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4話 ひいおじいちゃんと再会(2)

昼まで寝る。なんとも素晴らしきぐでぐで生活。

社会人になったらできない生活。

改めないと

花世と浩一が散策部隊と合流してそれぞれの長にこっぴどく絞られた後、始末書をかき退社して一時間。午後6時半ごろおばけ工場で出会った女子生徒である相川雪乃と少し話をし別れた後二人は急いで家路を急いだ。


今夜は宴会になる。そうなるととてつもなく楽しみにしていることも当然として生まれる、花世の曽祖母である田中梅子が帰ってくるのだ。そしてこの日は梅子の96回目の誕生日、そのパーティをするのだ。そのため田中家は大忙しになる、もちろんそれぞれ誕生日プレゼントを考えて準備をしているし酒も入るためもっと騒がしいことにはこの上ない。そして、宴会に花世を助けた軍人もこっそりとやってくると言うのだから盛り上がることは間違いなかった。


「花:楽しみだね。誕生日会」

「浩:そうだな。それに軍人さんもくるなら今日はいつも以上に盛り上がるぞ。」


そうだねーなんて言いながら二人は急ぎ足で家に帰りついた瞬間に服を着替えて早速準備に取り掛かる。曽祖母が帰ってくるのはいつも6時50分ごろ、ちょっとしたびっくり要素を入れるのにもあまり時間はないが用意はできる。いつも決まった内容だが微笑んでくれる梅子が皆好きだ。


食事の準備を済ませドキドキと緊張しながら待っていると外から車のエンジン音が聞こえる。誰かと話す声聞いたことのあるあの声、呼び鈴がなると同時に宴会はスタートするため皆所定のいちに移動しドアが開くのを待った。


「梅:ただいまー。お待たせしてごめんね」


誕生日おめでとー!!!


ドアを開けるとともに変わらぬ愛を注いでいる家族からのサプライズに毎度毎度、涙を流す梅子。その度にありがと

うとみんなに感謝するところがまた愛されることにつながる。

さぁ宴会という時に再び呼び鈴の音が聞こえ花世が外に出るときっかりと決め込んだ軍服姿に華やかに梅の香りのする外套を来て現れたのは夕方、花世たちを助けた彼が笑顔を浮かべながら立っていたのだ


「軍:少し早すぎたかな。呼ばれてもいいのだろうか」

「花:入ってよおじちゃん。お礼が言いたかったし、立ち話もなんだから上がって上がって!」


ではというと軍人は玄関に上がり家族の前で深く一礼し周りを見渡す。


「花:紹介するね。うちのひいおばあちゃんの梅子ひいばあちゃん」

「梅:この度は私のひ孫が大変お世話になりまし・・・・・」


にこやかに笑っていたはずの梅子が突然として動かなくなり口をわなわなと震えさせる。


そして軍人も梅子を見てか開いた口がふさがらず手で覆い隠してしまっている。二人の間には独特の空間が生まれたように感じ何かを悟ったかのように梅子は突然として今まで溜まっていた何かを洪水のように、ダムの放流のように涙を流し始める。


いつまで立っても来ない梅子にしびれを切らした源太が玄関に現れるとその姿を見て軍人は首を横に振る。源太も同様に軍人の姿を見て何かを悟ったかのように後ずさりをしその姿に驚いた祖母の晶子あきこも様子を見に来ると仏間に置かれている遺影と見比べて何度に駆け込み薙刀を持ってくると咄嗟に構えブルブルと震え始めた


「軍:やはり、・・済まない花世、ようがあったので帰るとする。またいつでも誘ってくれ。済まない」

「花:おじちゃん!!待って!!」


そのまま振り返らず立ち去ろうとしている。なぜ梅子や源太を見て慌てて帰ろうとするのかそのリアクションや行動の意味など花世には知る由もなくただ呆然と立ち尽くしているだけだ


「梅:お待ちになってください。・・いいえ・・驚いてごめんさないお父様。長く戦われて疲れたでしょう。お帰りなさい」


お父様と聞いて花世はいやそこにいた全員が固まってしまいそのまま軍人の方をじっと見る。「お父様」や「お帰りなさい」と聞いた途端玄関のノブを回す手が止まりゆっくりと軍人は振り返ると大粒の涙を流し首を」横に振り始める。


