逆寝とられ
僕の名前は山岸良平と言う。高校2年の男だ。僕は良くも悪くも普通の人間だと自分で思っている。
「良平、どうしたの? なんか嬉しそう」
同い年の彼女である結香が尋ねてきた。そう、彼女! 恋人! 僕にも彼女がいる! 平凡な僕だけれども、恵まれていると思う。いや、高校生が男女交際をするのは普通なのかも。まあ、どっちにしろ僕が幸福なのには変わらないが。
「なんでもないよ。ただ、結香と付き合えて嬉しいだけだよ」
「も、もう! 良平ったら!」
結香は照れながら言った。はあ、やっぱりバカップルみたいなやり取りは良いね。満たされる。
ある日の放課後。
一応僕は部活に所属している。とは言っても僕以外は同級生の女の子が一人だけだ。結香ではない別の子だ。
「じゃあね、良平」
「うん、また明日ね」
「浮気しないでよー」
結香が冗談混じりに注意する。
「するわけないからね」
僕も冗談混じりに返した。といっても、絶対にする気はないけれども。その真意が伝わったのか、結香は満面の笑みになって去った。
僕は名残惜しげに恋人の背中を見送った後、部室に直行した。
「山岸君。結香ちゃんとどう?」
同じ部員の貝原七美は興味津々で聞いてくる。
僕達の部活は哲学研究会というものでその名の通り哲学に関することの研究をする部だ。でも、部活実績を示す時以外は何もしないから、実質部屋を占拠するだけの部活である。良い部活とは言い難いな。
それは置いておいて、七美さんも色恋沙汰に興味があるんだね。まあ、女子だからおかしくないかな。でも、一応確認しておこう。
「どうって何が?」
「もう、男女交際はうまくいってるのってこと」
やっぱりか。交際期間は1ヶ月間になるが、喧嘩もすることなく順調だと僕自身は思っている。
「うん、うまくいってるよ」
僕は正直に話す。すると、七美さんは目を輝かせてこんなことを聞いてきた。
「じゃあさ、じゃあさ。結香ちゃんとどんな風に恋人になったの?」
「どんな風にね」
「うん。教えて」
少し恥ずかしいけれども、隠すこともないかな。
そういうわけで、僕は結香との恋愛事情を教えてあげた。
「結構普通だね」
若干がっかりしたように七美さんは呟いた。
「いや、ドラマとかじゃないんだから、普通なのはおかしくないよ」
そう、普通に席が隣同士で徐々に仲良くなっていって、告白する。ありふれた恋愛事情だ。
「うん。まあ、そうだよね」
七美さんは気を取り直してニッコリ笑った。
「ねえ、あのさ」
七美さんは改まった表情で言った。
「何?」
「えっとね。今度私と二人でデートに行かない?」
「は?」
耳を疑うような提案に僕の思考は一瞬止まる。
「今なんて言ったの?」
「だから、私と二人でデートして」
聞き間違いではないみたいだ。
「僕には結香という彼女がいるんだけど」
「別にデートに行くくらいじゃ浮気じゃないよね?」
「多分そうだけど」
わざわざ疑われるようなことをする必要もないと思う。
「ね、ね。いいよね?」
うーん。
「駄目」
「え、どうして?」
七美さんが悲しそうな表情で尋ねる。うっ、そんな顔をしないで欲しい。
「やっぱり、結香のことを思うと女の子と二人っきりでデートは良くないよ」
「そんなー」
「だから、ごめん」
僕の断りの言葉を聞いた七美さんは、すがるような瞳で僕をじっと見る。罪悪感がわいてくる。それによく見たら、七美さんのすがる目が可愛い。
「いや、やっぱりするよ」
「え?」
僕は前言撤回して、七美さんの要望を受ける。ま、結香にちゃんと話せば大丈夫かな。
「今度一緒にデートしようって言ったんだよ」
「ほんと? ほんと?」
「うん」
「やったあー!」
七美さんは大喜びした。
「やっぱなしとかやめてよ?」
「努力するよ」
結香の許可がいるから、断言しない。
「なんでそんなことする必要あるの?」
結香に七美さんとのデートについて話すと、露骨に不機嫌になった。まあ、そうなるとは思ってたけれども。
