2話 夜の梅と邂逅を
花見してないなー。花見したいなー。
もうどうにでもなれ私の心
長い企画会議を終えて私は自宅にへと帰る。気がつけば夜の12時超えたところ終電までギリギリということではないけど結構ハードすぎる。
「花:疲れた。家に帰ってお風呂に入ってそれからオフトゥンの中にダイブしたい。」
季節は春だというのに夜になると少し風が寒く感じる。少し冷たい夜風とともにどこからか私の知っている花の匂いがした。
「花:あぁ梅の花が。綺麗」
月夜と街灯が織りなす現代的かつ妖艶な梅の花に少し見とれて、思わずスマホの写真を起動。
月と梅の美しい写真を撮る。春は桜という人が多いかもしれない、でも桜も好きだけど一番好きなのは梅の花なのだと自己完結的に思う。紀貫之や菅原道真の気持ちがなんとなくわかる様な気がする、というか梅に関する和歌を読んでくれてありがとう。
梅の花を後にして帰ろうと思った時だった。電車に乗っていて気がついた、駅からずっとつけられている様な気がする。後ろを振り返るのも嫌だけど試しに自宅の最寄りではなく一つ後で一度降りて、もう一度電車に乗って最寄りにへと向かう。やばいやっぱり誰かついて来てる
「花:うそでしょ。」
最近おかしな事件が起きているとあの子言っていたなぁーって思い出している場合じゃない。早歩きで様子を見ているけどやっぱりついて来ている。カバンから貰い物の防犯ブザーを準備して・・・・
「おい動くんじゃねぇぞ。手に持っているものをしまえ」
怖い。
そんな、まさか本当に痴漢?
イヤダイヤダイヤダイヤダ嫌だいやだ
誰か助けて!
誰か!!
誰か!!
叫ぼうと思っていても口を手で覆われているから助けを呼ぼうともできない。
花:助けて!!
「??:いかんのう、うら若き女性をこの様な手荒な真似をしてわなぁ」
花:え?だれ?この声どこかで聞いたことがある様な
それは月光の光とともに私の前に現れる遠い記憶の中にあるあの人の姿どこか懐かしくどこか暖かいそんな姿。
薄暗い道、ひらりひらりとマントをはためかせながらその人は私の前に現れる。
テレビで見る様な軍服姿。でも何処か品のある様な。異質だと思ったのは人間の様な目ではないということ。月の黄金色よりももっと闇に混ざる黄金色の二つのもの、痴漢魔も思わず後ずさりしている。なのに私は怖くない。それどころかずっと昔にもあった様な気がする。
その人は軍帽を取ると胸の前に当てて深く深く一礼をする
「??:こんな梅や桜が美しく映える夜に女性をいたぶるとは如何なものか。その女性が怖がってしまっているではないですか。どうかこの私に免じてその方を離してくださいませんか。」
どこか気品があってどこか強くて、この人のことを思い出しそうで思い出せない。暖かくて寂しくてこの感情が一体なんなのかわからない。それでもなんだか懐かしい様な
「なんだよお前。気にくわねぇよ。邪魔すんな!!!」
私から離れたと思えばその人に向かって殴りつけようとしている。助けなきゃ110番しないと!
咄嗟にカバンの中になる携帯に手を伸ばそうとしたが体がすくんで動けない。まずい、どうすれば
「いかんのう。その様に血の気が多くては困りまするな」
一瞬のうちで何が起こったかわからなかった。気がつけば痴漢魔を投げ飛ばしていて殴りに来てた方の手首を握りしめ逆関節に曲げているためか少しずつダメージがいく様に握り続けている。ふうっとため息をついてその手を離すと痴漢魔は「覚えていろ」っとだけ言ってそそくさと夜の闇に紛れて消え去って言った。
「あの・・・ありがとうございます」
「礼には及びませんよ。しかし今宵は少しばかり危ない夜。私が家までお送りしましょう」
「そんな。大丈夫です。それにご迷惑をかけてしまいますし。」
彼は軍帽をかぶりなおし片足を跪き、マントから右手を出すと私の右手をそっと支える様に手を伸ばす。その一つ一つの仕草に心が引き込まれる様な気がしてなんだか心地が良かった。守られているというそんな感覚に浸っていく。
「あなたに出会えたのもきっと何かの縁。この様に美しい大輪の梅と桜の花が咲き乱れる夜にこれまた美しいあなたと出会えた。
どうかこの私めにあなたを守らせてはくれませんか。少しの時間でも構いません。どうか私のわがままを一つ聞いてくれませんか?」
