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24 ディナーで仲直り


「はあはあはあ。  沙耶ちゃんごめんね?」


 やっと追いついた。

 沙耶ちゃん早すぎるよお。乱れる息を整えると空き地に到着していた。見上げると沙耶ちゃんは泣きそうな顔をしていた。

 ミラが悪いんだ。


「マスター、ここに私達の家を建てましょう。沙耶城を!」

「分かった レム」


 空滑りする意識の中、言われるままに、アイテムボックスからドーンッと家を出すと、1秒で引っ越しは完了。沙耶ちゃんが選んだ、ファンシーな沙耶城だ。

 建物の中に一緒に入ると沙耶ちゃんに抱きしめられた。

 うわっぷ。くんくん 良い匂い お日様みたいだ。ふあああー。


「ミラ、ごめんね。私、嫉妬したみたい」

「ううん。沙耶ちゃんは悪くないよ」


 ぷるぷると首を振ると、沙耶ちゃんは指で涙を拭いニカッと笑った。

 ふおおおおおおお、格好良い!いつもの沙耶ちゃんだ。


「そうだね、悪いのは全部、学園長だから」


 うんうん。と激しく首を振って同意。ミラは悪くない、悪いのは、あのポイントだ!そうだ!ポイントが悪いんだ。


「うへへ。そうだ!半分こしよう それがいい!」

「10万点をくれるって事? あのさー、ミラ。貴女はルールも読んでないようね!たった4行しかなかったのに」


 名案を思いついて提案したのに、なぜか沙耶ちゃんに叱られた。頭をぐりぐりされる。痛い、痛いから!ギブです、ギブアップです。


「悪いのはミラです!」

「そう。・・・ポイントの売買は管理者しか。 そうだ!それを使えば学園長と仲直り出来るかも」

「?」

「食堂に行くよ、ミラ」

「うんっ!沙耶ちゃん」


 頼れる沙耶ちゃんが何かを思いついたようだ。凄いよねーほんと凄い。


「ミラ、学園長を見かけたら何かを買ってあげて。たぶんお金に困ってると思うから」

「分かった沙耶ちゃん」


 買えばいいのかー。てくてくと後を着いていくと、学生食堂に到着。

 おぉっ、人がいっぱいいる。一文字家の食堂みたいだ。じいちゃんは元気してるかな?メニューは選べるみたいで、筋肉ムキムキの人が普通の料理を、元気の無い人が不味そうなスープをすすっていた。

 もっと美味しそうな物を食べないと元気出ないよ?


 メニュー表


 55 季節のフルコース

 5 シェフのきまぐれコース料理

 2 庶民定食

 1 貧民定食

 0 豚の餌


「フルコースを、4つ!」


 沙耶ちゃんが元気よく注文すると、周りの人達がざわざわとまるで可哀想なものを見るような視線で見てきて、その中でもおせっかいな生徒の一人が、空いた食器を片付けにきたついでに一声をかけてきた。


「お嬢さん達。よく考えないと、住む家にも困ってしまうぜ」

「忠告ありがとうございます」

「お節介がすぎたな。だが、素直なのは良いな 安宿に困ったら教えてやるよ。まぁ、一緒に頑張っていこう」


 沙耶ちゃんは笑顔でお礼を言っていたけど、1年分まとめて先払いしてるから、困ることはないんだけどな?変なの?

 注文してポイントを支払うと、料理ではなくボーイが現れた。


「お料理をお運びします。どちらの席が宜しいでしょうか?」

「そうね、学園長の隣りを希望します」

「はい案内しますので、ついてきてください。 すみません。ゴミが散らかっているようです。席を片付けますので、少しお待ちを」


 ボーイさんの後についていくと、隅の一角のテーブルに学園長はいた。同じく元気の無い人達と一緒に不味そうなスープをすすっている。

 ミラは飲みたくないな。

 ボーイさんが腕まくりをすると、元気のない人達の襟首を掴んだ。学園長の近くの椅子に座っていた元気の無い学生達が慌てる。


「「な、何をするんだ」」

「おらっ、ゴミ共め 邪魔だ! そらよっ  席を片付けました。お嬢さま達、後ほど料理をお届けしますので、しばしお待ちください」


 え? っと思ったけど、この学園ではこれが普通なのかな?投げ捨てられた学生達は文句を言うこともなく、こぼされた料理を片付けていた。ミラはよく常識が無いって言われるから、自信が無いよ。


「学園長、隣り空いてますか?」

「ああ?たった今、空いたみてぇだな」


 沙耶ちゃんが座ると、不貞腐れた学園長が不敵に笑った。

 学園長は不味そうなスープをとても上品に食べてる。もしかして美味しいのかな?


