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紫陽花の詩

作者: 白雪 慧流

お久しぶりです慧流です。

1ヶ月くらい更新してなくてすみません(^-^;

サボってました、はい。

どうか短編を出すんで許してください!

そして他作品を待っている方いましたらすみません!頑張ります!

それでは、短めですが、紫陽花の詩をお楽しみくださいませ

真っ白な世界に透き通るような綺麗な歌声が響く。その歌に反応するかのように、周りにあるスノードロップが揺れ、涼しい風がサラっと流れる。

歌声の主は、それはそれは綺麗な桃色の髪をしており、その紺色の瞳は夜を映し出すように暗い。彼女の周りには子供達が輪を作って耳を傾けている、そして歌が終わるとパチパチと小さな拍手が彼女の周りで巻き起こった。

「皆ありがとね、いつも聞いてくれて嬉しいわ」

柔らかい笑顔を子供達に向けたが、彼女と子供達の姿には決定的な違いがあった、それは羽の有無。歌を歌っていた女性、ライラには白くふわっとした天使の羽が生えていた。種族が明らかに違うはずだったが、まるで親子のような暖かい空間が形成され誰もが羨む程優しい場所だった。


今日もまた子供達を送り届け、鼻歌を歌いながらスノードロップの咲き誇る丘をスキップする。私の役目は、早くに亡くなった子供達の魂を親御さんの元へと届けること、罪すらない、あったとしても裁判では捌けない程の小さな罪を抱える子供達に、もう一度人生のチャンスを与える、それが役目。

もう何年も一人で行っている、いや、子供達がいるから1人ではないか、私という天使は死に、記憶を無くし、そしてまた子供達を見送るを繰り返している…らしい、らしいというのは私にその自覚も記憶もないから、物心ついた時には当然のようにこの場所にいて、当然のように役目を果たした。前の私はどんな人だったのだろうか、優しいかっただろうか?厳しかっただろうか?考えたところでわからないのだけれど。

私は優しさが好きだ、温かさが好き、だから子供達にも与えたかった、人間だけではない、天使も悪魔も隔てなく。いつか争いなどなくなってしまえばいい、天界も魔界も境がない、平和な世界。願わくば罪を抱える間もなく死ぬ者が現れないように。罪は悪いとは思わない、失敗して繰り返して成長していくのだ、その中に争いがある、しかし争いがあれば本当の意味で罪が無い者が死ぬ、罪とは血塗られたものではなく、悲しさではない涙を流すものであって欲しい。

「そんな世界がいつか来たらいいのに」

「どんな世界だ?」

いつもは誰も来ないこの場所に聞きなれない音が入った、それは私の独り言に耳を傾けたようだ、しかし問いを告げる音に興味がある感じはない。

まるで全てを壊してしまうような、そんな音に私は返事を返した。

「私が望む世界よ、とんだ淡い夢だけれど」

風に乗り舞うように振り返る、そこには無表情の男性天使が立っていた、長い紺色の髪は後ろで1本にまとめられている、両腕に付けられた黒い手袋がその人物の役目を教えてくれていた。

「そうか、こんな場所で一人で居ても望みというのは存在するもんなんだな」

「当たり前でしょう?どんな者にでも理想や希望は存在するわ、ねぇ、貴方せっかく来てくれたんだから名前教えてくれない?」

笑いかけるが、男性天使は表情1つ崩さず、名前を教える道理はないとキッパリ断わってきた、この天使何しに来たのだろう?結局この日はこの会話だけすると彼はどこかへ行ってしまった、目的も名前も告げずに。

男性天使と別れて、お気に入りの場所へと向かった。そこは色とりどりの紫陽花が策定園。誰が作ったかは知らないが、そこは天界とは思えない禍々しさがあり、天使どころか神すら寄り付かない場所。この禍々しさの理由はきっと誰にもわからない、でもそんな空間が妙に落ち着くのだ、天界にある魔界、そんなものだからかもしれない。唯一2つが交わる場所。

「魔界にも天界みたいな空間があるのかしら」

ポツリと誰にむけるでもなく呟いた。天使が魔界いに行くことは許されない、行った所で殺されてしまうし。

はぁ…と深い嘆息を漏らす、エクスシアとかいう天使部隊まで最近出始めてしまった。彼ら、彼女らは強いから魔界に行っても生き残る事が出来る。神の命なしでは行く事ができないけれど。

「魔界とはどんな場所なのかしらね」

何も無い空を見上げながら、見ることの叶わない未知を連想する。目を瞑っても望む光景が現れることは無かった。

それから数日、あの時の男性堕天使は度々姿を現すが、やはり何も教えてくれなかった。黙って私の歌を聞いている時もある。今日もまた顔を出すが、喋るわけでもなく、ただ私の行動を伺っていた。

