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13話 ひいおじいちゃんと戦闘(前段作戦)

最近蒸し〜っと気持ち悪いですね。

沖縄の方は梅雨明けしたらしいですけど、途轍もなく暑いのですかね

海行きたいです、青い海。私が住む場所には海なんてありません。

あっても真緑色です。ドウシテコウナッタ

「源一:動きたくないでござる」

全くもってその通りです

「源一:梅雨。・・・・梅の実がなるな。梅・・・梅・・ウメェ!(ブルブルブルブルル)」高速振動中

梅のみをお酒に漬けて梅酒の時期です。

ウメェ!

 朝方、一時間ほど寝て目をさますという行為をしてか花世は寝付けず睡眠不足になってしまっていた。


昨日の夕方、従兄弟である恵美から聞いた源一郎の千人針であろうものがSNSに拡散され、それが晒し者になってたというのが花世の中でも許せなず、投稿者にメッセージを送りちゃんと返してくれるのかということで不安になり寝付けなくなってしまう。携帯の時計を見ると午前5時ごろを示していて、意識を外に向けると庭の方から源一郎の日課とも言える素振りの音が聞こえてくる。そして布団から出て庭先に行くとやはりそこにいたのは源一郎本人で素振りを終えて一汗かいてからかすがすがしい顔をしていた。



「源一:おはよう、えらく早いな。・・・瞼の下にクマができているが寝付けなかったのか?」

「花:・・・そこまでクマできてる?でも大丈夫だよ・きっと」

「源一:・・・・・・少し、話をしよう。なに世間話というものだ。ジジイのところにおいで」


縁側に曽祖父と曾孫が二人、朝の心地が良い風に当たりながらただ何も話すことはなくともただ隣同士でいるだけでも気持ちは良かった。不思議と見守られているという感覚が花世の心の中に満ちているような気がする。それだけでも、たったそれだけでも良かった。自分の中の決心がつくような気がして、夜7時に大切なものをちゃんと取り返すことができるような気がするから。ただそれだけで本当に良かった。



「花:ねぇひいおじいちゃん。もし千人針が帰ってくるってなったらどう?」

「源一:・・確かに、嬉しいがどうしたんだ?」

「花:なんとなくだよ。戻ってこればいいなって思ってね」



そうだなっと言っているその横顔はどこか悲しそうな表情を浮かべる源一郎にただ何も言えなかった。愛する人からのお守りを肌身離さず持ち続けていたものを油断という慢心で、懐にある宝物を取られてしまったことが悔しいのだろう。それを取り返せば喜んでくれるだろうと考えた花世の気持ちそのものだ。


朝7時


朝食を食べ終え仕事場に向かう、準備とともに来たる夜7時に備えてカバンの奥底にそっとあるものをしまう。それが役に立つかは置いておいてだ、慣れているが正直進んで使おうとは思いはしない。

だが家族のためなら、使える。昔、傀儡にゾンビもどきに襲われないていたあの時の自分とは違うと証明したい、弱くない自分を見せたいと。


「花:良し!行こう。・・・・頑張って取り返してみせるから」


机の上に置いておいたメモ帳に書いてある内容を切り取ると部屋から出て家を出る、弁当をカバンに入れる前に箸とご飯が入っているかを確認して洗い物をしている涼子に声をかける。これが田中家の日課でもあった、いつも料理を作って家事をする母親の存在をないがしろにしない行動。誰が始めたからというわけではないが日課になる。


「涼:いってらっしゃい。今日は何時くらいに帰ってくる?」

「花:遅くなるよ。晩御飯は家で食べるから!」

「涼:・・・・・そうじゃあ駅かどこかで連絡ちょうだい。ひいおじいちゃんが迎えに行くように頼むから」

「源一:呼んだか!」

「「呼んでない」」

「源一:っすか。さーせん」


トボトボと部屋を出ると息子の元に行き、賭け将棋を始めようとしていたので晶子が100均で買った将棋セットをものの3秒で破壊しすぐさまお説教モードに突入


そうなるともう止まらない、賭け事に関して晶子は敏感過ぎるくらい嫌っている。それゆえに賭け事をしようとする兆候を察した瞬間に速攻で抹殺行動に走る。晶子はこの家の中でも只者ではない