「必要あるってほどでもないけど」
「じゃあ、やらなくて良いじゃない」
「駄目かな?」
「別に駄目ってわけじゃないよ」
口ではそう言っているが、嫌そうなのは火を見るより明らかだ。どうしようかな。別に七美さんと意地でもデートしたいわけではないが、七美さんの期待を裏切るのも良くないし。
「やっぱりやめようかな」
「行っても良いよ」
結香が嫌々許可した。
「え、良いの?」
「私に良平を束縛する権利はないわ。それにあなたにも付き合いってものがあるし」
束縛かな? 彼氏彼女の関係だから、多少の束縛は良いと思うけれども。まあ、結香が良いと言っているから、良いか。
「うん、ありがとう」
「どういたしまして」
デート当日。約束の時間前に着いたが、すでに七美さんが先に待っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん、今来たとこだよ」
七美さんがにこやかに答える。定番のやり取りだけれども、男女逆な気がする。まあ、どっちでも良いことだね。
「じゃ、まず何に乗る?」
僕は七美さんの意見を聞いてみる。そう、ここはデートの定番スポットである遊園地だ。結香とも行ったことがあるから、僕には新鮮さはない。
「じゃあ、ジェットコースターで」
七美さんの提案に僕は頷いた。ジェットコースターは得意でも苦手でもないからね。
それから色々な乗り物に乗った。七美さんの喜びや楽しみを見ていたら、こっちまで嬉しくなる。さらに、彼女の可愛さや色気にも僕はやられた。恋人の結香のことを頭から消えていた。
「楽しかったね」
「うん」
七美さんの言葉に僕は本心から同意した。
「それでね、山岸君」
七美さんが頬を染めながら、僕の名字を呼んだ。言いづらそうではあったが、何かを決心したかのような雰囲気だ。
「何?」
まさか僕のこと好きと言い出すのかな? 僕には結香がいるんだよ? そんなことになったら困る。でも、僕の心はそうなることをどこかで期待しているような気もした。
「私ね、山岸君のことが好き」
七美さんは本当に言った。
「一応確認しておくけど、僕と彼氏彼女の関係になりたいってことだよね?」
「そうだよ」
「何度も言うけど、僕には結香という恋人がいるよ」
「うん、知ってる」
「じゃあ、君と恋仲になれないのは分かる?」
僕が注意すると、七美さんは突然僕の口を塞いできた。彼女の口で塞いできたのだ。つまり、僕と七美さんはキスをしている。僕は焦る。倫理的に良くないことによるものでもあるが、それがメインではない。七美さんにこういうことをされても、嫌どころか嬉しいと感じることにだ。
「んはぁ!」
七美さんが色っぽい声でキスを止めた。幸福感と罪悪感が僕の中を駆け巡る。
「私、山岸君が好き」
「うん、聞いた」
「だから、付き合おう。結香ちゃんも見てるし」
「え?」
意味が理解できなかった。七美さんが別の方向を見る。そこには手を口に当てて、呆然とした顔の結香がいた。
なんで? どうして? 幻覚だ。幻覚に違いない!
駄目だ。現実逃避がうまくいかない。
結香は涙を流して、走り去った。
「あのさ、七美さんは結香がいてたの知ってた?」
僕は怒りを滲ませて尋ねる。
「うん。てか、結香ちゃんつけてたよ」
あっけらかんと彼女は言った。
「どうして言ってくれなかったの?」
「そんなの結香ちゃんに見せつけるために決まってるじゃない」
「君って人は」
「ん? 怒ってる?」
「当たり前だよ!」
「でも、山岸君も嬉しかったよね?」
「うっ」
七美さんの指摘は合っている。正確には、半分罪悪感で半分幸福感だけれでも。
「だから、山岸君が怒るのは筋違いだよ」
確かに棚上げ批判かもしれない。でも、七美さんも悪いはず。
「山岸君。素直になろう?」
「素直?」
「そ。素直」
七美さんは素直という単語を強調する。何のことだろうか? まさか、結香を裏切って七美さんと付き合えと言うの?