「……ねぇ」

「なんだ」

「なんか曲のリクエストとかない?」

気にもたれ掛かる彼の前に立つと訪ねる。しばらく考えるような仕草をすると、意外な答えが返ってきた。

Agnus(アニュス) Dei(デイ)なんてどうだ?」

「神の子羊……わかったわ、あまり歌わない曲だけど知ってるから歌ってあげる」

ラ、ラ、ラ、と高い音を複数回発声させ、音を合わせる。Agnus Deiは人間が作った歌だ、世の平安を祈るための聖歌、しかしこの世の平安というのは、偏っているのかもしれない、キリスト信者のみの気がしてならないのだ、しかし神もまた、自身の都合の良い事だけを取り入れているのだから、どうしようもないのだが。

「Agnus Dei, qui tollis peccata mundi dona eis requiem……」

風に乗せ、オーケストラのいないメロディが流れ出す。迫力こそないものの、歌声だけの音楽は心地いい。そこまで長くない歌はいつの間にか終わりを迎えていた。

プツッと途切れた音にいつも通りの拍手はなく、寂しい静寂が降り落ちる。彼の方を向くと先程と変わらぬ表情、変わらぬ姿で立っていた。

ふっと笑ってみせても笑うことは無く、彼が笑うとしたらどんな時なのだろうと少し気になってしまう、いつか笑顔を見せてくれる日はあるだろうか?数日、話したり見ていたりしてわかったことではあるが、彼は決して冷たい人ではない。むしろ優し過ぎる、さっきのように話しかければ対応してくれるし、子供も嫌いではないようで頭を撫でていたりする。いいお父さんそう誰かに言われても言い返せないくらいに、面倒見もいい。

近くの芝生に座り込むと彼も隣に座った。スノードロップの甘い香りが鼻をくすぐり、そのまま眠ってしまいそうになる。ふわぁと欠伸をひとつした時ある言葉が頭を掠った。

「こう!」

「は?」

「貴方の呼び方、紅って書いてこうって読むの、日本って場所の名前でかっこいいなって、貴方日本人に容姿が似ているし」

とある男の子ついていた名前、なぜ今思い出したのかはわからないが、名前を知らぬ人の呼び方には丁度いい、反発するかとも思ったが彼は「勝手にすればいい」と諦めとも取れる反応をした。

この日から男性天使を紅と呼ぶ事にした。そうしたら、子供達まで真似をして彼を紅さんと呼ぶものだから苦笑いしたのが、初めて見た真顔以外の表情。いつも真顔なのはやっぱり表情を出すのが苦手なのかもしれない、笑う事がないというより、まるで笑う事を知らないような……。

こんな奇妙な日常が続いたある日の事。小用があり天使賑わう街へと足を運んだ。いつもなら気にしない、他天使の会話だが今日たまたま耳に入ったものは自分の興味を引いた。

「ねぇ?聞いた?またカマエルさんお手柄だったそうよ、エクスシアでも優秀な天使だから、主神様のお気に入りみたいね」

「でも、カマエルって天使、神に背く者には容赦ないんでしょう?怖いわぁ」

カマエルという1人の天使の話、神に背く者に私も入るのかもしれない、だって神は嫌いだ、争いを生み、そして推進させる。誰かの信じるソレは、醜い程に歪み切っている。まだ悪魔達の方がマシだと思える程に。

「神は自身を隠す手段を知っている、悪魔達や人間の方がよっぽど素直だわ」

カマエルさんには悪いが、私は従う気にはなれなかった、だからって堕天しようとも思わないけれど、私が堕天してしまったら子供達の面倒を見る者がいなくなってしまう、それはダメ、あの子たちを見送れるのは、現段階では私しか居ないのだから。

涼やかな風が吹くいつもの丘で、Agnus Deiを歌う。私自身あまり好きな歌ではなかったが、紅からの初めてのリクエスト曲であり、私のプライドが『中途半端』を許さなかった、やるからにはしっかりとフレーズを覚え、歌い上げる、そのための練習。嫌いだろうが好きだろうが、歌は私の唯一の自分を表せるものだから。

それから、季節はめぐり、下界では雪というものが降る、冬の季節へと変わろうとしていた。雪は白く、掌に乗せてしまえば、たちまち溶けて消えてしまう儚い存在だと風の便りで聞いた事がある。天界に雪は降らないし、下界でも極限られた場所にしか降らないらしく、子供達も知らない子が多かった。雪を知る者はスノードロップを見ると、常々雪みたいと言う、だから私は雪を連想する時必ずスノードロップを思い浮かべた。

