表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厳しい現実を異世界で!! ー『詰み』から始まる転生劇ー  作者: G-pro
第1章 幼少期 ー神才編ー
2/14

第1話 転生した先


ここは、どこなのだろうか。


1番最初に考えたのは、そんな当たり前のことであった。

意識は朦朧としているが、ある。

自分を自分と認識はできる。

目が開かないが、今わかることを整理しよう。


ここがどこだかは、わからない。

静かで暖かい空間。

何かに全体が包まれている感覚がある。

明るさは真っ暗。そして身体は動かすことができない常態だ。


記憶は鮮明に残っている。

私は一流企業を立ち上げ、その生みの親として精一杯に頑張っていた天才だったこと。

そして、家に帰っている途中の電車で事故に遭ったということ。

妻の顔も、もうすぐ高校生になる娘の顔も、社員の顔、友人の顔、全て写真のように綺麗に思い出すことができている。

さて、ここで重要なのは、


私は死んだのか?ということだ。


…………私の中での解答は一択。

『否』だった。


正確には、『否』だと思いたいのだ。

違うと信じたい。生きていると信じたいのだ。

私はまだ道半ば。あんな事故ごときで死んではいけない存在なのだ。

妻や子を養うために、まだ働かなくてはいけない。

まだ、やるべきことが大量にあるのだ。

世界が私を待っている。

それがわかっている限り、


死んで、たまるものか。


ーーー


少しずつ体が動くようになってきた。

まだ、私は暖かい何かに包まれている。

何もすることが出来ない。

それだけが、ただただ悲しかった。

いつもならこんな無駄な時間を過ごすことはないのにと自分を悔いても、どうしようもない。

その事実が、心底私にとって『害』でしかなかった。


だが、環境は少しずつ変わり始める。

だいぶ遠くではあるが、声が聞こえ始めた。

音が聞こえ始めたのだ。

静かだった空間には、胎動のような物が聞こえ始め、

遠くから、微笑ましい表情をしているのが聞いて取れるような声が聞こえる。


何をそんなに微笑ましく見ているのだろうか。

未だ目が開かないのが害であるが、

声が聞こえるということはこれがもしかしたら夢の中なのかもしれないという希望を持つことが出来た。


きっと、妻や子であろう。

病院で私は寝ているのだ。

私を死んだと思い込んでいたに違いない。そして、私と病院で再開し一命をとりとめたと話を聞いて喜ばしく見つめているのだ。


そんな幸福極まるシナリオが簡単に頭に浮かび、そのシナリオに納得している自分がいる。


私は少し心が軽くなるのを感じた。

生きている。生きているのだ。

私はその願いが事実になりつつあるのに、喜びを覚えた。


あとは、目覚めるのを待つだけだ。

思い出してみろ。

いつだって私は幸運だっただろう。

どんな不幸も、折れない意思で立ち上がってみせたではないか。

こんな不幸、直ぐにでも乗り越えてみせるさ。


ーーー


だが、そんな真っ暗闇での日々は、


なんの前触れもなく終わりを告げた。


ガタガタッ、

空間自体が急に揺れ始めたのだ。

しかも、微かに聞こえる声は切羽詰まるものになっていた。


……急にどうしたというんだ?

もしかして………俺の容体が急変したのか?


………いや、なら私自体に苦痛が走るはずだ。

何も起こっていない。

ならば、それはないだろう。


だが、不安はずっと残っている。

死ぬなど、絶対に嫌だ。

負けてたまるか、死ぬな、私。

そして、唐突に、



全てが急変した。



急に、暖かな空間から抜け出した。

それと共に目を開かなくてもわかる眩しき光が容赦なく差し込んできて、体が動きやすくなり、

そして、何故か、


無性に涙が出てきた。

理由はまったくわからなかったが、泣かなくてはいけない気がしたのだ。


そして何人かの声が聞こえる。

女性が3人。男性が1人。

何も見えないせいでどんな人かは見れないが、

とても、喜んでいるらしい。

とにかく、俺は生きているらしい。

よかった、本当によかった……。


………あれ?待てよ。

意識が戻ったなら、何故妻と子の声が聞こえないんだ?

いや、病院で手術をしていたとするなら当然と言えよう。

だが、なんだろう。この妙な違和感は………。


そして、泣き止むと共に声を出そうと試みる。

だが、


「……あぁ、うう〜」


……上手く、喋れないだと…?

なんでだ?何故喋れない?

そして、私は舌を使って口の中を舐め回してみる。

そこで衝撃の事実を私は知った。


歯が、なかったのだ。

事故の時、歯が全て折れた記憶は一切ない。

なら、一体どうして?