「そうだよ。というか、多分君は結香ちゃんとの関係は続けられないでしょ」
「くっ」
説明すれば、誤解だと理解してくれるかもしれない。でも、心が移ってしまった時点で誤解ではなくなる。七美さんの言う通り、もう結香との関係は破綻するだろう。
「分かった。七美さんと付き合うよ」
「ほんと?」
「うん。それから、結香とも別れるよ」
「ありがと!」
そう言って、七美さんは再度唇を押しつけてきた。僕は喜んで迎え入れた。
後日に僕は結香と別れた。別れた原因が原因なだけに僕は罪悪感を抱いたが、別れたことに後悔していない。
大学生になってからも、七美との交際は続いている。大学は別になったが、それでも七美との仲は良好だ。僕は文化系のサークルに所属している。サークル仲間とも良好な付き合いである。
大学2年になった春。
「今日から俺たちの仲間になる後輩だ」
同じサークルメンバーがそう言って一人の女性を紹介する。
「はじめまして、先輩方」
その後輩女性はハキハキと自己紹介をした。第一印象は正直僕の好みだ。七美がいなければアプローチしていただろうね。まあ、僕には七美という恋人がいるから、そういった関係にならないと思うけれども。
「ねえねえ、ハナちゃん。ハナちゃんの出身地はどこ?」
同じサークルの女性が件の後輩のハナさんに質問する。そして、ハナさんが答えた場所はこの大学から割りと近いところにあった。
「へー、地元じゃん」
「はい」
それから、彼女は質問されまくるのだった。
ある日のサークル。
僕がサークルに行くと、ハナさんが1人だけだった。
「ハナさん、他の人は?」
「こんにちは、山岸さん」
「あ、こんにちは」
そうだった。まずは挨拶をした方が良いよね。だから、僕も挨拶をした。
「他の先輩方はまだ来ていないですね」
「分かった」
「山岸さんって彼女いるんですか?」
いきなりプライベートなことを尋ねるハナさんに僕は一瞬困惑したが、気を取り直して話す。
「うん、いるよ」
「あ、そうなんですね」
ハナさんがガッカリしたように呟く。そんな風に言ったら、僕のことを好きなんじゃと勘違いしてしまうね。
「そういうハナさんは彼氏はいるの?」
「いませんよ」
「意外だね。モテそうなんだけど」
「そんなことないですよ」
彼女はあっさりと否定した。ハナさんは自分がモテると自覚しているようで、当たり前のように謙遜した。まあ、僕の思い込みかもだけれでも。
「山岸さん」
「ん?」
ハナさんが改まった顔で僕の名字を呼ぶ。
「私、山岸さんに恋しています」
「え?」
耳を疑うことを言われた気がした。
「なーんて」
でも、ハナさんはすぐにおちゃらけた声を出した。
「冗談ですよ」
な、なんだ、冗談か。心臓に悪いよ。
「冗談で告白するのはどうかと思うよ」
僕も面白おかしく返した。
「すみませーん」
休みの日に僕と七美は僕の自宅でくつろいでいる。
「というわけで、同じサークルのハナさんには困ったもんだよ」
僕がその時のハナの言動のことを話すと、七美は不機嫌そうな顔をしていた。
「なんか機嫌悪そうだね」
何故僕の恋人が不機嫌になるのか分からない。まさか、嫉妬しているとかじゃないよね?
