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二匹目 小さな妖精さんたちのご来店

「結局、お客さんはじいさんだけだったな。 あのじいさん、最後にとんでもないもん渡しやがって。 まあ、おかげでお金にも困ることなくなったし、図書館にも行くことができたからいろいろ調べることもできた。」


玉藻は図書館で調べたことをまとめたノートを見ながらそう呟いていた。エヴァンが帰ったあと、玉藻は店を急いで閉めた後、街の人に図書館の場所を聞き、直行した。


「それにしてもお金の単位が円と変わらなかったのはうれしい誤算だったな。」


こちらの世界のお金の単位は全国で統一されており、メルというらしい。 メルというのはこちらの世界の女神であるメル神から来ているらしい。


向こうの一円がこちらの一メルというわけでお金の価値は変わらない。 しかし、向こうの世界とは違い、物価が安く、食材などがものすごく安く取引されている。 玉藻にとってはうれしい誤算だ。


「それにしても、あんな作り話を聞いてそのまま帰るとは思わなかったな。 世界が違うとはいえ、この姿はどう見ても異端だからとっさに作り話でごまかしたが本当に通じるとは思わなかった。 だましたのは悪いとは思うが生きていくならきれいごとでは済まないこともあるってわけだ。」


玉藻は今年で46になる男だ。 生きていく中で大人の社会に揉まれ、汚い場面を幾度となく乗り越えてきた大人。 自分が生きていくならしょうがないと割り切れる。 それが九神 玉藻という男だ。


「今は大体夕方ぐらいかな。 昼に店を閉めたとしても、結構長い時間、こもってたんだな。 なんか飯でもつくるか」


玉藻はそう言って、持っていたノートをレジの下に入れるとキッチンに入り、自分の夕飯の材料を探していた。


「なんかいい素材はあったかな。 お、白いんげんがあるな。 カスレでもつくるかな」


玉藻はそう言ってカスレを作り始めた。 カスレというのはフランスのランドック地方でよく作られる郷土料理だ。 カスレは白いんげん豆とソーセージと鶏肉を塩漬けしたものとほかの野菜をじっくり煮込み最後にオーブンで軽く焼き目をつけてカスレの完成だ。


「フランスに行ったときに作ってもらったんだっけか。 あの時はまだ料理を習い始めで世界各国を回ってた時期だったな。 あの家族は元気にしてるだろうか」


料理をする人は世界に出るというがどうやら玉藻も世界を回っていた時期があるらしい。 いわゆる修業期間だ。


そしてしばらくして完成したカスレを玉藻は食べ始めた。


「ああ、うまいな。 だがあの家族のカスレには勝てない… それ以外にも俺に料理を教えてくれた人たちの料理はどれも極めてあった。 だが俺は一つの料理を極めるという道を選ばなかった。 だからこそ、俺はこの店で俺の味を極めるのが夢だって、決めたんだよな。っていかんいかん、ついつい思い出に浸ってしまった。 俺ももうそんな歳になったか」


玉藻はカスレを食べながら若い時の思い出に浸っていた。

そしてカスレを食べ終わったときに店のベルが鳴った。


カランカラン……


「すいません。 もうお店は閉めちゃったんですよ。」


玉藻は入ってきたお客さんであろう人にそう言って、姿を確認した。

お店に入ってきた客はとてもかわいらしい子供の二人組だった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を除けば……


「おお~ 彼女がミっちゃんの言ってた不思議な子? 確かに不思議な格好をしてるね」


「ほんとだね。 彼女みたいな種族は見たことがないよ。 天使族とは違うのかな?」


謎の小さな二人の空飛ぶ子供は玉藻を指さしながらそんなことを話していた。


「かわいい娘さんたち? こんな時間に私に何か用かな? お店は閉めちゃったから簡単なものしか出せないけど」


玉藻はできるだけ平常心で二人の女の子に聞いた。


「おお、私たちのことが見えてるらしいよ? めずらしいね。 人間じゃないのね。 あ、私は大丈夫だよ‼」


「私たちが見えるってことは人間じゃないのかもね。 あ、私も大丈夫です」


二人の子供はお互いに話しながら流れるように玉藻の問いにも答えた。


「そう? それなら簡単なものだけど、これをあなたたちにあげるわ?」


玉藻はそう言って冷蔵庫からチーズケーキを出して、二人に手渡した。


「おお~? これはなんだ? 見たことないよ?」


「私も知らない。 これは食べ物?」


「ケーキは見たことがないのか…… これはチーズケーキていうデザートよ。 おいしいから食べてみて」


玉藻がそういうと二人はうなづいてチーズケーキを口に頬張った。

口の中いっぱいまでケーキが入ると、たちまちリスのほお袋みたいになっていた。


そして二人はしばらくの間、チーズケーキの余韻に浸っていた。


「ああ~ おいしかった‼ お姉さん、ありがとう‼」


「おいしかった。 ありがとうございます」


「どういたしまして。 それであなたたちは?」


玉藻が聞くと、二人はそれぞれ自己紹介を始めた。


「私はクルミだよ‼ 妖精族の一人なの‼ クルミでもくーちゃんでも好きに呼んで‼」


「私はツバキだよ。 つーちゃんでも、ツバキでも好きに呼んでください」


「クルミにツバキだね。 私は九神 玉藻。 九神は慣れてないから玉藻って呼んでくれたらいいよ。 それであなたたちは何か用があったの?」


玉藻がクルミとツバキに聞くと、クルミが教えてくれた。


「えっとね? ミっちゃん。 あ、ミルクちゃんっていう私たちの友達が居てね? 今日たまたまここの道を通ったら不思議な子がこのお店にいたってミルクちゃんから聞いて、それでどんな子だろう?って思ってつーちゃんと一緒に見に来たの‼」


「補足でいうと、ミーちゃんは不思議っ子。そんなミーちゃんが不思議っていうぐらいだから余計に気になってあなたを見に来た。」


「なるほどね。 それで二人で来たのね。 そのミルクっていう子は来なかったの?」


玉藻がそう聞くと、二人は答えづらそうに言っていた。


「えっと。 一緒に来てたんだけど、はぐれちゃって。 もしかしたらおいてきちゃったかも?」


「ミーちゃんは方向音痴。 だから私たちはわるくない」


「そ、そう。 それなら今度はここに連れてきてあげなさい? 歓迎するわよ」


「うん‼ 私もまだまだ玉藻の出すものいっぱい食べたいからまた来る‼」


「私も来る。 今度はミーちゃんを連れて」


「そうしなさい。 私は大体お店の中にいるから」


「わかった‼ それじゃあ今日は帰るね‼ またね玉藻‼」


「またね。 玉藻」


玉藻にそう言って彼女たちはひらひらと飛びながらお店を出て行った。


「はは、面白い子たちだったな。 ノートに付け加えとかないとな。 今日のお客さん 追加、小さな妖精 クルミとツバキってな」


どうやらお店に来るのは人間だけではないようです。

いかがだったでしょうか。 今回は妖精のご来店でしたね。

次回はいったい誰が宿り木に止まるのか。 どうぞお楽しみに。


評価や感想をよろしくおねがいします。


こんなキャラ出してもらいたいみたいなのもあればどしどし送ってください。

文才のない作者ですが満足してもらえるよう頑張ります。

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