25 ミラの誤算
学園長とは仲直り出来てたらしい。
ふぅぅ、良かったぁ。ミラは、やらかしちゃう事がたまにあるから、怖かった。
危ねーぜ。
憑き物がおちたかのように穏やかな顔になった学園長を見て安心する。
「御馳走様でした。一文字沙耶さん。何か御座いましたら便宜を図らせて頂きましょう。こう見えて学園長なので、期待していてください」
「そんな・・便宜だなんて。私は観戦料を支払っただけです。見事な死合でした」
「くはは、そう言って貰えるとあの敗北も救われる。 貴女は斬鉄さんに似て、高潔なのですね。失礼致しました。それでは、ミラ様。またお会いしましょう」
「バイバーイ。学園ちょー」
学園長から『ナマクラロングソード』を手に入れた!
これで、ミラも一端の剣士に近付いたと思う。玩具みたいなビームサーベルとは今日で卒業です。
そうだ!沙耶ちゃんに見てもらおう。刀は触らせて貰えないけど、これでミラも剣士の仲間入りかも。
もしかしたら、格好いいって言ってくれるかな?
「うへへ」
「ちょっと、ミラ。よだれ!」
「沙耶様。失礼致しました。はい、マスター綺麗になりましたよ」
「沙耶ちゃん、見ててね。刮目せよ 我が名は、一文字ミラぁ・・ぁぁっ!?」
ふぅぅうううう。
ふんっふんっ!
力を入れてみるものの、イメージと違って全然持ち上がらないよ?重すぎる。
沙耶ちゃんの前で、ロングソードを格好良く構えようとしたのに、ふぁ駄目だ。
「うぅ、・・・重い」
「マスター。部屋までお持ち致しますので」
腕がぷるぷるしてる。
学園長は、あんなにブンブンと軽そうに振っていたのに、見た目より、これはすっごく重かった。
学園長は凄かった。
こんなの振り回せるとか。
『くすくすくす・・・』
周りの人達の笑い声が聞こえてきた。視界に写った魔術師風の同年代の女の子まで笑ってる。
ちょっと、貴女にも無理だと思うよ? あぁ!でも万が一、持ち上げられたら!
うあああ恥ずかしいよ。こんなはずでは無かったのに。不覚。てててっ、と気付けば遁走していた。
沙耶城を目指して緊急避難。
真っ赤な顔を冷やすように、風をきる。ミラには、ロングソードデビューは早かったなんて。
「ミラったら、やれやれ。 御馳走様でした、美味しかったです」
「一文字様、それはコックも喜ぶでしょう。またのご利用をお待ちしております」
後ろで沙耶ちゃんの声が聞こえたかと思うと、あっという間に追いつかれた。
「ミラ〜。走ってたらコケるよ?」
「はーい ミラは走りません」
仲良く手を繋いで、帰途につく。
逮捕されちゃった。
走ったせいか、心臓がドキドキしてるよ。痛い。
ちなみに、レムはとても軽そうにロングソードを持って後から付いてきた。レムは未来の私だから、そのうちミラにも持てるはず?
でも、少し盛っちゃったから、難しいかも。持てるかどうか怪しい。
お風呂に入ってパジャマに着替えて。
そうそう、沙耶ちゃんの身体は凄く綺麗だったな。まるで彫刻みたいに引き締まって艶々してる。ただ細いだけのミラとは大違い。
憧れるなぁ。
ミラは、ちんちくりんだから。
せめて早くレムみたいになりたい。
ごくごく。
だから、ミルクを飲んでみたけど。
けふーっ。
お腹いっぱいです。
「沙耶ちゃん、沙耶ちゃん」
「あー、もうミラ邪魔しないで」
頭をガリガリしながら、沙耶ちゃんはさっきから書類と格闘中。
むー、遊んでくれない。
どうせ書類なんて終わらないのに。
その仕事は、沙耶ちゃんには向いてないと思う。もちろん、ミラにも向いてない。
ふわあ、なんだか眠くなってきた。
目を、ごしごしする。
沙耶ちゃんのお日様の匂いがするマクラを抱きしめて、一人だと広いベッドに向かう。
部屋の奥から、レムと沙耶ちゃんの話声が聞こえたような?
「従者研修のため、明日から私はご一緒出来ませんが、沙耶様、マスターの事をお願いします」
「うん。任せてレムさん」
一夜明けてミラはぐずってた。
「レム、なんでついて来ないの?」
「ですから、マスター。先程も申し上げたとおり規則ですから」
駄目だ。レムは頼りにならない。
ねえ、このポンコツを説得してよ。とキラキラした目でお願いした。
出来るよね?
「沙耶ちゃん!」
「はーい、ミラさん行きますよー」
「うわああ。沙耶ちゃんの裏切り者ーー。ミラはレムと一心同体なのに」
「・・・諦めなさい」
ずるずると、引かれて運ばれる。
もう少し、お姫様だっことか優しく運んで欲しいのに。
もう、こうなったら覚悟を決めよう!今日は沙耶ちゃんから片時も離れない覚悟を。
「うへへ」
「ミラ、さっさと行くよ」
じと目で見られた。
ヤバいバレたかも?でもミラはミッションを完遂するんだ。
「うん。沙耶ちゃん!」
【次回予告】
初体験
ドキドキしながら、ルーレットを回せ