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ノブナガ・ザ・ゲームマスター  作者: 解田明
第一章 黎明初心者編
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第9話 織田信長、GMを志す

 TRPGとは、まことに楽しき遊興ゆうきょうである。

 本能寺にて金柑頭の惟任日向これとうひゅうがに叛かれたが、よき時代に転生せしこと、はなはだ痛快。怪我の功名とはまさにこれなり。


 コウ太は、今の時分は大学に通っておるそうな。

 そのうえ、今日は“ばいと”の日なので帰参は遅くなると書き込みを見る。

 親に負担はかけじと、学を志しながら日が沈んでも働くとは健気なり。

 その親孝行、天晴である。若人のががみとしたい。

 ゆくゆくは孔子孟子ろうしこうしが如く名を残す学者となるであろう。国の宝である。

 わしも一度は天下様てんかさまと言われた身、客将として無駄な禄を食む真似はせぬ。

 一宿一飯どころか、十日分。この恩義に報いずしてなんとする。


 学びの間、わしが退屈せんようにと“たぶれっとPC”を貸し与えてくれた。

 これで“えごさ”というものをしてみると、さまざまなわしが現世におる。

 下手に洒落を利かせて、第六天魔王などと名乗るものではない。

 してみると、わしだけではないようだ。 

 “歴史じゃんる”で検索いたせば、あの三河殿みかわどのも、もっとも恐れた男が幾人もおるという。

 恐れる者がおるなど、おくびにも出さぬ御仁ごじんであったというのに。

 中でも真田幸村さなだ ゆきむらなる者、日の本一のつわものと芝居でも評判を取る。

 野戦上手の三河殿に自刃を覚悟させるとは、見上げた将なり。


 それよりも、今はTRPGよ。

 ゆっくり語るリプレイ動画も、はなはだ面白きもの。

 BASARAなわしが謙信けんしん、信玄と卓を囲む動画もあった。

 してみると、TRPGとは数名でも遊べるものらしい。

 GMとプレイヤーが相対するは、“そろ”あるいは“わんおんわん”なるものという。

 芸事げいごとは、いずれも玄妙げんみょうにして奥深きもの。

 この時代には、コウ太の他にもTRPGを嗜む“げーまぁ”が無数におる。

 

 思い起こせば、わしも若き日は手下を率いて大いに傾き騒いだもの。

 遊びも戦も、賑やかなほうがよい。

 東国と西国の者同士でもオンラインセッションなれば出向かずとも遊べた。

 教えてくれたフォロワーに、♡にて感状を贈る。

 四〇〇年後の泰平たいへいの世とはいえ、驚くことばかりの御世である。

 音声アプリを用いれば、遠くポルトガルの“げーまぁ”とも通話ができた。まことに驚嘆きょうたんせしこと。

 フロイスから教えられた“Obrigado(ありがとう)”にて礼を言う。通じたようである。

 

 電車という乗り物にも、肝を抜かれる思いである。

 供を連れず、忍びで神保町と大手町まで足を向けたるが、“びる”なる巨城が天をく勢いで立ち並び、すさまじき有様ありさまなり。

 四〇〇年の時の流れに、すっかり浦島太郎の気分である。

 いまや戦国の世は遠くになりけり、民草たみくさにはよきこと(*^^*)


 さて、TRPGには“くとぅるふ”の他にも演目があるのも知った。

 『だぶるくろす』やら『すてらないつ』、『いんせいん』などあるという。

 矢も盾もたまらず、オンセの催しに参上すると、これまた愉快。

 

 フォロワーから評判のシナリオに誘われ、速レスで参上の旨伝える。

 孫氏曰く、兵は拙速を聞く。セッション予定も同じこと。

 題目は、“シナリオ仙人”なる人物が世に広めた「悪魔の卵」とのこと。

 賽を勝手に振ってくれる“ぼっと”も至極便利で、初心者のわしも困らぬ。


 死のうは一定、忍び草には何をしよぞ。


 せっかく生まれ変わった二度目の生、存分に遊び尽す所存。

 フォロワーからもGMの秘訣を伝授される。武芸の奥義に通ずるものである。

 今度は、わしがコウ太にGMをしてくれよう。

 待っておれコウ太、今度はこの信長の番ぞ。

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