その姿を見てから父親の浩一、卒論卒論と呪文のように呟く創真の親子三人でそれぞれ動き出す。


それを庭先から源一郎と源太はニコニコと微笑みを浮かべながら将棋のコマを進めて行くがやがて手を止めて三人の姿をぼーっと見つめる。源太の日課が源一郎にも写ろうとしていた瞬間だ。


(源一:晶子さんくらいの切れ者がいたらあのクソ憲兵ともあまり喧嘩せずに済んだかもな。ハヤスケ、モクキチ。そうだろう?)


花世が出勤する光景を見つめながら源太との将棋を再開しようとした時だ、花世の後ろにとてつもなく重たい影のようなものがべったりと後ろを歩いている。傀儡とは異なる異質な存在、だがその異質な存在は花世を守るように歩いていたのだ。だが傀儡以上のどす黒い霧の中から薄気味悪い笑みを浮かべていたのを一瞬だけ見た。


(源一:嫌な予感がする。花世お前まさか?)


再び花世の方を見てもその黒い霧は消えていて、その場に花世もいなかった。源一郎の見た霧は何者なのか?新手の敵なのか?頭の中を駆け巡る疑問に気を取られてさっきまで優勢だった源一郎の駒は源太が考えている隙をついてひっくり返していた。

「源:お父さん。どうやらお父さんの負けが確定しそうですよ。」ニヤー

「源一:お前、盤の向き変えただろう?いいだろう儂を舐めた罰だ。あとできゃんきゃん言っても知らんからな?負け戦から勝ち戦に帰るのが得意なんでな!」

源一郎のエンジンが点火し、源太はこのあと0勝15敗と惨敗するのはまた別の話。強すぎるでひいおじいちゃん


朝8時


花世は出社してすぐに神田から渡された源一郎に繋がる「建御雷兵」と呼ばれる兵士の資料を読み込んで行く、今これを家に持って帰り何かの拍子に源一郎の目に止まりショックを受けてしまってはいけないような気がしたのだ。


だからと言って会社に置いていてもまずい気がして仕方がない。資料をファイルの中にしまい棚に戻すと早速出版された雑誌が無事に書店にとでいているかパソコンのメールボックスを確認する。そーっと確認するとそーっとだがメールが受信ボックスに何軒かそーっと入っている。大切なことなんで三回言いました。

その中には雑誌が何冊か売れていて、追加の発注を求めるところもあったのだ。


「井上:花世メール確認したんだ。おめでとう。」


デスクの横にはやったじゃんとばかり微笑みを浮かべる編集長の井上が立っていて小脇に一冊雑誌を挟んでいた。


「井上:これ。花世が作った雑誌の第一号、この前言ってたじゃん。家族にも見せてあげたいって。無理言って一番

最初の最初もらってきたんだからちゃんと渡しなさいよ」

「花:ありがとうございます!自分が作った雑誌の一番が私の手にいあるだなんて」


雑誌の一番、これは雑誌のロット番号が000001のように最初に作られたもののこと(筆者が勝手に考えました)つまりは一番最初に印刷され作られた雑誌のこと


それが花世の手にあるのだ。


「井上:この雑誌、いろんな本屋に置いていて花世が全休だった日にコメントが届いていたのよ。大半が「自分が住んでいる品川に面白い場所がたくさんあるの知らなかった」とか「前から気になっていた店の場所がわかってよかったってさ。本当に面白いところに着眼点を置いたのね。(自分が住んでいる場所でも案外知らない場所はあるからそこを探ると面白いはず)って」


