表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/69

10 鉄斎の英断


 不穏な会話の流れに、他人事ではなくなった沙耶の動きが、ビタリと止まった。

 ただならぬ雰囲気に釣られて、全体の鍛錬も自然と一時中断。

 当主 斬鉄もそれを黙認し、話の行方を静観する。

 まるでメデューサに睨まれて石化されたかのように、戦いの途中の変なポーズで固まる下っ端の門下生達。

 この話の決着がつくまで、彼らは動けない。そういう空気。


 ちらちらと視線が沙耶に集まる。

 言葉に出さなくとも沙耶の言いたい事は、ミラ以外の全員が理解した。

『それだけは無いから、断って!』

 必死な目には、そう書いてある。

(ミラは親友だけど、友達として好きなの。だけど、そこまでは!!)

 これまた自然な反応である。

 1日なら良いが、365日ともなると。

 まだギリギリ、百合道へ堕ちていない穢れなき黒髪の処女は、悪魔の甘美なる提案を受け入れる器が出来ていないからだ。

 たまに幼児退行するミラとは違い、内面が年相応に成長した複雑なお年頃なのだ。

 もう10年若ければ、もう10年お姉さんなら、笑って受け入れられたかもしれない。

 でも今は、駄目。

 色々と考えてしまう。


 ミラへの答えを悩み続けているのか動きの無い鉄斎を見て、沙耶がしびれを切らして、ダンッ!と床を踏んで脅しを掛けると、周囲の弟子どもが気圧されて飛びのいた。

 自らかけた石化が解ける。

 まるで海を割ったがごとく、人垣が綺麗に割れると、沙耶と鉄斎とを繋ぐ道が出来た。

 よく通るようになった視線。

 瞳で殺す。

『しっかり、やってよね?』

 戦場で英雄が生まれるというが、本気の生き様が人を急成長させた。


 必技『覇気』


 一族の奥義をまた一つ開眼っ。

 この娘は秀才。一文字 沙耶


「「沙耶様が、開眼なされた!」」


 ざわりとギャラリーが、どよめく。


 追い詰められた計略家 鉄斎。

 魔王ミラの罠をぐっと耐えろ!

 そして孫娘の信頼を取り戻せ。

 頭を巡らせ、いつものように計略を仕込む起死回生の一手を考えろ。

 もちろん出来るよね?という孫娘 沙耶の全幅の信頼を一身に浴びる。

 ビシビシ浴びる。

 鉄斎は全てを丸く納める素晴らしい詭弁を思い付いた!ニヒルに笑う、やはり裏社会を支配する男だ。



 しかし、魔王は逃さない。

 一手早かった。

 沙耶の希望を背負う勇者 鉄斎を、追撃。

 無自覚に振り下ろす。

 圧倒的な強者は、小物に本気を出す必要なんてない。


「駄目・・・なの?」


 うるうると、上目遣いで見つめる。

 僅か、これだけだ。


 その瞳の奥には揺れる不安。

 また捨てられるの?

 そう言っているようにも取れる。


 鉄斎がぷるぷると震えた。

(ぐっはあ。無念!)

 これには、さしもの鉄斎もダウン。

 白旗を上げる。


「ええよ、ミラちゃん。もちろん、仲良しな二人は、同じ部屋で、同じ床を共にせい」


 なんと、鉄斎は魔王の手に堕ちて愛する血の繋がった孫娘を売った!

 ずぅぅんと、沙耶が真顔になる。

 ぱああ と、ミラが笑顔になる。

 このクソジジイは、実の孫娘を売り、見返りに甘美なる新たな孫娘の笑顔を獲得。


(ツンしかない孫より、デレデレの孫じゃあああああああ!)


 穢れた魂の咆哮。

 逆ギレるジジイ。



【次回予告】


 沙耶の覚醒

 格好良い沙耶ちゃんが見たいかい?

 成長する少女。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