しやがって」「竜槍潰して調子に乗りやがって」ボソボソ悪口が聞こえるんですけど。

 な、なんですか?


「いえ。迷惑かけたくないので、人の座ってない席がいいなぁ」


 慌てる沙耶さんが可愛いです。

 いったいボーイさんが何をしようとしていたのかが気になりますが、沙耶さんの言葉で「おい、僻むなよ」「そうだ、一文字は悪くない」と、擁護が入るようになった気がします。


「ほぅ。本当にそれを望まれますか? 一文字様」

「はい、一学生として、当然の事です」


 ボーイさんの目が驚愕に震えました。


「当然!? 王族でも、このような要求はされないのに」

「ええー?普通ですよ」


 困惑する沙耶さんに、ボーイさんが一礼をしました。ただならぬ雰囲気がします。


「素晴らしい! 分かりました。少々お待ちください。仮想決闘場、オーダー。VIP席を!!!」

『受理しました』

「ええ?な、何を?」


 沙耶さんが酷く慌てています。

 どうされたのでしょうか?

 ボーイさんが腕まくりすると、オラァ!と近くの机を蹴り上げました。空中へと浮かび上がり、机とその上の食べかけの料理が消失します。

 机と一緒に、目の前の料理が消えた生徒達が、フォークを持ったまま固まります。ボーイさんは、彼らを蹴散らすように次々と、蹴りを叩き込んでいきます。


「オラァ邪魔だ!ゴミ共め」

「「げふぅ!」」

「ふざけんな、俺はシェフの気まぐれコ。ぐふあ!」


 ぽっかりと空間が出来ると、空中に現れた豪華な机と椅子がふわふわと降って来ました。


「( ´ー`)フゥー...近頃は喋るゴミが多くてイカンな。一文字様お待たせ致しました」


 ボーイさんが満足そうに急拵えのVIP席まで、エスコートしてくれます。


「わあああ、沙耶ちゃん楽しーー。ミラだったら、空間を拡げるようにスマートに追加するんだけど、旧式の仮想ルームならではの凝った演出だ」

「はー さすが、フルコースですね。ママもビックリです沙耶さん」

「ふふふ」

「沙耶様、お顔が優れないようですが?」


「ええ?沙耶ちゃん大丈夫?」

「ふふ。ありがとうミラ」


 席につくと、舌が蕩けるようなコース料理が小気味よく運ばれてきます。

 貧民どもの恨みの視線が、いいスパイスになっています。


「あああ、美味しいですううう」



【次回予告】


 闘技大会のための鍛錬

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