15 暴走ノノン
空に浮かんだファンシーなドームハウスを見上げながら、斬鉄は困っていた。着痩せするのか、ふくよかな弾力を押し付けてくる初めて会ったメガネの少女に。たしかギルドから派遣されたノノンさんだったか。
「娘さん、そろそろ離してくれないかな?」
「あああ、斬鉄様すみません」
慌てて離れる少女を優しい目で見つめる。ミラに振り回されて突飛な行動に出た少女に悪感情はない。むしろ同じ被害者の会として、共感するまである。
「いや、一文字ミラが驚かせてしまったのだろう。気にしなくていい」
「なんてお優しい。結婚してくださいっ!」
・・・最近の若い子は、まるで宇宙人だな。ミラといいノノンといい。何をやってくるのかまるで分からんと、目頭を揉む。目まぐるしく変わる時代のスピードについて行けないとは年をとったか。
「気持ちは嬉しいが、ノノンさん。私はいまだ妻が忘れられない。それに娘もいる身だ。その、許してくれ」
「分かりましたっ!」
告白を断ったのに、ショックを受けることもなく元気いっぱいの少女。そうか、さっきのはただの冗談だったのだろうか。顔は悪くないからそういう事をしてると痛い目を見そうだが、そういうのが流行っているのか?と明後日の事を考える斬鉄だったが、トラブルメーカーのノノンは本領発揮する。
「はいっ! 娘さんの沙耶さんに、認められるよう頑張ってきますので、期待して待っててください。斬鉄様」
斬鉄は、驚愕に固まる。ぐぉっ・・凄い娘が来たなと。しかし、もうお別れだ。もしや魔王ミラが、このトンデモナイ娘を引き寄せたのか?そう考えるとしっくりくる。・・・もう、何も考えたくない。厄介事よ、一緒に消えされ。
「沙耶、頑張ってきなさい」
心を無にして、娘に全てを託す。
呆れた顔でアイコンタクトを受け取った沙耶は、脈絡もなく父親を誘惑したノノンに、さっそく冷たく当たっていた。
「ノノンさん、さっさと準備して」
「ひゃい」
ノノンが、沙耶に認められる日がくるのかどうか分らないが、浮かんだドームハウスを馬車に連結していく少女。適応力はあるらしい。
家が浮かんでいるんだぞ?それを疑問に思わないのだろうか?と思っていたが、疑問には思っていたらしく。
「ところで、一文字家では家を持ち運ぶのが普通なのですか?」
うっ・・・と言葉に詰まる斬鉄と門下生達。
誰も答えないので、ミラが元気いっぱいに答えた。
「うん。えへへ、じいちゃんとモンカセーの人達が教えてくれたんだ」
「凄いですね、さすがは一文字家」
「そうっ! 一文字は、世界さいきょーー!!」
興奮してぶんぶんと手を振るミラに、ノノンは素直に感激した。
ミラは言いたかったセリフが言えて満足だった。
斬鉄は、成長した娘にエールを送る。
「沙耶、存分に暴れてきなさい」
「はいっ!!」
「「行ってらっしゃいませ、お嬢様方!!!」」
カラカラと軽い音をたてて、荷馬車はゆっくりと、空に浮かぶ大きなドームハウスを引っ張りながら、アード学園のあるアリステリアを目指して出発した。
ドームハウスの中から、ひょこり顔を出した沙耶とミラとレムが手を振る。
泣いて見送る門下生達と、鉄斎。
たまらず鉄斎が走って後を追いかけ出すと、門下生達も飛び出した。街から出るまで、お見送りに行くのだろう。
「おおっ、じいちゃん達が走ってる。早いよ沙耶ちゃん」
「ええ、そうね。しばらく見なくなると、寂しく思うのかしら?」
新キャラのノノンを加えて、美少女4人の旅が始まった。
「「なんだ!?あれ」」
それに、驚いたのが街の住人達。
家が動いてるぞ。
「おい、家が動いてるらしいぞ!」
「どこでだ?」
「なんでも、一文字家の門下生達が持ち上げて運んでいたって話だろ」
「馬鹿かお前は!家を持ち運ぶなんて出来るわけがない」
「あるんだよなー、一文字なら。 見に行こうぜ」
幸運にも近くに辿りつけた野次馬達は、ペタンと尻もちをついた。
「「話が違うじゃねぇか、家が浮いてる!」」
後に彼らは、誇らしげに他所者へ語る。
知ってるか、俺らの街を守護する一文字家はよ、家を飛ばすんだぜ!そこらの動物やら魔物を狩って、最強を気取ってる奴らのなんてスケールの小さい事か。わっははは!
【次回予告】
女子旅
ゆる百合しませんか?