「それ、美味しいの?」

「くはは、初めて食ったが、すこぶる不味い!今の俺に相応しい味だ。 幸運なことに金持ちだったらしく、どうにか買い戻せたが、少し赤が出た。鉄斎のせいで、借金7,800ポイント(780万相当)から再スタートだ」


 とても不味い顔で舌を出した学園長は、誇らしげに新たなA級プレートを懐から出して見せつけてくる。

 しばらくすると、良い匂いのフルコースの4人分の前菜が運ばれてきた。ボーイが、当然のように学園長の豚の餌を下げて、コース料理を置こうとする。


「何しやがんだ! 勝者からの施しは受けねえ!」


 暴れる学園長。

 チャンスだ!

 沙耶ちゃんは、お金に困っている学園長から何かを買い取れって言ってたよね?

 この『豚の餌』をミラが買う!!

 ・・・駄目だ。そんなの買い取ったら食べないといけないし、ミラには無理だよう。

 ここはスルー。


「学園長、これはミラでは無く私のポケットマネー。勇姿を観戦していた。私からの観戦料です。 それに早く食べて頂かないと、せっかくのお料理が冷めてしましまいます」

「くはは。詭弁だな。さすがは鉄斎の孫娘。良いだろう、ありがたくご相伴に与ろう。稀代の新星 一文字沙耶よ」


 次々と運ばれてくるコース料理。

 ミラだけ、カチャカチャ食器の音を立てながら、料理がお腹に消えていく。

 美味しい。

 これなら、また食べに来てもいいかな。


「しかしながら、沙耶さん!入学試験ではフロストマンモスの猛攻に耐え抜くのには、度肝をぬかれましたぞ。1,000点!なんて初めて見ましたが素晴らしい」

「勿体ないお言葉です」


 ザワリと盗み聞きしていた食堂の生徒達がざわめく。

 そーだよ、沙耶ちゃんは凄いんです。すっごく自慢したいけど、黙っておく。ミラは学習する女の子です。


「正直見ていて熱くなったよ。今や愛剣は売り払い、こんな吊るし売りの模造剣になって借金まみれになってしまったが、俺も必ず復活するからな」


 チャンスだ!

 模造剣なら食べなくていい。


「学園長、その模造剣をミラが買い取ります」

「あぁ?何だと・・・・そうだな、いいぜぇ。安くしてやるよ、お値段なんと20万ポッキリ(2億円)だ。払えるのか?」

「いいよー」


 ノータイムで答えると、学園長の悪意たっぷりの顔が、鳩が豆鉄砲で撃たれたかのうようにびっくりする。

 そして学園長は、沙耶ちゃんを見て何かを確信したみたい。


「んぐっ、そうか。そういう事か。施しは受けないから、考えやがって でも、実際に売買契約を成立されたらどうするつもりなんだ?」

「?」

「くはは、参った!降参だ。勝てないよ。ひーひっひ、成立しても怒りはしないんだろうな。器がまるで違う!! そうか、鉄斎の策略なんかではなくアイツは認めたのか。ミラさん、一文字ミラさん。恥ずかしい話だが、金に少々困っていてね。ぼったくり価格になるが、この安売りロングソードを1万ポイント(1千万)では買ってくれないだろうか?」

「いいよー」


 おおっ、値引きされちゃった。ミラってお買い物上手?学園長から模造剣を渡された。

 ぶるぶると震えだす学園長、欲望に汚れた目は、天使ミラにより洗い流されて感謝に染まる。


「ぐふぅ、ありがとう。ミラ様。さすがは一文字の名を受け継ぐ娘。ありがとう、ミラ様ぁぁ」


 ガチ泣きする学園長を見た沙耶ちゃんが、苦笑いしてミラを見てきた。

 あれ?これって成功なの?どーなの?分かんないよ、教えて沙耶ちゃん。



【次回予告】


 ミラの誤算

 ミラちゃんは天使

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