「花:それは、編集長が品川にフォーカスを当ててくださったから浮かんだんです。本当にありがとうございます」

「井上:いいのよ、別に。そうだ今日飲みに行かない?」


そう言われた時だ、花世の脳裏に浮かんだのは千人針を取り返すという大切なこと。絶対に忘れてはならないミッシ

ョンだ、行かなくては


「花:・・・ありがとうございます。すいません、今日外せない用事があってまたお願いします」

「井上:珍しいわね?外せない用事か・・もしかして彼氏とかできたの?」


彼氏というワードを耳にした同じ部署にいた他の女性編集員はじっと花世を睨んでくる。いないのにだ。ここまで見られるのはなぜだ?


「花:違います。ちょっとした個人的なことですよ!彼氏いませんってば!」


そうちゃかされながら時間はだんだんと過ぎて行く。


仕事や次の企画の打ち合わせなどを進めて行くといつのまにか昼時になったそして仕事を終えてパソコンの電源を切り壁につけられている時計を見ると花世はため息を付くしかなかった。外はまだ明るく綺麗な夕焼けが窓から見える景色をオレンジ色に染めているにも関わらず、そのオレンジ色が憎らしいくらいに花世をあの場所に誘っているように感じたのだ


指定された場所、お化け工場で一番大きな廃工場そして品川区が設定している一番の立ち入り禁止の廃工場。源一郎と花世が最初に出会ったあの廃工場が約束の場所だった。


時刻は憎らしいことに6時半、花世は会社から出るといつものように電車に乗り、最寄りの駅まで行くと自宅とは違う廃工場の方へと足を運ぶ



もう引き返すことはできない。



最寄り駅から、あの廃工場まで歩くと遠いためタクシーを使って指定された場所の近くまで乗りそっと窓の外の景色を見つめていた。心なしか気分が重たかった、タクシーに乗っているその時間が苦しく

あの場所に近づけば近づくほど心臓の鼓動が早まって行く。それとは反対に頭の中はすっきりとしていた。


「お客さん、何かあったんですか?えらく顔がこわばっていますよ」

「花:え!?そうですか!大丈夫です!きっと仕事で疲れちゃったから」

「そうですか。あんまり無理はしないほうがいいですよ。この前もほら・・・・・・」


ドライバーの話を聞きながら心はどこか千人針の方に吸い寄せられて行っていた、ドライバーの声もタクシーから流れるラジオの音もあんまり花世の耳には入ってこない、自分が今どこにいるかわからないようなそんな感覚で、地に足がつかないようなそんな気分だ。ふわふわとどこか中に浮きそうでいて、それなのに地面に足はあるような気持ちの悪い感覚が花世の心の中にはあった。


タクシーが停車し、お化け工場の煙突のようなものがちょうど見えていた。とうとう来たんだ、タクシーから降りていざというときドライバーから呼び止められる


「お嬢さん。これお食べ。元気がでる飴だよ。あなたは美人さんなんだから笑っているほうがいいよ。今日はお疲れ様」

「花:そんな!いいんですか!?」

「これはおじさんからの気持ちだよ。じゃぁね!」


もらった飴をそっとカバンの中にしまい深く深くお辞儀をすると決心は決まり約束された場所を目指す。


「あの子〜可愛かったなぁ。飴を食べて元気になってくれたらいいんだけど・・・・・お!お嬢ちゃん!!」


タクシーの運転手がミラー越しに花世の姿を見た途端、顔を青ざめてしまった。街灯のあかりに照らされて花世のそばを歩く軍服を来た黒い人が歩いていたのだ。そして花世自身はその存在に気がついていない