「梅:私はどんなに時が立ってもお父様のことは一度たりとも忘れたことがありません。あなたの佇まい、話し方、笑い声。あなたの軍服の4つ目のボタンがいつも取れそうになっているところ、忘れてなどいません。本当にあの時代を経てどんな形でもよかった。ずっと遠い場所から今帰ってこられた。それだけで私は嬉しいです。」

「軍:私も決してあなたのことを忘れてなどいません。死地を駆けずり回りどれほど苦しくともあなたを、愛するあなたを忘れてなどいないのです。あなたのお顔をもっとよく見せてください」


軍人は小さく正座をする梅子の前にくると梅子の目線に合うように腰を少し落とし、白い手袋を外しゴツゴツとした両手で梅子の頬に包み込むように触れ、軍人も溜まっていた何かが音を立てて崩れるかのようにボロボロと涙を流し始めていく。


その手に応えるかのように梅子も軍人の頬を小さな両手で包み込むように優しく触れて行く。長い時代を超えて激動の世が生み出した悲しみを超えて二人は何かを確かに分かち合い、長く辛い時代という凍てつく溝を確かに溶かしあっている。



「軍:ならばあそこにいるのは源太・・か。おいで我が息子よ。立派になったな」

「源:・・・・お父さん。ずっとあなたにお会いしたかった。小さい時あなたが夢の中で出てきても顔はずっと見えなかった。今会えた。それだけでも・・・お父さん」


ずっと父親がいないことに葛藤を生み出し、周りの子供に父親がいないことを影でささやかれていた過去があると時々家族に話していた源太にとって今それは親子の夢である再会である。数少ない家族の時間

本来たくさんあっておかしくない時間がなくどこか心の中がぽかんと開いていた源太、それはこの軍人も同じことだった会いたいと思っていても会えない悲しさ。目の前に繰り広げられる生きるか死ぬかの瀬戸際を超えてようやく巡り遭えた。それが夢がある意味現実になり叶ったと言える。





軍人は外套を脱ぎ小さくたたみ立ち上がると同時に姿勢を正しまっすぐと伸びる姿勢に厳格さが現れ、右肘を強くはり四指を綺麗に一直線に伸ばすと右瞼の少し上に指がががるくらいの位置で止める

つまりは敬礼である、彼が軍人であるという証明の一つ、カーキ色の制服と軍帽に膝下少しのところまである軍靴。彼がようやく時を超えて平成の平和な世で過ごす家族の元に帰ってきたのだ


「大日本帝国陸軍 准尉 田中源一郎 ただいま帰還いたしました。遅くなりすぎて御免なさい。」




この日田中家では大きなイベントが二つ生まれた。それは梅子の誕生日、そして源一郎の帰還記念日。

ぽかんと抜けていた家族の穴の部分に源一郎が帰ってきたことにより本格的に田中家は始動する。




この様子を遠くから見ていた男、花世の弟である創真そうまは最初状況をまったくつかめていなかったものの軍服をきている男が時代の荒波に揉まれながらそれに争い帰ってきた人である源一郎の存在を確認し梅子の心境を自分の心境に合わせてしまい大号泣をしている


「花:創真。あんた泣きすぎじゃない?」

「創:だっでざ〜ひいばあちゃんの誕生日に死んでしまったって思ったひいじいちゃんがどんな形であれ帰ってきたんだろ?俺なら涙腺崩壊するぜ」

「花:あっそ」

「創:ショボーン」


家族の新しい形を見て新鮮な気持ちが込み上がる源一郎。創真の顔を見ると二人はシンクロを初めてどこから学んだのか弦一郎はお前わかってるじゃんと言わんばかりに頷き初め最初から知り合いと言わんばかりに心の同調、フィーリングを始める。先までの涙はどこに消えたとばかりにこの状況を見ていた晶子の感動は消えていき涙返せよとぼやきたくなって仕方がなかった。


「晶:涙返しなさいよ」


この声は消えて誰の耳に届くことはなく見事にスルーされていく


「源一:創真か・・・大きくなったな。・・そういえば目が悪いのか?昔はメガネをかけてなどいなかったような気がするのだが」

「創:これ?視力が落ちないようになっているメガネ」


直感的に感じた。なぜ創真と源一郎は初対面なはずなのに詰まることなく会話が成立していることに田中家一同は不審に思った。一体な〜ぜ〜


「創:ねぇちゃんがひいじいちゃんと会えなくなっても俺は会えていた時期があったんだ。というか見えていたっていうのかな。時々だったけど」

「涼:あんた!なんでそんなこと黙っていたのよ!」

「創:いうなって言われてたから。また辛いことが起こったら嫌だからって」


源一郎にとって辛いことそれは田中家全員に何か不吉なことが起こるということ、不吉なことというのはなにかわからないが硬く口止めをされていたというのならば子ども心に受け取って長い間何も語らなかったのだ。そして長い間語られず記憶の中からも忘れていた頃に止まっていた時間が復活した。