「その告白が冗談じゃないかもしれないからね」
「多分冗談だと思うけど」
「そうだね。ちょっと警戒しすぎかもね」
そう言って七美は機嫌を直した。うん、嫉妬している七美は可愛い。口に出したら彼女は怒りそうなので、黙っておくけれども。
「ねえ、良平君。しよ?」
七美が色っぽく言いながら、抱きついてくる。
「いいよ」
そうして僕らは愛を確かめ合った。
「ハナさん、今なんて?」
ある日のこと。ハナさんの話は聞こえていたが、念のためもう一度聞き返す。
「ですから、山岸さん。私と今度デートしてくれませんか?」
やっぱり聞き間違えではないみたいだ。なんかデジャヴというか前にあった気がする。いや、気がするどころか同じことがあったね。
「僕には彼女がいるんだけど」
「良いじゃないですか、別に」
やはりあの時と同じだ。多分ないとは思うが、同じ轍を踏むわけにはいかない。毅然として断ろう。
「駄目、ですか?」
ハナさんが瞳を潤ませて懇願してきた。
「仕方ない、良いよ」
僕は鬼にはなりきれなかった。まあ、しっかり七美を思っていたら、大丈夫だろう。うん、きっと大丈夫だ。
「ほんとですか?」
ハナさんの顔に喜色が浮かんだ。
「うん、オッケー」
「わあ、ありがとうございます! じゃあ、次の休みに○○でデートです」
○○か。ここから比較的近いところだね。
「うん、良いね。じゃあ、待ち合わせ時間と場所はどうする?」
「そうですね」
ハナさんから提示されたものに特に問題はなかったので、僕は同意した。
そういうわけで、僕とハナさんのデートが決まったのだった。あ、七美の許可もらってなかった。今日電話しておこう。
「というわけで、ハナさんとデートに行って良いかな?」
電話先の七美からもろに不機嫌なオーラを感じた。
「良いんじゃないかな?」
「え、本当?」
「本音言うと、やめてほしいよ」
「じゃあ、なんで許してくれたの?」
「もう約束を取り付けたんだよね?」
「うん」
「なら、仕方ないよ」
そう言って、七美はため息をついた。ありがたい。安請け合いをする前に七美に聞いておくべきだったから、尚更だ。
「ねえ、私も一緒に行って良いかな?」
「え」
いきなり変な提案をしてくる七美に困惑する。いや、それはデートと言えるのかな? デートの正確な定義は知らないけど、デートって普通二人きりでするものだよね?
「冗談だよ」
笑いながら七美はそう言った。
「なあんだ。びっくりしたよ」
僕も笑いながら返した。でも、七美の口調から冗談ではない雰囲気を感じたのは気のせいかな?
「ごめん、ごめん。ところでさ」
七美はそう言って話題を変えた。
デート当日。
「ごめん。待った?」
先にハナさんが待っていたので、僕は詫びる。
「いえ、今来たところです」
ハナさんがにこやかに答えてくれた。デジャヴだけれども、いちいち突っ込まないでおこう。
「はー、一度こういうことやってみたかったんです」
「え、やったことないの?」
「はい」
「一度もデートしたことないの?」
「そうですよ」
意外だ。付き合ったことないどころかデートもしたことないなんて、意外だ。2回思ってしまった。
「それより、私の服どうですか?」
期待に満ちた眼差しでハナさんが聞いてきた。しまった。彼女が言う前に僕が率先して褒めた方が良かったな。現在進行形で七美と付き合っているのに、うかつだった。
「うん、似合ってるよ。この服どこで買ったの?」
うかつではあったが、やってしまったことはしょうがない。だから、僕は思った感想をハナさんに伝えた。
「ありがとうございます。△△ってとこなんですけど」
彼女は嬉しそうに礼を言って、店の名前を教えてくれた。△△か。僕には分からないけれども、有名なのかな?
