表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノブナガ・ザ・ゲームマスター  作者: 解田明
第五章 天魔デーモンロード編
54/58

第54話 織田信長、時と心の旅路

 ダイスBOTの欠片データを持って、関ヶ原の戦いまで落ちていく。

 絶対に、報復を果たさねばならぬのだ。

 苦しみ苛まれ、無慈悲に殺され、笑顔と喜びを奪われた同胞のためにも。

 あと少し、あと少しだったというのに。

 第六天魔王とも恐れられた織田信長が、魔王になることもせずTRPGを遊び呆けようとは、森宗意軒最大の誤算であろう。

 だが、次の手は残っている。

 関ヶ原で徳川家康の東軍が負ければ、徳川の治世は覆るはずだ。

 その後は、どうなろうと知ったことではない。


 どんなに苦しい中でも、信仰を胸に精一杯生きて笑みを浮かべた人々。

 日々のささやかなことに喜びを見出した、無垢な人々。

 なのに殺戮された同胞たちのことを思えば、その報復を諦めるわけにはいかない。


 ――待て。

 待つがよい、シナリオ仙人森宗意軒よ。


 織田信長が追ってきたようだ。

 思えば、0.00000000000000001%という確率の彼方より受肉させた器だというのに。

 まるで役に立たなかった。それどころか、邪魔をした。


 ――わしは、おぬしに言わねばならぬことがある。


 今さら、何を言うというのだろう?

 島原より数えて、三八〇余年。練りに練った大魔術を打ち砕かれたのだ。


 ――おぬしのシナリオ、練りに練られた見事なシナリオであった。


 まさか、そんなことを言うために飛び込んできたというのだろうか?

 なんのつもりか、見当もつかない。


 ――そう思っておるのは、わしだけではないぞ。よく見てみるがよい。


 何を、見ろというのか……?

 情報を失い、解体されていくというのに。


 ――おぬしへのレスよ。

 一〇〇万PVだけあって感謝と喜びの声に満ちておる。

 確かに、おぬしは恨みを晴らすためにシナリオを作ったのかもしれん。

 しかし、あのシナリオが多くのゲーマーに笑顔と喜びを与えたのじゃ。


 自分のアカウントに来ていたレスを見る。

「ありがとう」「面白かったです」「また遊びます!」「笑いました」「楽しかったです」「みんな喜びました」

 なんなのだ、これは……?

 過去を踏みにじる今と未来に、TRPGによる報いを与えるはずであったのに。

 何故、こんなことに。そうだ、人々の笑顔と喜びのために戦ったはず。

 永きに渡り、奪われ失ったと思っていた。

 まさか、いつの間に、こんな近くにあったのだ……?


 ――シナリオ仙人よ。

 恨みを捨てよとはいわん、許せともいわん。

 だが、おぬしのシナリオが与えた喜びと笑顔。失ったそれより多いと思わんか?


 そうだ、そうだったのだ……。

 憎しみばかりで見失い、わからなかったのだ。

 いつの間にか、笑顔と喜びのために戦って憎しみにまみれていた。

 憎しみにまみれて戦い、いつの間にか笑顔と喜びを生みだしていた。

 これがTRPGがもたらす本来のものか。

 ああ、今度こそ、じっくり遊んでみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://www.tugikuru.jp/mypage
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