樹海帰りの怪
なろうラジオで読まれた作品です。
ただしほんの少しだけ文章を変えています。
これは……私が五年前の夏に、私の小説仲間から聞いたお話です。
その小説仲間は唐突に、自分がいずれ書く予定の二次創作作品の舞台を、某樹海にすると決め、心霊スポットマニアな別の友人をお供に、小説仲間の車でその樹海へ取材旅行に行きました。
カーナビで順調に樹海へ近づき、そして無事に到着すると、小説仲間はそれなりに整備されている道を辿って樹海の写真を何枚か撮り、作品のイメージを膨らませました。
すると、その時。
小説仲間の相棒たる友人が、こんな事を言いました。
「おい、なんか生暖かくないか?」
友人には霊感がありました。
そしてそれを知っていた小説仲間は、すぐに帰ろうと提案しました。友人はすぐに頷き、一緒に車でその場を離れました。
そして、移動を始めて五分も経ってない時でした。
突然カーナビの画面が乱れ、時々変な場所を指し示すようになりました。
まさか、心霊スポット特有の電磁波的なモノのせいか、と思った小説仲間とその友人は、
「カーナビはもう使い物にならない。こうなったら道路標識だけを頼りに帰ろう」
話し合った末にそう結論を出し、小説仲間はカーナビの電源を消そうとして……突然、そのカーナビの画面が砂嵐に襲われ、スピーカーからは激しいノイズが響きました。
不快感を覚えた二人。でもそれにめげずに、小説仲間はなんとかカーナビの電源スイッチに手を伸ばした……その時でした。
ケ ス ン ジャ ネ ェ ! !
ノイズと共に、そんな濁声が響いたのは。
驚き、間違えてハンドルを変な方向に切ろうとした小説仲間。だけど彼はすぐに我に返り、なんとかスイッチを切りました。
声は……もう聞こえなくなりました。
その後。二人はなんとか帰還しました。
けれど車は時々、故障するようになり……最終的に、小説仲間は車を買い替えたそうです。
そして廃棄した車は今、スクラップ状態で……今もどこかの廃車置き場にあるという……。