62話 ひいおじいちゃんと新しい未来への夢
みなさま乙ポンです
夜中の投稿許してください
今回は、まぁまぁ軽い内容にしました
お口に合えばよろしいのですが
綺麗な朝焼けの中に冷たい秋風が混じってきた東京品川の一角で、縁側に座り少し厚手の着流しを着る男がいた
まだまだ早朝という事で、この家ではたった一人の人間を除いて眠っている。
朝焼けのオレンジと深い群青色の空の中に滑らせる様に源一郎は軍刀の手入れを進めた。
「なんだか今日は客人がきそうだな。 さてと、軍服に着替えてくるかな・・・」
そんな風にぼやいていた瞬間、朝もやが源一郎の体を包み込んだ。
どことなくねっとりとしていて、狂愛の様な目線がチラチラと見つめている
気持ちの悪いったらありゃしないってのに、カラカラとただ笑うだけだった。
「ったく、あいつ。 来るなら来るで連絡よこせ。 茶菓子でも用意してやらねばな」
「急にどうしたんだろう? 最近ちゃんと軍服を着ていなかったのに。 ソーマ、あんたなんか知ってる? 」
「聞いたら、客人がくるんだって。 誰って聞いても内緒ってしか言わない。花世から聞いて見たら」
「弟の分際で、花世って生意気な!!」
朝もやが本格的に品川一帯を包み込み始めたのは10時ごろだった。
秋風の匂いの中に混じって、淡い桜の匂いが鼻腔の奥を包み込む。
塩害で咲いた桜の匂いと思ったが、田中家の周辺で桜が咲いてしまったとは聞いたことがない。
「二人とも心静かに待てぬのか? 喧嘩は禁止ぞ。 と言う間にきたか」
玄関を開け大通りに面する道路の方を花世たちはじっと見つめるとそよ風の中から硬い軍靴の音が聞こえてきた。
その音はやがて、大きくなると同時にもう一つヒールで歩く音も聞こえてきた。
音の主は深緑の詰襟に太ももが少し広がった軍服と軍帽を身につけ白いサーベルを帯刀した白石の姿だ
もう一人は黒字ににうっすらと細い白ストライプが入ったスーツを着る白石のフィアンセ三田結衣だ
「お忙しいところすいません、大日本帝国陸軍憲兵少尉 白石富治であります!!」
「もうお前、憲兵じゃないからそんな挨拶するな。 っていうかなんで来た!!?」
秋の空の下、二人の兵士は品川の地で巡り会う。
互いに憎み合い、戦ってきたものたちが品川という地で再開を果たしたのだ。
そんな二人の間には憎しみも、恨みもなくスッキリとした顔がある
だが、三田の方はというと白石の古めかしい挨拶に苦笑いを浮かべていた
「あの、主人がお世話になっています・・・・今日はお願いがあって来ました。実は・・・」
今度、私たちは、け・・・・・・・・結婚します。
「おやまぁ、白石よ・・・・・。そうか、結衣さんを幸せにしなさい。 ん?」
ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンんん?
「花世ちゃん」
「え?」
「創真くん」
「俺?」
「今、結衣殿の口からなんて聞こえた? 今なんて言った? ひいおじいちゃんわからない」
「「結婚だって・・・・・・・・え!?」」
その言葉に刺激されたのか愛し合う二人は頬を染め、互いに見つめ甘い幸せに一歩近ずいた様子だ。
だが、創真にとってはそれが妬みの元になりかねない。
非リア充にとって、目の前にある幸せオーラはきつくて腐敗しそうになっているのだ
「リア充爆発しろ。っというか幸せになれよ・・・・・あああああああああ」
「創真が壊れた。この人でなしの白石よ。 貴様には銃殺刑をくれてやろう」
「それは、創真くんが勝手に自爆しただけでしょ? そんなことより今日は話したいことがあります。・・・自分の罪の償いについてです」
「わかった、この田中源一郎に話してみろ。 その前に家に上がりなさい白石よ」
田中邸宅に入って早々、軍服姿の白石を見て源一郎の妻にしてBIG MOM な梅子は驚いた
可愛らしいお人形の後ろに、憲兵がいるとぼそりと呟いていたのだ。
「憲兵さんがいる。・・・・そうかーお父様も捕まる時が来たのか〜 南無」
「勝手に連れていかれる雰囲気出すのやめてくれる?」
「連れて行っていいですね? 源一郎さまと結衣と僕・・・ハァハァ」
「やっぱりダメです。 犯罪の匂いがする、間違いない」
(もうやだこの二人。 もう・・・誰か止めて 頼むよ〜)
やたらと憲兵の腕章をつけた白石を警戒する梅子
それをさもいなかったかのようにあしらう白石
とりあえず、茶をしばいて本題を聞こうやとポッキー片手に緑茶を流し込む源一郎
