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三話 エヴァンとヴィクトル

朝六時半、玉藻は今日のおすすめメニューの仕込みをしていた。


「今日のおすすめはミネストローネだな。 トマトがいい感じだ。 今日はどれぐらい来るだろうか? 爺さんが店のことを広めてくれると言っていたが二日三日で不思議な店というイメージは取り払うことができないだろうな。 それにここの店は街の人からすればここは異国の店でもあるからな… 難しいところだな」


玉藻は仕込みをしながらそんなことをつぶやいていた。


「できることならスタッフもほしいところだな。 一人で回すこともできるが、お客がたくさん来た場合に手が回らなくなる可能性があるからな。 でもこればかりは仕方ないな。」


玉藻は仕込みを終え、店の掃除やテーブルの整備などを終わらせて店の看板をopenにすると、お客が来るのを待っていた。


外では仕事に行く人や店の準備をしている人など、いろいろな服装をした街の住人たちが歩いていた。

その中、玉藻はある人物がこちらに向かってきているのが分かった。


「おお~ ここはこんなに早い時間からやっておるのか、 いや~ やってないと思っていたからすぐ帰るつもりだったがこれなら何かうまい料理を食べて帰ろうかの?」


店の中に入って、そうつぶやいた人物は、エヴァンである。 エヴァンは笑顔で隣にいた人物に話を振っていたがもう一人の人物は呆れたような顔でエヴァンを見ていた。


「エヴァン… 奥様に伝えずに来ましたが、怒られるのはあなたなのですよ? もう少し、考えて行動をですね… それに私も無理やり連れてこられましたし。」


「じゃから謝ったじゃろ? すまんて。 でも来た価値はあるぞ? ここではうまい料理がお手頃の価格で食えるのだ。のう、店主よ」


急に話を振られた玉藻だったが落ち着いてはい、とうなづいて答えた。


「お店に来られたお客様には全力のおもてなしをさせてもらいます。 ですから安心してくつろいでもらえると嬉しいです。」


「そうですか。 エヴァンからこのお店のことは聞きました。 ものすごくおいしい料理をものすごく安く提供してくれると。 あ、私はヴィクトル、エヴァンとは腐れ縁という奴で仲良くしてあげています。」


「なんじゃと‼ それだとわしがお前と居らんと寂しいみたいじゃないか。」


エヴァンはヴィクトルの言ったことが気に入らなかったのかぎゃあぎゃあ騒いでいた。 エヴァンは見る限り、60は過ぎているであろうじいさんなのに今の姿を見ると、子供みたいだ。


「まあ、エヴァンのことは放っておいていいので、お店を開いているのなら店主のおすすめを一つもらっていいですか? エヴァンの話ではここで使われている言語は異国の物で、私たちでは読めないと聞いたもので。」


「あ、ずるいぞ。 店主よ、わしもおすすめを一つじゃ」


「かしこまりました。 おすすめが二つですね。 少々お待ちください」


玉藻は注文を聞くとキッチンに戻り、仕込んでおいた材料でミネストローネを二つ作り始めた。

作業を見ていたヴィクトルが玉藻を感心するような目で見ていた。


「すごいですね。 一つ一つの作業がとても早く、とてもきれいですね。 それに音も静かで私たちが話していたとしても邪魔をしないだろう。 店主はどこかで修業でもしていたのですか?」


「私は世界各国を回っていろいろな人に料理を教えてもらいました。 ですが、私に教えてくれた方は一つの料理を極めていて私が同じ料理を作ったとしても決してかなわないぐらいおいしかったですよ。」


「そうなのですか? すごいですね。 世界各国ですか、店主のいたところでは世界を回ることができるのですね。 私が世界を回ろうとしたら、魔法を使っても達成できないですね」


ヴィクトルは玉藻に向かって、そう言った。 玉藻はヴィクトルの話の中で一つ気になるワードがあり、ヴィクトルに聞き返した。


「魔法ですか?」


「ええ、店主はご存じないですか? ここらでは当たり前のように使われていますよ? 火をつけるときや服を乾かすときなどに。 それ以外では、冒険者の人たちが魔物を討伐する際に使っています。 ですが才能などもやはり必要なので大体は初級魔術ですね。 魔法について知らないということは店主は魔法を使ってないのですか?」