なんだか、わからなかったけど今は誰かに守られたい。一人でこの道を歩くのがとても怖いと、さっきのことで足がすくんで動けない。しかしこの人がいるならきっと大丈夫な様な気がする。声には出なかったが首をゆっくりを縦に振るとその人も優しく首を振り返してくれて、立ち上がって気がついた。背がとても高い。すごくっというわけではないけど180はある様なそんな感じがする。
「ではゆるりと参りましょうか」
ゆっくりと自宅までの道をその人と一緒に歩いていく。どこからくるかわからない感情だけど、どこか安心できる。ふと顔を見ると黄金色の目は消えていて日本人特有の黒いめをしている。さっきの恐怖心がまだあるからか手の震えが止まらなかったけどそのぶんこの人が優しく握りしめてくれる。白い手袋をはめているけどその向こうからこの人の体温が感じ取れる様な気がした。
あの場所から歩いて十分。ようやく家が見えて来た。ここまでくると安心できる。
「危ない!!」
気の緩みから足をくじきそうになるけどなんとか助けてもらい、それからほどなくして家に到着できた。心配して待っていた家族が私の顔を見た途端泣き出したし、遅くなった理由を言った途端男軍団が持てる武器を持って飛びだおうとするが助けてもたったという趣旨を聞いてその人にお礼をしたいというのでまだ玄関前にいると思い振り返った
「花:あれ?さっきまでいたのにどうして?」
「本当にいらっしゃったの?」
「確かにいたんだけどおかしいな?」
あたりを探しても夜で暗くて見えないため探しようがない。しかし玄関の前には小さな枝についた大輪の梅と桜の花が一つ置かれていてその人と歩いたという記憶は残っていた。二つの枝を拾い小さくお辞儀をすると私はそのまま家の中に入って風呂を済ませて二階の自分の部屋に入って花瓶にその花を挿しそのままオフトゥンにダイブする。
「花:ねむーい」
仕事の疲れと、痴漢魔の襲撃で疲れたからそのまま眠りにつこうとするがそれを遮る様に外が急にサイレンの感高い音が聞こえて来た
「花:さっきの痴漢魔が捕まったのかな?」
そのサイレンはだんだんとこっちに近づいて来て、家の前に止まると玄関前が騒がしくなる。
かと思ったら階段からドスンドスンと登ってくる音が聞こえ私の部屋の前で立ち止まりドアを引きちぎるかの様に盛大に開けた。
「??:どうもお疲れ様です田中花世さん。警視庁捜査一課、吉野優子です」
挨拶をされたら挨拶をし返す古代万葉集に書かれている。ベットから立ち上がると姿勢を正して手を合わせて挨拶をし返す
「花:どうも、お疲れ様です吉野さん。田中花世です。」
草木も眠る丑三つ時この部屋のドアの仕切りが壮絶な事情聴取の場所とかす!!!!
「「イィィィィィィィィィぃぃぃやぁぁっぁぁぁッァァァァァァ。!!!!!ワッショイ!!!!」」
うるさいわよいい加減にしなさい。あんたたち今何時だと思っているの!!!
「「さようなら!!」」デュン!!
二人はあまりのうるささに、しびれを切らした花世の母である涼子に鉄拳を食らう。
花世と優子は仲がよかった、というのも花世が出版社に新卒で入社して数週間した時に仕事の関係で当時新米警察官として近くの交番で働いていた
吉野と知り合い急接近する様になってからは居酒屋に行ったり遊んだりお泊まり会を開いたりするほどの仲。
そして家族も同然の様に扱われているためかよく入り浸っても怒られない。むしろ家の手伝いをちゃっかりしているのだ。養子にするとかこの前おじいちゃんが言っていたし。
優子ちゃんと私はさすがにこの部屋の中でするのは気がまずいので一階のリビングにて事件の、痴漢魔に遭遇したこと全てをすべて話すことになる。
「吉:ごめんなさい。涼子さん。話変わるけど花世ちゃん。痴漢魔について少し教えてくれないかな。」
事件のことをありのまま優子ちゃんに話す。犯人のこと、いつつけられていることに気がついたか、そしてどんなことをされたか、話していくうちに段々とその時の恐怖心が徐々に思い出して来て話しづらい。
「花:ごめん、なんだか思い出すのは怖くて」
「吉:花世ちゃんは何も悪くない、私たちが必ず捕まえるから安心して」
怖かった、正直それ以外何も浮かばなかったけどもう一つ思い出すことがあった。私を助けてくれたあの人のこと軍服を着て金色の目を持ったあの人のこと名前を聞こうかと迷ったけど聞けず終いに終わってしまったあの人のこと
「花:実は優子ちゃん、私誰かわからないけど痴漢魔から助けてもらったんだ」
「吉:そうなの!!!その人はどんな人だった?」