花世・創真は思った
軍人やその家族は血の気が多いバカばっかだと
「して白石よ。 お前のいう罪の償いとやらを聞かせてもらおうかな?」
「えぇ私、白石富治は・・・あのクーデターの後に死のうと思いました。自分がやった罪の大きさが大きすぎたことに死にたくなったのです」
そんな時に結衣はそばにいてくれました。
結衣の存在の大きさに気がついたと言ってもおかしくないのです、彼女がいなければ私は、本当に命を絶つつもりでいました。
ヲ式を動かして暴れている時の記憶はほとんどと言ってありません、不思議なくらいに抜けているのです
いいえ、もっと昔、そうですね。 戦時中の時からかもしれません。
建御雷・建御名方兵の双方の兵を作るという計画を知った時から狂って行ったのです。
もっと情報を知ろうと上層部の人間に近づいたのですが、薬を飲まされ犯されてそれから繰り返しで。
いつの間にか私は、汚い存在に成り下がったのです。
ですが源一郎様のことが忘れられず、義兄弟の約束をしてくださった源一郎様のことをずっと慕っていたのです
あの方なら止めてくれる、私を助けてくれる。
ですがいつの間にか、彼の・・・・源一郎様を望む世界をなんて変わっていったのです
「敗戦色が濃くなっていくにつれて多くの愚行を行いました。ヲ式を作るために、実兄を殺し源一郎様のご友人を致死まで追い込みそして源一郎様の兄上様も・・・・」
「そうか・・・・。 やはりお前が・・・兄貴を・・・・。」
「恨まれても当然のことです。 それほどの大罪を犯しそれでもなお生きている。」
戦後から平成という輝かしい時代になっても私の心は浄化されることはなかったのです。
時代に合わせ人間という生皮をかぶり生と死を繰り返し、悪魔のような所業を行ってきました。
あなたの望む世界を作れるならばと暴走して行ったのです
闇という沼ぞこの中を歩いていく中で、私は結衣という素敵な女性と出会ったのです。
結衣という光があったから、私の中の自我は保たれたのかもしれません。
でなければ今頃、もっと凄惨なことをしていたでしょう
「私が行った行為は決して消えない。 死んでもこの罪は残ります。 未来永劫消えることはありません」
「・・・・どうするつもりだ・・・・」
「私に残された時間・・・・。人間本来の寿命が消えるまで私は生きて、私のやり方で全ての罪を償います。」
「生きて罪を償うか・・・それならば、如何なることも受け入れなさい。決して穏やかではないだろうがな」
「もちろん、そのつもりです。 ようやく白石めの肩の荷がほんの少しだけおりました。最初の任務は彼女の幸せを・・・・ね 」
「こんな話の続きではありますが、田中源一郎さん。 私たちの保証人になってくださいませんか?」
民法上、婚姻届には二人以上の保証人が必要となる。
だが白石の場合は、両親ともに戦後に死亡している。三田結衣の方も両親はすでに他界している。
届出の欄には、勤め先の先輩の名前と住所が書かれているがまだ空欄が一人分ほど残っている。
この二人を見つめてくれる両親はいない、頼みの綱は源一郎だけなのだ
「あいわかった、大日本帝国陸軍歩兵少尉 田中源一郎。 二人の祝福を見届けようぞ。 二人の未来に幸あれ!!」
そう言い届出の証人欄に名前と書いて印鑑を強く押す
二人の目からは涙がこぼれ落ち小さく寄り添い、愛情を分かち合う。
白石の中にあったわだかまりも何もかもが終戦を迎えた瞬間にもなっていた。
秋空の中に小さく希望の溢れる新しい世界が生まれた瞬間だった。
白石の心の中の激動は消えて彼なりの終戦を迎えさせました。
白石の過去としては両親からあまり愛されず、その代わりに源一郎という大きな存在を見つけ
愛してくれる人と彼なりに投げかけたのかもしれません。
三田結衣を愛することは彼なりの救いの道に近いものがあったのです
敵にも色々とあるってことです←(おい)
次回予告
「心配させてすまなかった」
「もう儂の中であんたが何者か、わかっていたよ。兄貴」
田中邸宅に現れた軍服を着込んだもう一人の源一郎
いや源一郎の血の繋がらない兄の田中正明
「真実を話す。 俺とお前は・・・・」
「・・・・・・なるほど。そういうことだったのか」
次回
ひいおじいちゃんと建御雷兵の本当の真実
「愛してぐれでどうも。正明あんにゃ」
「おらの弟どして生まれでぎでぐれでどうも。どだ未来でもおらはおめの兄貴だがらな」