その影は花世を見て一緒に歩きながら何かをつぶやいているのだ。車を止め外に花世の方を見てもそこに花世はいなかった。


「・・・・まさかお嬢ちゃん」




夜七時 お化け工場前


「花:あなたがmaSaさん?早速ですがあなたがTwi○○erで呟いていらっしゃった布についてなんですが、それを見せてもらえませんか?」

「まさ:あなたがはなさん?すんごい美人じゃん!そんなに焦らないでください。ゆっくり話しましょうよ?それに立ち話はなんですからここで話しませんか?」


maSaつまりは坂本真斗が花世の目的としている千人針を持っている。それはわかっていたがその工場の中に入ると薄暗いながらもそこには不気味な存在を放つ廃工場が立っている。

そこから何か異様な何か異常なものは花世の心の中にずっしりとのしかかって来た。まさに案内されて工場の中に足を運びながらどこか何かを思い出しそうな感覚が花世を動かし始めて行く。


「まさ:おーい、しん!連れて来たぜ。この人が俺にメッセージ送ってくれた人」

「しん:本当に来たんだ。どうもまさの友達のしんって言いまーす。よろしく。すげー美人じゃん」


しんと呼ばれる男、よくよく見れば雛城高校の制服を着ていて友人なのだろうかギャル風の女子高校生が二人壊れかけたパイプ椅子に腰掛けながら片手に携帯を持ちじっと花世を見つめている。

その奥には手に何かを持ちつつどこか落ち着かない状態にいる男子生徒が座っているのがぼんやりとながら見えた。




「しん:こいつら、俺の友達のちかとさき。あと奥に座っているのが輝樹。そういうこと」

「花:そうなんだ。みんな高校生くらいかな?お願いがあるの、この前SNSにあげてた写真の布を返して欲しいんだ。どうしても大切なものなの。返して」

「まさ:返して、だってどうする?すぐ返しても面白くないじゃん、あいつが来るかどうかわからないのに」


あいつという言葉、思い当たる人物がもう出て着ている、何としてでも取り返さないと焦っても欲しいものは出てこない。心の中でふつふつと湧いて来る苛立ちを必死に隠しながら訴えかけて見た。


「しん:・・・っていうかさあれの何がいいの?ダサい布っていうかよくわからないマークみたいなの入っているし。なんか関係あるわけ?」

「花:そう簡単には信じてもらえるようなこと時じゃないけど、その布の持ち主は私の曽祖父に当たる人ようやく平和な時代に帰ってこれた。大切なものをいつも持ち歩いていたの。大切な人の思い出を」

「しん:大切なもの大切なものってウルセェんだって。あんたもユキノと同じ口かよ」


「タイセツナモノ」・「ユキノ」という言葉にしんと呼ばれる男は苛立ちを覚え始め、花世はとっさにカバンの中から小さめの木刀を手に握りはじめた。


精神が高ぶっているということでは片付けられない、相当な何かがしんの心の中を動かしはじめている。そっと腰を軽く落とし目の前にいるしんに神経を集中させていく、とんでもない敵が現れつつあるような状況がその場を覆い始める。背後から殺気を感じとり振り返るとこの場にいる生徒と同じ制服を着た人間が集結しはじめていく、しんが呼んだのかそれはわからないがこの場が見世物になりそうになりつつある。


「ちか:この美人さんが『妖怪日本兵』?全然見えないんだけど?」

「しん:その人は俺たちが探している奴とは違う。だけど必ず来る。俺がそいつより強いことを証明してやるんだよ」

「じゃあこの人は人質っていう奴だな?面白くなったじゃないか!?」


こいつらは元から千人針を返す予定はサラサラ無く、源一郎を倒すことによって自分が強いという証拠を見せつけたかったというのだ。


「しん:お姉さんそれじゃあ頼むぜ。ヒトジチ役」




夜9時


花世が帰ってこない。決して社会人としては別段この時間に帰ってこないことに対して別段おかしなことではないが、痴漢魔に襲われたこと・遅くなるとは言っていたが連絡がないことがおかしかった。