「涼:こんなところで立ち話はなんだし。ご飯食べるよ!!みんな席について今日はひいばあちゃんの大好きなオムライスの日よ」


オムライス。それはバターの風味の効いたライスにベーコンや玉ねぎ、人参などの具材を混ぜケチャップと合えたケチャップライスに牛乳・塩胡椒そしてみんな大好き卵を三つほどといて熱々のフライパンに溶いた卵を半熟になるまで炒め、これまた熱々のケチャップライスにドッキングし甘くて優しい香りとすきっ腹をいじめ抜くある意味テロリズム的な食事(嫌いな人はごめんなさい)発祥は海外ではなく日本

明治から大正ぐらいに生まれた料理。そしてこの料理は田中家に嫁入りする際に必要な料理となる。

涼子の得意料理の一つ。


「源一:・・・・おむらいす?・・・あー!何十年ぶりだな。あの時は食べたくても食べれなかったからな〜」

「源:お父さん座ってください。帽子もとって。さぁ!」



大広間のような場所に移動すると、そこには家族全員が集結しておりテーブルに置かれた熱々トロトロのオムライスから優しく甘い香りが立ち込め優しく体を包んでいく。浩一に至ってはよだれが止まらず垂れ流し状態一歩手前まで行く・・ってどんだけ腹減ってんだよ。創真はスマホでオムライスを絶妙かつ湯気が立つところを必死になって写真を撮っていて花世はそれに負けじと一眼レフで写真を撮ろうとする。


そして兄弟は写真戦争に突入しお互いにこっちの方がすごいと言い張る始末。しかし源一郎が興味を持ったのはスマホで物珍しそうに見つめる


「源一:これはなんだ?」

「創:スマートフォンっていうんだ。写真撮れるし、電話だってできる。ゲーム・・娯楽だってできるよ。なんていうかな。電話を持ち運びできるような機械だよ」

「源一:おもしーなー!!んだなものがあるだべ!?世の中変わったな」


激しい訛り口調に創真は驚き、この人こんなんだったのかと興味が湧き始める。そして訛りのことが気になりすぎて


写真を撮ることを途端に辞めてしまう


この様子を見て梅子は涙を拭き優しく微笑む。あの人が本当に帰ってきてくれたそれだけど本当に嬉しい、考えているのも束の間だった少し大きめの片手鍋を持った涼子が現れお玉で鍋の中を混ぜると浩一は途端に正座をしスプーンをもちいつでも食べれるように臨戦態勢に入る。


バカだなーっと思っていた花世しかしバカは浩一だけではなかった創真、源太がいつのまにか臨戦態勢に入り鍋のものを早く掛けるように目線で涼子にアピールを送る。だめだこりゃと頭を抱え込み源一郎の方を見ればそこには神々しき姿がある



「源一:馬鹿者。待つときはこのように待つのだ。待つ時間というのは食事と心を通わせる時間なのだ」


片手にもたれたスプーンの先はオムライスに向けられもう片方の手は拝むように静かに広げられ、綺麗に正座された足は何人たりとも動かすことができず、源一郎の周りには美しく花がさき小鳥が戯れ、

背中からは神々しき光を放ちそれを体にまとい、一種の菩薩を作り上げている。その姿を見た花世は直感した



「花:田中家のアホ伝説はこの人から受け継がれていったんだ。やっぱり血が繋がっているって怖いな」


しかし男連中はその姿を見て土下座をし、あるものは手をあわせ、あるものは神様ーと崇め始める


「「「わたくし達にその技の伝授を。どうか教えてください」」」

「源一:よかろう。まず心を沈ませ食事と会話をするのだ」


バカが四人集まり頭を抱えていると涼子がオムライスに鍋の入ったものをかけ始める。甘い卵の香りの上にこれまた甘く。ほろ苦くコクの深い香りを放つ褐色色のデミグラスソースがかけられていくバカどもはその工程を見ると、食欲が収まりきらなくなり高速振動を起こし始める。デミグラスソース、ドミグラスソースともいう1900年代初頭にフランス料理シェフが使い始めたのが最初。めちゃ美味しい(嫌いな人はごめんなさい)