「花:軍服を着ていて、目が金色・・だった様な黒目だった様な・・あとイントネーションがちょっと可笑しかったというか」
「吉:ほう?・・ごめん全然想像つかない。というよりも軍服を着ていただなんて今は平成だよ。まさか自衛官かな?イントネーションがおかしいってどんな風よ」
「花:違うの。マント着てたし、その人の話し方なんだか上がるところが下がってたし下げて話すところが上がってたし。聞きなれないイントネーションっていうか」
その話を聞いていたおじいちゃんが突然口をふるふると震えさせて小声で(軍服)や(話し方が)と呟くと突如仏間の方へと走り出しチーンチーンと二度ほどおりんを鳴らすと手を合わせて泣き出した。
時よりお父さん、お父さんと呟いたりありがとございますと繰り返し繰り返し呟いているのがリビングと仏間の間の廊下先で聞こえてくる。
「おじいちゃんどうし・・・・・アイタタタ!!」
仏間の襖の前で急に頭痛が始まる。この状態が始まったのは6歳になってすぐだった。そして今なおずっとこの調子が続いて18年続いている。病院に行っても原因ははっきりと定まらず経過観察と頭痛薬を処方してもらって以来、法事の時も部屋かリビングそれか廊下の方にいるかのどちらかだった
「吉:大丈夫?頭痛いのか?向こうで休んだほうがいいよ」
リビングに行くとおじいちゃんが心配そうにこっちを見るが顔が少し綻んでいて大粒の涙を流したためか目が赤くなっている
「花:どうしたのおじいちゃん。そんなに泣いているおじいちゃんの顔見るの初めてだよ」
「花世。その人はもしかするとじいちゃんのお父さん。言うなれば花世の曽祖父に当たる人だと思うよ」
考えられなかった。その人は無くなっているというのにどうして助けてくれたのだろうか。そして仮にそうだったとしても手を繋いで歩いて着た時に感じたあの暖かな感覚は一体なんなのだろうか
「吉:何を言ってるんですか。源太さん。だって彼女の曽祖父にあたる方は戦争で亡くなったって言ってたじゃないですか?」
「きっと守ってくださったのだろうな。可愛いひ孫を傷つけられたくなくて現れたのだろう」
そんなバカなと少し呆れ顔の優子ちゃんだけどそれでも助けてもらえて本当に嬉しかった。もし幽霊として出て来たと言うのであればそれでもなんらかの形でお礼は言いたい。それを察した源太は仏間から何かを外してリビングに持って花世の座るテーブルにおく。見るとそれはセピア色の写真の軍服を着た人である。
その写真を見て吉野はすごいイケメンじゃんと言うが花世はその写真を見ることができなかった、写真を見た途端視界がぐるぐると回り始める。視線を外すとそのぐるぐるとした気持ちの悪い現象は止まる。それを察したのか吉野はある人物を電話で呼び出した。黒髪の黒縁メガネをかけて捜一と言う腕章をつけた人間。
「吉:紹介しよう、って言うか知っているよね。うちの画伯李龍一巡査長です」
「どうもお疲れ様です。田中花世さん。忍者・・・じゃねじ李龍一です」
挨拶をされたら挨拶を返さなくてはならない古代ローマ帝国から続く習わしである。
「どうもお疲れ様です。李龍一さん。田中花世です」
このなぞとも言える挨拶に源太は置いてけぼりにされてしまい、立ったまま寝ようとしてしまう。この様子を見た涼子は焦って声をかけ起こそうとした
「三途の川だーー!!」
行ったらあかんよ!!!と条件反射で花世と優子が止めにかかるが李がふざけ半分で渡らせようとしたため花世は源太と李を離し、優子黙認のもとで渾身の卍固めを繰り出す。源太の代わりに一度李が三途の川を渡り帰って来たところでその写真に書かれている人物を模写させる。
15分後、渾身の力作とばかりにスケッチブックを花世に見せて笑う。その場にいた捜査員や田中家の人々から
似ているやすごい上手と言われるが花世の顔色は悪くなるばかりである
「花:ごめんなさい。模写した絵でも顔を見ることができないの」
これにショックを受けた李巡査長、魂が抜けて本当に三途の川を渡りそうになり慌てて吉野に引き返す様に説得される。
「花:違うんです、どうしてもこの絵を見ようと思ったら顔の真ん中が何もない様に見えてしまうんです。一度うちの弟の創真が描いてくれた時も顔の部分だけどうしてもぽかんと空白になって見えなくなるんです」
身体的な病気でもなければ精神的なものでもない、一体何が彼女の中であったのかはわからないがきっとそのうち思い出すだろうと顔が見えない絵をまじまじと見つめる