「知ってる人は知ってるって感じのところです」
「へー、僕も行ってみようかな」
「その時は私と一緒に行きましょう」
「うん、お願いね」
それから、僕達のデートが始まった。
「ふう、今日は楽しかったですね!」
夕方になって本日のデートは終了した。楽しそうなハナさんを見ていると、僕も楽しくなってくる。
「うん、そうだね」
やっぱりハナさんは僕のタイプだなあ。でも、七美と連絡をとりたいから今日は解散だね。
「あの、山岸さん」
「ん?」
解散しようとしたが、まるでそれを遮るかのようなタイミングでハナさんが呼びかける。真剣な声色だ。
「山岸さん。私、あなたのことが好きです」
「また冗談?」
真面目な声から冗談ではないことがなんとなく分かるが、それでも僕はそう言わざるを得ない。
「今度は違います。本気です」
「えーと」
「実はあの時から心では山岸さんのことが好きでした」
ハナさんが目をつぶって、回想しているかのように話す。
「あの時は冗談と言って嘘つきましたが、今度は逃げずに告白します」
好きです、と再度彼女は呟いた。さあ、困ったことになった。僕の返答は当然ノーだ。でも、彼女は諦めてくれるかな? いや、諦めさせなければならない。それが僕のためでもあり、七美のためでもあるんだから。
「わる」
僕の返答はハナさんの唇で封じられた。そう、キスされたんだ。幸福を感じてしまった。僕はハナさんがタイプだからね。しかし、元カノの結香の時みたいになるんだぞ。僕、しっかりするんだ!
「ん」
ハナさんが唇を離した。ああ、名残惜しさを感じてしまう。
「というか、あなたは誰ですか?」
彼女は僕の方を見ずに誰何した。へ?
僕はそちらの方を見てみると、見覚えのある人が憎悪のこもった眼差しで僕達を睨んでいた。
「七美」
僕は呆然として件の人の名前を呟いた。見られた! というか、またこの展開なのか!
「なるほど。山岸さんの元カノですか」
ハナさんが意味不明なことを言い出した。いや、元カノではなく今の彼女なんだけれども。七美は息を飲んだ。いや、信じないでよ!
「七美さんと言いましたか? そうです。山岸さんはあなたに恋愛感情はなくて私とお付き合いしているんです」
ハナさんがニヤニヤと嘘八百を並べる。分かっていてやっているよね?
「それじゃあ、山岸さん。恋人としてさっきの続きをしましょう」
先程から七美は体を震わせて睨んでいたが、彼女は大声で泣きながら走り去った。七美を追わないと!
でも、僕の足は動かない。
「山岸さんが私を好きなのは知ってましたよ」
「いや、好きではないから!」
「だけど、山岸さんのタイプなんですよね?」
「そ、そうだけど」
「なら、私に恋してるってことです」
「ち、ちが」
僕は否定しきれない。なんで? 違うのに!
ハナさんはため息をついた。まるで愚かな先輩に常識を教える後輩のようなため息だ。
「山岸さん。自分に正直になりましょう」
「正直」
僕はポツリと復唱する。
「本当に七美さんという人がまだ好きなら、全力で追いかけているはずです」
「そ、れは」
「仮に私に恋してないとしても、付き合ってから愛を育むのも悪くないと思いませんか?」
「そうかもしれないけど」
「だから、試しに付き合ってみましょう」
ね、とハナさんはウインクをする。可愛い。それに悪くない提案かも。
「うん、分かった。付き合おう」
「本当ですか!」
「うん。でも、その前に七美に別れの電話をするから」
二股は僕にはできないから、付き合う前にきちんと別れないとね。前回は二股だった気がするが、もう過去のことだから、気にしない。
「良いですよ」
ハナさんがにこやかに許可をしたので、僕は七美に電話する。あんな状態だから、電話に出てくれないかもと心配したが、杞憂に終わった。
そして、僕は別れの話をして、すぐに電話を切る。
「というわけで、これから恋人としてよろしく!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
こうして、僕とハナさんのお付き合いが始まった。