「ええ、私は少し特殊な技術で火などを起こしています。 説明してもいいのですがわからないと思うので省かせてもらいますね」


玉藻はそう言うと完成したミネストローネを二人のテーブルに運んだ。


「お、ようやく来たの。 二人ともわしなんか無視して楽しむからの。 暇じゃったわい。」


「あ、エヴァン。 居たのですね。 静かでしたからてっきり帰ったのかと」


「ずっと居たわい‼ 失礼な奴じゃ。 まあ、せっかくの料理の前じゃ。 許してやる。」


「はいはい、それにしても確かにおいしそうだ。 これはこのままいただいてよいのですか?」


「はい、一緒においてあるスプーンを使ってお召し上がりください」


玉藻がそういうと二人はミネストローネを食べ始めた。


「これはうまいですね。 これはポモドーロみたいですね。 ですがこれはなんですか?」


ヴィクトルはミネストローネの中に入っていたジャガイモをすくい上げると玉藻に見せた。


「それはジャガイモという食材です。 こちらでは見ないですか? これが切る前の状態のジャガイモです。」


玉藻はジャガイモをヴィクトルに見せると、ヴィクトルはびっくりしたような顔をした。


「それはカルトーシカ‼ あ、すいません。 こちらではその食材は食べないのです。 以前は食べていた時期があったのですが、食べると体調を崩す人たちが続出したのです。 それ以降はよほどのことがない限りは食べることがなくなったのです。」


「それはたぶん、処理の仕方が悪い状態でジャガイモ、こちらではカルトーシカですか、を食べたのでしょう。 これは芽などの部分にソラニンやチャコニンという毒素が含まれているのです。 それを摂取してしまうと吐き気やめまいの症状が出てしまうのです」


「確かに以前もめまいなどの症状が出ていたとの情報がありましたね。 なるほど、その毒素を知らずに摂取したために症状が出てしまったのですね。」


ヴィクトルはそういうともう一度ジャガイモを食べた。 そしておいしいとつぶやくとそこから淡々とミネストローネを食べ進めた。


そして食べ終わると、ふきんで口をふいて玉藻に礼を言っていた。


「なんじゃ、来るときはあまり乗り気ではなかったのに、しっかり楽しんででいるのではないか。」


「これほどおいしければ、楽しみます。 それに乗り気ではなかったのはあなたが無理やり連れてきたからです、 説明も多少してさえもらえれば何も言わずについてきました。」


「わしはしっかり説明したではないか。」


「うまい料理を食いに行くという説明だけじゃないですか。 それだと説明とは言わないのです。」


「そうなのか? それはすまんかった。 それじゃあ店主よ、勘定を頼む。 今日はしっかり払うのでな。」


「かしこまりました。 二人で450メルになります。」


玉藻がそういうと二人はお互いに顔を見合わせて笑った。


「いやはや店主でも冗談を言うのだな。 これほどの料理が450なわけないじゃろ? いくら安いといっても」


「そうですね、こればっかりはエヴァンの言う通りです。」


二人が信じられないとでもいうように玉藻を見るが玉藻は落ち着いて再度二人に言った。


「いえ、冗談ではないですよ? 二人合わせて450メルになります。」


「ほ、本当に450なのか? これだけでよいのか?」


エヴァンが聞くと、玉藻はうなづいた。 そうするとエヴァンは450メルを取り出し、玉藻に渡した。


「ちょうどいただきました。 これは領収書です」


お金をレジに入れ、出てきた領収書を切って、エヴァンに渡した。


「店主よ、この前もらったカルボナラというのはいくらなのだ? あれはさすがに高かろう?」


「あれは今回のミネストローネよりは高いですがそれでも700メルですよ?」


玉藻がそういうとエヴァンはヴィクトルとともに身をかがめ、自分たちの話が店主に聞かれないような体制をとった。 玉藻はこれは聞いてはいけない話だなと決めると皿を回収して片づけ始めた。