「ねぇ、紅は雪って見たことある?」

「雪?今の時期下界に降ることがあるとかいうものか」

紅も見た事はないようで、そんなものだった気がする、と付け加えられた。下界には見たいものが沢山ある、きっと天界で見るよりも綺麗だから。

「私は見たいものが沢山あるの、雪もその1つ、でも1番みたいのは紫陽花だけど」

「紫陽花?天界にも咲いている場所があったな」

「あっ!知ってるのね、私はよく行くわ、あの場所、でも下界で見たら天界で見るより綺麗な気がするの、土とか環境が全て違うでしょう?冷徹とかって花言葉が付いているらしいけれど、私は紫陽花をそんな風には思わない、場所によって色が変わる彼らはきっと何処にだって適応できるのよ」

私の話を興味無さそうに流すので、少しむくれながら、遠くを見つめ、ずっと練習していたフレーズを口ずさむ。それを隣でただ黙って、聞いていた紅は、歌が終わってもいつも通り拍手はなかった。

「……。」

「ねぇ、貴方がなぜこの歌を選んだのか、わかる気がする、貴方は今のままでいいの?」

問いには返さない、ただ目を瞑って、立ち上がると「俺は俺の正義のために動くだけだ」そう言って帰ってしまった。

あと何日、彼とこうして会話ができるだろうか、せめて下界に紫陽花の咲く、春と夏の間まで、話せていたらいいと空に願いをかけた。

天界は夜の来ない世界、魔界は逆に朝のこない世界、その間の下界は朝も夜も来る、そんな下界に憧れ続け、何年が経つのだろう、私の願いは届き、季節は冬から春へ、春から夏へと変わろうとしていた。春は出会いと別れの季節というらしい。 雪は完全に溶けてしまい、確かに寂しさの残る季節なのだろう。

「もうすぐしたら紫陽花が咲くわよ、紅」

いつもと同じ笑顔で私は彼を迎える、出会いと別れ、それが本当に存在するならば、私はいつか、優しい彼を見てみたいと思う。

「私を殺すように命じられているのでしょう?エクスシアの隊長よ」

向けられた銃口を拒む気は無い、私はまた私としてこの場所に来る。死んだとしても変わらない、ずっと神々の壁になり続けるのだろう。

バンと乾いた音は体を貫いた、本当に人間の信じるような神が居るならば、私は願いたい、彼が優しく笑えるように、自分の罪に気付いた時、押し潰されないように、あわよくば、いつかの私がそれを見届けられますように。


紫陽花の花言葉は、冷徹、無情、その他様々あるけれど有名なのはこの辺り。

自分はそんな、冷たい花言葉を持つ紫陽花で表される事も多く、なんとなく気に入っていた。紫陽花の模様が描かれた万年筆に、インクを付けると目の前の紙にサラサラと文字を書いていく、ただの書類整理ではあったが暇なので頭に浮かんだフレーズを歌い上げた。

「Agnus Dei, qui tollis peccata mundi dona eis requiem……」

歌い終わってから気付いた事ではあるが、私はこの曲を聞いたことは無い、歌詞からして神を称える歌のはわかるが、堕天使が神を称えるなど笑えるものだ。

自分は神の壁のようなもの、邪魔者と言えばわかりやすいだろう、何故この歌が出てきたのか悩んでいると、机に設置されていた電話がけたたましく鳴り出した。受話器を手に取り耳に当てると、聞きなれた男性の声が聞こえる。

「よっ、補佐官殿調子はどうだ?」

「用がないなら電話しないでくれる?」

「相変わらず冷たいなぁ」

恐らく、電話の向こうでは苦笑いされているのだろうが、こちらの知った話ではない、用を済ませなさいと言うと、先程書いていた書類についての追加事項を説明された。

「それだけだ」

「そう、わかったわ、あ、そうだちょっと聞きいたいことあるんだけどいいかしら?」

自分の頭で再生された、あの謎の歌、電話の相手、天使隊総隊長殿(てんしたいそうたいちょうどの)ならば知っているかもしれない、1部の望みをかけて聞いてみたが、「……いや、俺は知らないな」と返された、ならいいかと電話を切る。

わからないことを考えても仕方がない、そう思い直すと再び机と向き合った。

天使物をなろうに載せるの初めてなのですが、個人的には大好きでよく書いている小説のジャンルでもあります。

天使や悪魔の話ってなんかいいですよね、神話を元にしてみたりとか。

今回出てきました、ライラも実際の天使を元にしています、勿論オリジナルの部分もありますが。

もう一人の天使紅さんについては触れないでおきます、彼の性格等は読者のご自由に?まぁ、あまり彼に関して記載してないんですけども。

自分自身なんかふわっとしてんなぁ、と納得出来ていないので近い内にリメイク、再投稿するかと思います。その時目に入ったら読んで頂けると嬉しいです。

感想、アトバイス等はいつでも受け付けております!

それではまた次の小説でお会いしましょう!

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