そしてお湯に入れられ私はまた泣き出した。

何がなんなんだか、まったく分からない。


そんなことを呑気に考えていたのだ。

まだ、この時は。


ーーー


さて、それから話は3ヶ月ほどたった頃に飛ぶ。


まず、私は死んでいた。

そして何故か前世の記憶を持ったまま、

赤ん坊に転生してしまったのだ。


……良かったのか、悪かったかで言えば、

もちろん、悪かったと言えよう。

だが、ある意味良かったのかもしれない。

妻と子、そして企業を失ったが、

記憶を持ったまま転生という、例年小説でよく見るとんでもな展開を迎えることが出来たのだ。


これを利用すれば、私は前世よりももっと素晴らしい生涯を送ることが出来るだろう。



………と、思っていたのだが。

そんな上手くはいかないらしい。


どうやら、ここは地球ではないのだ。

理由は複数ある。


まず、言語が違う。

私は8カ国語を使えるのだが、

そのどの言葉も通用しない。

まぁ、もっと言語があるのだが、ほかの言語もなんとなくは覚えている中で1つも該当しないのは明らかにおかしい。

まぁ、既になんとなく言語のパターンは覚えられたのだが。


次に種族である。

私の出産時に聞いた声の内の2つは両親のものだった。

そして、目を開き見えるようになった時に両親の顔をみて、


私は愕然とした。


母の名前はクレア・リームレット。

母は銀髪ショート、整った顔立ちで耳が長く年齢は20代後半くらいだろう。ベッドから見た限りナイスバディ、ぼんきゅっぼんを体現した女性と言えよう。

そんなのが私の母親なのだ。

これは、将来有望な美青年になるだろう。


父の名前はイヴリン・リームレット。

茶髪オールバックのイヴリンは優しそうな顔立ちをしているが、少し無精髭が生えていることで渋さがありなかなかのナイスガイである。年齢はクレアと同じく20代後半だと思う。がっしりした体系をしていて背丈は見た感じ180超あると見える。私より少し高いと思う。

それが私の父親だ。

これは、将来モテるのは確定と言えよう。


さて、そんな美と美のハーフの子供である私。

名前はレオノーラ・リームレット。

まあ風呂に入る際に自分の体を見たことがないが、転生ものの定石として性別は同じであろう。

………私は、こっちの世界ではとんでもな美形男性に育つのではないか!?

しかも祝儀を私にきた女性は皆美形であった。

ならば、こういう作品のルールとして異世界の人たちは大半が美形なのだろう。

これなら、アイドルなどのメディア系職業をして大量の稼ぎも夢じゃn……。


………っと、話がそれたな。

私が言いたいのは、母の見た目のことなのだ。

耳が長いと言ったがそれが理由の1つなのである。


母は、俗に言う『エルフ』らしいのだ。


父と母の会話にこんなものがあった。

「ねぇ、あなた。レーラは私みたいに、エルフの血を色濃く継いでいないかしら、少し心配だわ……」

「大丈夫だよ、クレア。エルフの血は人に混ざりにくいから」

「なら、良いのだけど……」


………とのことで、クレアがエルフだと言う話を聞いたことでより一層この世界が地球ではない、異世界だという確信が強まったのだ。


そして、極め付けがこの世界の常識の違いだ。


私ははいはいという移動方を始めてからまずこの家を見て回った。

ここは、割と大きな家だった。

木造の3階建てで1階にはリビング、キッチン、そして小部屋が2つほどにベランダがある。

2階はダイニング、小部屋が4つほど。

3階は1つの階がホールみたいになっており、広い印象がある。


ここまでくればわかるだろう。

ここの家庭は裕福なのだ。


そして、あるとき私はベランダにクレアに抱き上げてもらって外を眺めている時、

イヴリンが剣を振り回しているのを見た。


私は、初めは「おいおい」と心の中で呆れた。

20代後半で剣を振り回しているなんぞ……。

だが、改めて考えると不思議ではなかった。

なぜなら、クレアはエルフなのだから異世界で剣を振り回して稽古をしているなどというのは当然なのだと思ったからだ。


「お父さんはね、元王都の騎士だったのよ」

そうまるで自分の自慢話のように私に聞かせてくれるクレアの姿は、40代後半の私から見ればとても微笑ましいものだった。


そこで、ここが異世界ならばと考え、


私はクレアの手の中からわざと落ちてみせた。


「キャア!!」

ゴスンっという鈍い音を聞いた途端にクレアの顔が青ざめていくのが見て取れた。

そしてクレアは注意深く、私の頭部を見回した。

「……怪我はなさそうね」

そう言うとホッとした顔を私に向けた。


「でも、念のため『我、神のご加護の元に力無き者に癒しを与えん。回復魔法【治療】(ヒール)』」

そしてクレアは私に向かい手を出してそう唱えた。

すると、痛みが引いて行くのを感じる。


そう、これである。

異世界と言えば、魔法である。

小さい頃、一度は夢見たことがあるだろう。

ドラ◯エ、ファイ◯ルファン◯ジー、ハリー◯ッターなど多くのファンタジー作品に魔法は必要不可欠なのだ。


ということで、この手の理由によりこの世界は地球などという超現実的世界ではなく、

ファンタジー世界という超非現実的世界に転生してしまったのだ。

わりと小説やゲーム好きの私にとって、とても貴重な体験と言えよう。


そして、この手の作品の定石として、

『チート』持ち。これが重要である。

私は一体、どんなチートを持ってきたのだろう。

今から楽しみだ。


まぁ、今できることは両親が読み聞かせてくれる本から言語の読み書きを覚えることに専念しよう。


だが、何か嫌な予感がするのは、何故だろうか?


………まぁ、気のせいだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