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40 クラン『一文字』結成


「うへへ」


 嬉しい。凄く嬉しい。

 ミラは今とっても幸せです。


 大勢の怖い人達の中から、格好良い沙耶ちゃんに連れさられた。

 しかもね、お姫様だっこされてる。


 思わず顔がにやけちゃう。

 まるで王子様。

 囚われのミラ姫を、沙耶王子が迎えに来てくれた。

 抱かれてるから、凛々しいお顔がすっごく近いの。

 はぁドキドキする。


 沙耶ちゃんのお顔はシュッとして整ってる。黒い瞳に長い睫毛。格好良い!

 シュッシュッシュッ!


「ミラ、ちょっとじたばたしないで」

「はーい。了解です」


 興奮しすぎてたみたい。

 ちょっと恥ずかしい。熱くなったほっぺたをそっと押さえる。


 沙耶ちゃんに抱かれたまま人混みをかき分けて、すいすいと進んでいく。揺れる振動が気持ちいい。


 出口が見えてきた。あぁ・・夢のような時間は終わりを告げるのかな。きっと終わってしまう。素直に言えば、もっと長くこうしていたい。

 でも、わがままは言いません。

 王子様の困った顔は見たくないから。

 

 会場の外まで颯爽と連れ去られて、外の陽射しが当たると、そこで魔法は解けた。

 お姫様はただの村娘に戻る。

 すとんと、降ろされて元の日常に。


 これも悪く無いんだけど、さっきのを知っちゃうとなぁ。

 

 良かったなあ。

 すっごい良かった。

 もう、にやにやが止まらないよお。



「ミラどうしたの?」

「何でもないよ、沙耶ちゃん!えへへ」


 なんていい日なんだ。


 ルーレットくん、貴方を見直した!

 君は凄かったんだね。

 しょーもなって思ってたけど、こんな特典があるなんて知らなかった。はー、これは皆が夢中になるわけだよ。


 そうだ!


 帰ったら、ビタ押し出来るゴト魔道具を作ろう。たぶん、簡単に作れると思う。

 朝のルーレットは、運とか偶然を演出してるみたいだったけど、お粗末な擬似乱数だったから、割り出してしまえば、実は狙った所で確実に止められる。んーと、解析完了。何で皆それが分らないんだろう。気付かないふり?まぁいいや。

 もちろん、狙うためには、凄く早く押さないといけないんだけど、そこは低周波の微弱電流を利用して直接筋肉を動かせばいいだけなので、これならミラでも失敗しない。

 おぉ、明日も1万点ゲットだぜっ


 今日のミラは冴えてる!


「うへへ」


 明日が今から楽しみだ。

 おっと、沙耶ちゃんにジト目で見られちゃった。でも明日まで内緒です。

 ミラ姫は沙耶王子のお迎えを待っていますので。お姫様ならそれらしくした方がいいかな?えーと、お姫様っぽいドレスなんてあったっけ?


「レム、レム 明日は可愛いドレスが着たい」

「はい、マスター。ですが、私にはサイズしか判断出来ません」


 もう、役立たず。

 まぁこればかりは仕方ないんだけど。


「なあに?ミラ、お洒落に興味が出てきたの?」


 沙耶ちゃんは、優しいなあ。頼りになるなぁ。ついでに、おねだりしてみる。


「うんっ沙耶ちゃん。明日はドレスが着たい・・・」


 欲張りすぎたかな?

 つい聞いてしまったけど怖いよ。


「そう?なら、帰ったら選んであげる」

「ありがとう、沙耶ちゃんっ!」


 杞憂だった。

 うわーい。


 へぶっ!


 抱きつこうとしたら、伸ばした手でガードされた。いじわる。

 むうう。


「ミラ、登録しに行かないの?」

「行きます。」


 おっとと、忘れてた。

 沙耶ちゃんとクランになるのは、最重要イベントだよね。

 移動円陣に入り、沙耶ちゃんが5Fを選択すると、転移してミラ達は磨かれた床を踏みしめると、昨日見た、金髪パーマの貴族のような男が待ち受けていた。

 

「やあ!沙耶さん、偶然だね」


 ・・・偶然?

 偶然なのかな、待ち伏せしてたように見えたんだけど?ミラの気のせい?

 うーん。対応は沙耶ちゃんにお任せしよう。


「ええと、ビオさんでしたっけ?」

「覚えてくれたんだ、嬉しいなあ。良かったら、案内させて欲しいな」


 沙耶ちゃんも戸惑ってる。


「は、はあ?」

「何、ちょっとした親切ってやつさ。僕はここが長いから何でも聞いてくれ。これから、長く顔を合わせるんだ。どちらかがランクアップするまで仲良くやろうよ」

「ありがとうございます。そういう事なら、案内をお願いしてもいいですか?」


 トンッと胸を叩き嬉しそうに、案内してくれるようだ。どうやら悪い人では無いみたい。

 案内されるまま付いて行く。

 すんなりと、空き部屋に到着。

 昨夜聞いた話だと、部屋の扉に、クランプレートを取り付ければ、それでクラン結成が出来るらしい。


「・・・ところで、クランプレートはもう持ってるかな?」

「ええ、お兄様から託されてきましたので」


 沙耶ちゃんは、大事そうに『一文字』と書かれたプレートを取り出した。


「へー、これが噂の一文字か。随分と達筆だね」

「ありがと」


 兄の文字を褒められて、えへへと沙耶ちゃんが微笑んだ。

 反則級の笑顔に、貴族の人の顔が、うっと詰まる。

 あーあ。ミラが褒めれば良かった。

 うっかりしてた。


「さぁて、ミラ。クランを結成するよ」

「うんっ!」


 二人で仲良く、扉に『一文字』のプレートをはめる。


「その前にミラ。あれはキチンと覚えてる?」


 不安そうに聞く沙耶ちゃんに、レムと目配せして、自信たっぷりに頷く。


「「ばっちり!」」


 沙耶ちゃんがキリリとコールをかける。


「行くよッ!!!」


 深く息を吸い込み、3人の呼吸を合わせる。私達は一つに。


「「その刀は曇り無き心!!」」


 声が綺麗に揃った。

 貴族の人は、何事かとびっくりしてる。


「「穢れなき魂で世界を刻め!!」」


 うぷぷ。ミラも最初はそうだったけど今度は言えるもんね。


「「我ら一文字はぁ、世界最強!!」」


 重ねた手が、『一文字』のプレートを主が不在の扉へと押し込む。

 美少女達に命を吹き込まれた空白の部屋は、最強のクランとして産声を上げた。



 クラン『一文字』結成!




【次回予告】


 恋する少年


 少年は、エキゾチックな黒髪の少女に初恋をした。彼女の名は、一文字沙耶というらしい。なんと素敵な響きだ。

 明日は、負けられない戦いが始まる。

 戦いの準備は万全にせよと爺やが言っていた。待ち伏せが有効だろうか。

 第一段階が成功したっ!!やったぜ僕。あとは、どう攻略すべきか?


 少年は、無謀にも魔王へと戦いを挑む。


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