「おい、いくら何でもおかしいのじゃ。 あれだけの料理がたったの数百メルというのはあまりにもおかしい」


「確かに。 あの店主は何を考えているのでしょうか? 私があの料理を出す立場なら2500は最低でも取りますよ。 それにあの料理の腕ならほかの料理も同じくらい美味なのでしょう。 あれぐらいの腕なら宮廷料理人としてやっていけますよ」


「ああ、あの王様なら絶対に誘うだろう。というか、本音を言えばわしがほしい」


「私も毎日あの料理が食べれるのならば財産の半分を叩いたとしても彼女を家に入れます。それだけの価値があります」


「そういえば、店主は異国の者だったな。 異国ではあれが普通なのか?」


「わかりません。 そういえば奥様のほうは結局来られるのですか?」


「ああ、メリアは昼に行くと言っていたぞ。 娘たちも一緒にな」


「そうですか、今の私たちでは店主について決めることができません。 奥様方達にも食べてもらって皆で決めたほうがいいと私は思います。 如何に言ってもあの値段はおかしいです。 屋台でも1000は取ってきますからね。」


「ああ、ここは少し時間をおいてメリアの反応をみて、これからを決めようぞ。」


二人は話を終えると体制を戻し、椅子に深く座った。


「すまんな店主、こそこそと。」


「いえ、聞かれたくない話もあると思います。 ですので問題ありませんよ? それにお客様の話に私が出るのは間違いだと思いますし」


「そうか、そういってもらえるのならありがたいな。 それでな? 店主に相談なのじゃが、大丈夫か?」


「はい、私にできることなら。」


「そうか、すまんな。 今日のお昼にわしの妻のメリアと孫の二人がこの店に行くと言っておる。 できれば席を空けておいてほしいのじゃ。 金を払えというのならいくらかなら払うからどうかの。」


「席ぐらいなら大丈夫ですよ? お金も要りません。 ですがお昼のいつぐらいになるのかだけ詳しく教えてもらえると嬉しいのですが」


「詳しい時間か、それなら昼の1時から席をとってもらえるかの? わしからその時間に行くようにメリアたちに行っておくわい」


「かしこまりました。 昼の一時からですね。 店に来られるのは三人だけですか?」


「それなのだが、できれば席を全部空けてほしいのじゃ。 わしもこの街では偉い方での。 その妻になれば狙う輩も出てこんとは限らん、じゃから護衛を数人は連れていくように行くとは伝えるがもしもがないようにしたいのじゃ。 出来るかの?」


「わかりました。 大丈夫です。 お待ちしていますので気を付けて来てくださいね」


「すまんな」


エヴァンは玉藻に頭を下げて、しばらくするとヴィクトルの肩をたたき、服装を少し直してから店を後にしていった。


「エヴァンは先に買えるみたいです。 私もそろそろ行くのですが、これだけは伝えておきますね。」


「なんでしょうか?」


「もしかしたら大事になるかもしれないので、覚悟だけはしておいてください。 メリア様がちょっと… それに娘様方も訳ありでもしかしたらですけど、」


「わかりました。 しっかり対応させてもらいますね。」


この時、玉藻はああ、ちょっとめんどくさいタイプのお客なのかな?と思っていたが実際は反対でまさかあんなことを言われるなんてこの時玉藻は全くと言っていいほど思っていなかった。


「それではお昼にまたよろしくお願いします。 私も付き人として来るので」


「そうですか、それではお昼もよろしくお願いしますね」


「ええ、では」


そういうとヴィクトルは店から出ていき、店にはカランカランという音が響いた。

いかがだったでしょうか。楽しんでもらえたのならうれしいです。

しかし、お昼時に料理が出る話を書くべきじゃなかったですね。

さっきからおなかがなって止まりません。


評価や感想もよろしくお願いします。

次回は明日になると思いますが、もしかしたら今日の夜になるかもなので

お楽しみです


それでは。

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