「涼:さぁ召し上がれ。」


いただきまーすのはずがバカどもは挨拶を素早く終わらせると一気にオムライスをかき込んでいた。


晶子もそのバカについていけず梅子の方を見ると口いっぱいにデミグラスソースをつけて幸せそうに食べる姿を見て可愛いと思わずつぶやき、源一郎に至っては神々しい光を放ちながら完食してしまっている。


もう少しソースをっと花世が鍋に入っているお玉に手をかけたときだ、事件は起きてしまった。母親の様子が変なのだ。片手には一升瓶がありラベルを見るとアルコールの度数が高い焼酎、「神○河」を開けて次に手を伸ばしている。というかそれすら開けているのだ。ストレートでラッパ飲み危険な飲み方そして待ち受ける先にあったのは。


秘技:スプラッター(暴れ上戸)


「涼:浩一飲んでるか!!!!オッラッッァァああああ!!」

涼子は浩一を思いっきり投げ飛ばし逃げようと足掻く足を引きずるこむと口を無理やり開けて六本目の神○河を勢いよく流し込み始める。


浩一は抵抗する会も虚しく死亡。創真は缶チュウハイの入ったコップを口に当て続け飲んでますよーアピールも虚しく缶酎ハイの入ったコップに神○河を入れられて死亡。源太は逃げようとするがコップに入っていた飲み物がすでに神○河出会ったため死亡。もうだめかそう思ったときである、源一郎が神○河主導権を握り涼子死亡。









片付けを全員で済ませ、涼子は泣きながら浩一に謝りそれを浩一は泣きながら皿洗いをする。横でこの家族大丈夫かと心配しながら食器を拭き始める創真。全員が風呂を済ませたのは夜の10時半

花世が髪を乾かし寝る準備を済ませ何と無く大広間の方を通ると一人縁側で月を見ながら酒を飲む源一郎がいた。どこか妖艶でどこか寂しげで大人の余裕がぐっと引き込まれていくような気がしたのだ


「源一:花世か・・隣においで。月を見ながら一杯やっていたのだが飲むか?」

「花:いいの?じゃあおちょこ取ってくるよ。」

「源一:ここにもう一つある。さぁ」


おちょこを持ち徳利の中に入っている日本酒を口つけるとほろ酔いになり外を見れば月と梅、桜が花びらを散らしながら夜を彩っている。


「源一:こんな風にゆっくりするのはいつぶりだろうな。あのときは生きるのに必死すぎたからな」

「花:・・・・辛かったよね。想像つかないよ。こんなに平和な世の中で生きていると。なかなか」

「源一:思いつかない方がいい。平和な世で生きているのであれば。だがあまりにも儂が払った代償は大きすぎた」



少しうなだれている源一郎。そんなとき優しく少しひんやりとした風が吹くとおちょこの中に梅の花びらが一枚、慰めるかのように舞い込んでくる


「源一:梅の花に慰められたか。ありがたいな」

「花:ねぇおじちゃん・・ううんひいおじいちゃん。帰ってきてくれてありがとう。お疲れ様。これからはよろしくね。ひいおじいちゃん」

「源一:当たり前だ。じじいはちゃんと帰ってきたぞ。みんなの元にな。こちらこそ頼むぞ。めんけぇ花世」


ゆっくりと夜は更けていく。何もかもを包み込みながら不協和音も



「なんであの子娘を殺せなかった?」

「ソレハ彼ノ方ニ止メラレテ・・」

「もういい、だがあの人が目を覚ましただけでいい。お帰りなさい。田中少尉。愛していますよ。我が隊長」


近づくものも








曽祖父の名前が判明しましたね。田中源一郎さん

会話の際には「花:」のように「源一:」という風にさせていただきます

その方がわかりやすいかな?


次回予告

現世に来て馴染もうとする源一郎、家の近所にあるコンビニに突撃しその便利さに驚く

そしてそこにいた女子高生に言われた一言により源一郎は驚きを隠せず家族に打ち明ける。

次回ひいおじいちゃんとコンビニ

「創:ひいじいちゃんグラセ○しようよ」

「源一:グラセ・・・・なんじゃそれ?」


次回もゆっくりしていってね

ご飯食べている方、お邪魔しました

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