遅くなるときは連絡を大体9時くらいに入れるのに全くと言って連絡をよこさなかった。浩一が仕事でいない今日、源太たちが探しに出て行き家には創真と梅子・源一郎がいるだけである


「涼:ただいま!だめどこにもいなかった!幾ら何でもおかしすぎるよ」

「梅:会社にも連絡したけどとっくに退社しているって言っていたから、何かに巻き込まれたんじゃ」


ただ家族が悲しむ会話を聞くに耐えきれなくなり、創真は花世の部屋に入り手がかりがないかを探し始める。あまり姉だとはいえ女性の部屋に入るのは嫌だが解決策になるのではないかとあてもなく部屋の中を探し始める。しかしそう簡単には見つからない、整理整頓されているからこそ見つけにくいのだ。だが創真がふと机の棚に入っていた、メモ用紙の束をみて直感的に何かを感じ取る。筆圧のせいでメモ用紙が凹んでいる。と言ってもあまり筆圧が濃くはないためか鉛筆で塗りつぶして見ても見れない。


何かのヒントになるのではないかと階段を降りて源一郎が座る縁側にすっと座りかけたが源一郎の姿を見て驚いた。この時間帯で軍服を着込みそばに軍刀を置いて精神を集中させているだなんて見たことがない

もっと言えば肩から黄色い紐がかけられていてそれは腰元まで垂れていて、腰に三角形の形をした小さなポシェットのようなものに長方形の少し大きめのものを腰から吊るしている。そして源一郎の表情は優しいおじいちゃんの顔ではなく怒りに満ちた軍人がいる。




「源一:・・・創真か。わしの隣に来るといい。花世と連絡はついたか?」

「創:ごめん、俺から連絡を入れても繋がらなかった。ひいじいちゃんとの約束守れてないよな。」

「源一:いいや、守ってくれたさ。それよりその手に持っている紙をわしに見せてくれぬか?」

「創:いいけど何に使うのさ?」



創真からメモを受け取ると最初の一枚を剥がしその紙を睨みつけどこからか炎をだしその紙を燃やす!何をやってんだと創真が言おうとしたときだ。燃えていたと思っていた紙は燃えておらず、ゆっくりと文字が焦げた匂いを発しながら浮かび上がってきていた。そこに書かれていたのは前に恵美が源一郎に対して見せていた千人針がSNS状で拡散されつつも情報を求めていること、それを知った花世が相手と連絡を取り変換を要求したこと、そして変換先はかつて源一郎と花世が出会ったあの廃工場であること。花世はそこに行き何らかのトラブルに巻き込まれてしまったということが想定できた


「源一:・・・花世、阿呆め。だが一番の阿呆はこのわしだ!花世をこうまでしたわしが許せぬ!腹立たしい!だがまずは花世を迎えにいくことが先だ。」

「創:俺もいくよ。姉ちゃんを迎えにいく。ダメって言ってもな。それに足が必要だろ?」

「源一:いいだろう。だが無茶はするなよ。身支度を済ませろ。すぐに向かう!いいか!」

「創:当たり前だろ。ひいじいちゃん」


家からお化け工場までは自転車で30分の距離だがそれでは心もとない。創真は一度部屋に戻り、何年も着ていなかったライダースーツに袖を通す。風を感じて見たくてバイクの免許を取ったはいいが最近はずっと乗っていなかった。だがこの日ばかりはバイクの速力を試したい。


