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そして…ご教授お願いします!

 翌日、リアは今日が最後になるので城から少し離れた岩場に有るらしい露天風呂へと向かった。

いい気なもんだ。


 俺はといえば、城の離れにある屋外の修練所でギリアさんに簡単な護身術や旅の中で続ける為のトレーニングメニュー等を教わっていた。


 …シュミカは側でそれを見学しているのだが…。

特に茶々を入れる訳でもなく、たまに自分にも出来そうなトレーニングメニューを真似したりしている。



 俺のそばにいる。

それだけで何かしらを企んでいるのは間違いはないのだが。


 そう言えばここに来る途中でエイナを見かけた。


 質素なワンピースをはためかせてパタパタと我々が歩いていたのとは少し離れた別の通路を走っていたのだが…。

声はかけないでおいた。


 どうかあのまま元気を取り戻してくれるといいと思う。


 願わくは、明日の出発の時も湿っぽくなく笑顔で、

「アサヒ、またね~」

とでも言ってくれて拍子抜けするくらいあっさりと見送ってくれると助かる。


 いかんいかん。

 せっかくギリアさんが自分の時間を使ってまで色々教えてくれているのだ。

集中しなければ!


 早朝から続いているそれは少し長くなってきたので、こちらに来てから多少は体力の付いた俺でも流石にキツくなってきた…。


 詰め込めるだけ詰め込もうとしてくれているギリアさんも流石に俺の体力の限界をみてとり声をかけてくれる。


ギリア「あぁ…ゴメン、ゴメン!

    少しスパルタ過ぎたかな…?

    大丈夫かい?」


俺「いえ…こちらからお願いしたんですから…。    

  自分の命もかかってますからね…。

  …でもちょっと休んで良いですか?」


シュミカ「ん…ヘタレ小僧。」


 黙れ!

 お前は半分以上木陰で遊んでいただろう!?


 その木陰に移動して少しの休憩に入る。



ギリア「いやぁ…私は大体個人で動く事が多いからね…。

    たまにこんな風に他人と行動するとすぐに感情移入してしまって…。

    本当は次の依頼なんか断って君たちに付いていてあげたいんだが…。」


俺「いやいやもったいない!

  …それに…、その依頼も旧知の人に頼まれた大きなクエストなんでしょう?

  俺達は日銭を稼ぐだけのヌルい旅ですからね…。

  心配かけない程度のものだけで出来るだけ安全にやっていきますよ。」

 

ギリア「立ち寄った街のギルドには小まめに登録しておいてほしいな。

    もし近くにいるのがわかったなら様子を見に行くからね。」


俺「ありがとうございます。」


 本当にいい人だなぁ…。


シュミカ「ん…そう言えばあなたはまだこちらの事を知らなすぎる。

     …例えば…そこの岩肌に空いている穴…あれは何だと思う?」


 来た!

俺はギリアさんに目配せをするが…


ギリア「…いや、私もわからないな…。

    あまり細かいことを気にするタイプじゃないからね…。」


 …流石に致命傷を負うような事を仕掛けては来ないだろうけど…。

恐る恐る穴に近寄り、中を確認しようとすると…


 シュウ…という音の直後に冷気とともに何かが飛び出してきた!


俺「ぁはんっ!!」


 間一髪それを避け、シュミカを睨むと…

腹を抱えて悶絶しているそれがいた。


シュミカ「……ぁはんっ!って…ひい…苦しい……あなたは僕を…ころす…気…?

     はぁ…はぁ……本当に酷い男…!」


俺「死にかけたのはこっちだ!

  イタズラも限度を知れよ!」


シュミカ「…ん…それは…

     『敵が近づくと空気中の水分を凍らせて針を飛ばしてくる蛇』の巣穴。

     とても危険…ギリアは気をつけて…。」


ギリア「あ、あぁ…気をつける事にするよ…。

    

    …アサヒ君……死ぬなよ!」


 …本当に俺の死因は『シュミカの暇つぶし』になるかもしれない…。


 とはいえ、その後はこういった些細な無知の為に命を落とす事も有るのだ…という話にすり替えられ、シュミカ先生の『生活のすぐ隣に潜む危険な魔物のレクチャー』が始まった。


 …これが今後このパーティで俺が生き残る為には一番必要な知識かも知れない!


 そうこうしていると、リアがフラフラした足取りで駆けてくる。


リア「いた…アサヒ、大変なのよ…!」


 普段はとんでもない楽天家で滅多に慌てたりしないリアがかなり動揺している。


俺「…どうしたんだよ…。

  替えの下着でも無くなったのか?」


リア「ぶち殺すわよ!」


 と、ぶん殴った後で言ってくれる安定クオリティを確認出来たので、本当に一大事らしい。


リア「髪留めよ!

   髪留めを盗られたの!」


 その髪留めとは、普段から身につけているリアの家の家宝であり、魔力をよそから分けてもらって自分のそれを底上げしてくれる特殊アイテムだ。

 類似品、いや…それよりも威力のある物が普通に売っていたりもするのだが…とんでもなく高級品なので、とても手が出ない!


 リアのレベルではそれが無いと普通の人間程度の事しか出来なくなるらしい。


 三人きりになった後の最大の戦力がそれでは流石にヤバイ!



シュミカ「…ん、犯人はこの男。

     さっき怪しい素振りで穴を覗き込んでいた恥知らずの覗き魔…。

     ん…間違いない!」


俺「目を潰そうとする蛇の巣穴だろ!」


シュミカ「…それにかなり興奮していた…。」


俺「恐怖と怒りでだ!」


シュミカ「ん、大丈夫…僕の回復魔法はよく効く…。」


俺「目が潰れても…?」


シュミカ「ん、それは無理。

     大ケガをなめてはダメ。」



 …いつか強くなったら…本気でコイツは捨てよう!


リア「そんな事はどうでもいいのよ!」


 そんな事!?いや、まぁそうだ…


リア「アレが無いと馬車もあの子も運べないのよ!」


 なんでお前は馬車を運びたがるんだ?


リア「あ、そうそう…犯人はわかってるのよ…。

   ほら、上を見て…。」


 言われたとおりに空を見上げると……獲物を探す様に周回している飛翔体…。


シュミカ「ん!あれは…いたる所に生息する… 

     『光る物が大好きで見つけると巣に持ち帰ろうとする黒い鳥』!」



 …あちらの世界では『カラス』の一言で終わるソレだ…。



ギリア「うん…どうやらこの上辺りに巣が有るようだね…。

    …今後リア君の魔力に頼れない機会もあるだろう。

    本当の卒業試験という事で、君たち三人で解決してみるといい。

    もちろん最悪の場合、少しは手を貸すけどね…。」


 城を囲む様にそびえ立つ…絶壁と言うほどではないが…かなり急な斜面の上…。

高さで言うと、4~5階位のマンション…と言ったところだろうか?


 他のルートが無いものかと考えもしたが、どうやらそれらのルートでは一日、二日では無理らしい…。


 登るしかないな…。


 今後命をかける機会も増える。

ここはサポートが望めるうちに色々体験しておくべきだ!

腹はくくった…。



 そして…俺は重度ではないが、ちょっとした高所恐怖症なんですけど…。


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