「花:この絵いただいていいですか。皆さんが似ていると言うなら記念にとっておきたいです」
「李:そいなあ少し待っちょったもし」
李はイラストを返してもらうと再び鉛筆を持って何やら絵を書き直し始めた。そして完成した絵を再び手渡すとさっきよりも自信作と言わんばかりににっこりを笑う
「李:花世ちゃんがこん絵が見れる様になった時、わかっよ」
涼子や源太も微笑ましく見ていることからこの絵に描かれている曽祖父はきっと素敵な表情を浮かべているに違いない。そう思い顔が見えなくても優しく微笑みを浮かべる、ちょうどその時であった吉野の携帯にある一報が入る。
「吉:え?!痴漢魔が見つかっただって?しかもこの近くで!」
田中家に激震が走ったのは事件発生のたったの30分、犯人自らなんと110番通報をしてきたと言う。
通報内容をまとめるとあの後逃げている最中に追いかけてこないことで安心し、違う獲物を探していたが前から金色の二つの何かが現れた途端に青白い火の様なものがこっちに向かって走ってきた、そしてよくよく見ると投げ飛ばしてきた男で日本刀の様なものを持って走ってきたと言う
「お前のせいで私のひ孫が辛い目にあった。法の力で裁かれるか、ここでケリをつけられるかのどちらかを選べ」
と言われて走って逃げつつ持っていたスマホで警察を呼びことの経緯を話したと言う
その電話を入れ安心したところ転んでしまいそれでも迫ってくるその男に向かって「自首する!!」と言うと、男は刀をしまい「もう二度とするな」と言って消えて言ったと言う。
「吉:これは別の意味でまずいことになったな。花世ちゃんごめんこの似顔絵貸してもらっていいかな。後悪いけどちょっとついてきてもらえる?面通しって言って確認しないといけないんだ。」
「花:大丈夫私いけるよ。」
吉野は李が描いた絵を別の捜査員に渡して、花世の手をしっかりと握り捜査車両に乗り込んだ。そして車で走ること5分路上で多くの自ら隊員や捜査員に囲まれる中生きた心地のしていない顔を浮かべて座り込む全身を黒い服で身を包んだ少し小太りの男がそこにはいた。
「吉:あいつだけど・・どう?わかる」
「花:あの人知ってる人だよ!!私の会社の取引先の相手でしょっちゅう私に連絡しろって言った人」
「吉:まじかよ。じゃあこの前言ってたストーカーっぽい人ってあいつのことか!!」
そうと言わんばかりにうんっと言うとそのまま恐怖心が湧き上がり一連の行動が蘇ってきた。途端に泣き出してしまい心が本当に壊れそうになった時だ。一瞬車の外を見ると街灯の横に軍服をきていて、花世を助けた人物が立っていたが
軍帽を深くかぶっているため顔の判別はできなかったがにこやかに笑っている様に見えてたまらず「おじちゃん!」っと車の中で叫んでしまった。
「吉:どうしたの?!」
車が止まったと同時に外に出ると街灯の横には誰も立ってはおらずその代わり外壁の外まで大きく枝を伸ばした梅の花が咲き誇っているだけである。
その行動の同時刻、捜査員が男に李が書いた曽祖父の絵を見せると突如として男は自ら隊員にすがりつき犯行を大声で叫んだ上で助けて助けてと涙ながらに訴え始めた。
どうしたものかと現場に来ていた警察官が空を見上げると満月の空の下、近くにある銭湯の煙突の上に立つ何者かがこちらを見つめていて表情こそわからないもののシカトこちらを見つめると姿勢を正し、刀を抜きその場の捜査員に対してなんらかのアクションを見せると刀を納めて消えてしまった。
「あれは一体?」
その行動の意味を知るのはもう少し後になる。
「花世、あんなに大きくなって。しかしあの不届きものは許せんな。だがもう少しすれば会えるよ。その時になれば儂がかけた妖術も消えるだろう」
二話を投稿しました。投稿ペースは毎週日曜日に行おうと考えている次第です
遅くなったらすいません
某検索サイトで「敬礼」に関することを調べたら色々と種類があるんですね。一つ知識が増えたような気がします
この話の中で軍服を着た男(以下軍人)は抜刀時の敬礼をしました。文章力が低いので解説しますと
刀を抜いた後顔の前に持ってくる下士官の敬礼ではなく剣先を地面のを斜め下に向ける将校の敬礼を行なったことになります。(という設定にしてください)
次回もゆっくりしていってください。ご飯食べている方はすいません。お邪魔しました