お化け工場あたりは車の通れる幅の道は少なく帰って小回りがきくバイクの方が手っ取り早い。ヘルメットを取り出し玄関にいくとすでに源一郎が待ち構えていてくれていた。

軍服をきっちり着て軍刀を帯刀しそして持てるものすべてをもち、外套を羽織りながら軍帽を目深に被るが目線は険しくなっている。



「源一:・・行こうか。お前の足を借りるぞ・・・創真頼んだ」

「創:俺も今回ばかりは頭にきてる。何にも言わないで一人で千人針取り替えそうだなんて・・・でもいいや!行こう」



玄関のドアを開けて創真がバイクを出庫させているとき外に出ようとしている源一郎を梅子は物音で気がつき声をかけた


「梅:・・・お父様、どちらに?」

「源一:梅子・・・儂はあの子を迎えに行って来るよ。どうやらお化け工場と呼ばれる場所にいるらしい。案ずるな、必ず連れて帰る。」

「梅:お願いします・・念のため警察には連絡を入れておきますので。あの子をお願いします」


ぎゅっと梅子を抱きしめ準備が整いバイクにまたがる創真の後ろに座り、姿を消しながらも闇に紛れて花世を迎えにいく。ニケツをしながら。ニケツは道路交通法違反です、決して真似しないでください


夜間は交通量が少ない、そのぶん信号は赤色に変わる確率が断然高くなるが珍しいことに信号は変わることがなくスイスイと進み、まるでその場に誘われているような感じがしてたまらない。最近になって少し蒸し暑くなってきていたのにその場所に近づくに連れて嫌な汗が流れ始めてた


そしてあの廃工場のシルエットが見え始めてそっとエンジンを切り近くの小さな空き工場の一角で隠すように留めておく。そして通りを見渡すようにして廃工場の入り口が見えるいちに二人は近づきあたりを見渡す。ちょうど創真がいる位置は入り口とは死角になるようになっていて携帯の画面のせいか入り口に立っている人数が二人しかいないとわかりひとまず安心する



「源一:阿呆だな。自分の居場所をわざわざ知らせているのだ。敵に強襲されることもわかっていながらのんきに(すまほ)とやらをみているのだ」

「創:・・・そうだな。ある意味暇つぶしの一つだからなー。っでどういう風にあそこにいく?」

「源一:そうだな。・・・堂々と玄関から入ってやろうではないか!」

「創:そうだな!その方が面白い」


二人は影からそっと現れ入り口の方まで歩み寄る、そして入り口をぼんやりと立っていた男子学生の一人が二人の存在に気がついた。


「・・おいおいマジかよ。本当に出やがったぜ。」

「・・・でもコスプレっていう可能性もあるだろ?ちょっとここは仕掛けてみるか?」



門の前に立つ源一郎と創真、その二人を睨むように男子生徒はメンチを効かせて来るが、そう行ったものもどこ吹く風門の入り口の向こうにいる花世のことしか頭にない

それが気に食わなかったのだろう、喧嘩腰で二人に迫ろうとしている



「おいおっさんあんまりなめてもらったら困るんだけど!人の話聞いていますか?」

「源一:そこを退いてくれないか?知人がこの中にいてな。迎えにきたんだが?」

「ウルセェんだよ。俺らなめてると痛い目合うぜ。やるか?」

「源一:雑魚に構う必要などないか・・・・創よこれを持っておけ役に立つ」



もっぱら話を聞く耳を持っていないジジイは創真にあらかじめ隠して持ってきておいた脇差のサイズの軍刀をぽいっとぽいっと放り投げ被っていた軍帽をかぶり直し一気に雰囲気を変える

男子生徒に構うことなく廃工場の鉄製のドアに少し触れてあらかじめ持ってきておいた白い軍用手袋をはめる。


「おっさん聞いてんのかって!いい加減にしろよ?俺らなめてっと痛い目合うって行ってんだよ!」

「源一:・・・少し黙れ。気が散る」

「あ”ぁ”!もういっぺん言ってみろ!」

「源一:どけ小僧ども。切り捨てられたくなければ三つ数えるうちに引けぇ!」




苛立ちから殴りかかろうとする二人だったがすぐにその手を止めてジリジリと後ずさりを始める。


闇夜に映える金色に染まった目、そして外套からはだけた手元からはほんの少しだけだが月白のように白く妖艶な輝きを放つものがそこにはある、だが男子高生たちが一番みて恐怖を抱いたのは源一郎の気迫ではなく源一郎が纏う(まとう)戦の権化のような姿をした何か。妖怪という言葉は似合わない似つかない

軍神という言葉が今の源一郎を表すのに当てはまっている。



「おっさん、本物なのかよ?なんなんだよ『妖怪日本兵』って!マジでやばいって!」

「源一:泣いてももう遅い。そこをどけ。」



慌てふためき入り口の鉄門から二人は源一郎から逃げるように後ろに距離を取りながら下がるのを確認し軍刀に手をかける。鯉口を切り刀をくるにと返す。


腰を一気に沈み込めると伸縮していた筋肉のバネを一気に扉に躍り掛かるかのように壁を叩き切った!


バキバキ



一瞬のことで男子高校生たちはわからなかったが創真はその一瞬を見切っていた、刀を引き抜くと同時に鉄門の間に刀を滑らせるように何かを叩き切ると同時に激しく火花が散りながらけたたましい金属音と共にゆっくりと鉄門は軋みながらゆっくりとドアが開いていく。


源一郎の姿を見てか二人の男子生徒は逃げるようにその中入っていく姿を見ながらそっと軍刀を鞘に収めた。


「源一:ここがどうやら本拠地らしいな。ったく儂のいたこの場所を使うとは異な事をするものだ・・・・うん?」

「創:こいつら雛城高校の生徒だ!」

「源一:そうか。どうやら儂らは見られているようだ。コソコソ隠れて高みの見物を決め込みたいらしいな。ほーぅどうやら高見の見物以外に儂と遊びたいものがおるらしいな」



ぞろぞろとさっき逃げた男子高生と同じ年くらいの男が物陰から出てきて始めていた。その真ん中には髪を金色に染めピアスをつける高校生が構えている。だが源一郎が見たのはそれだけではない、制服を着込んでいるがどこか肩幅がやけにきつそうで、そして手の甲がやけにゴツゴツと骨が出っ張っている。



どうやら手練れのようだ。



相手の出方を探ろうとした時だ、入り口の方から足音が聞こえ振り返るとそこには巫女の姿をして手には袋に入った何かを持っている。


「雪:嫌な予感がしたからきて見たら。やっぱり・・・・まさかあなたそんな!」

「源一:・・・・・ハヤスケ。お前死んだはずだどうして・・・違うお前はハヤスケではない。雪乃か・・・そうか雪乃お前はハヤスケの遠い子。花世と同じひ孫だったのか」

「雪:そんなことどうだっていい!お願い!その人たちから離れてよ。じゃないとおじさんのこと斬るよ!」


袋から取り出したのは、刀。ただの刀ではない、源一郎の持っている軍刀のようなものだ。それに見とれていると雪乃は源一郎の体にすっぽりと収まるように刀を構えて突進していた。


見とれていて気がつかない。そこにいたのは源一郎がかつて友と呼べる人物の姿、ハヤミコウノスケ。速水幸之助少尉の姿。





       ドスッ!!!!!!!!!!!





鈍い音が響きついで地面にポタポタと雫が地面に落ちていく。それを見た男子高生たちは雪乃をたたえ始めるが、雪乃は泣いている。その小さな背中を優しくさするように震える体を源一郎はただただ優しくさすり始める。がたがたと震える体を意味するように軍刀は震えカチカチと音が鳴りうな垂れるように刀から手を離した。



「源一:そうか。このものとは学友なのだな。儂のことをつけてきていたと思ってはいたさ。怖かったのだな、儂がこのもの達になにかするのではいかと思ったのだなすまないな。・・・雪乃。儂によくその顔を見せて欲しい。・・・あぁやはり幸之助によく似ている。・・申し遅れてすまない。


儂の名は田中源一郎、元大日本帝国陸軍、歩兵科所属。速水幸之助、いや相川幸之助とは友人だった。・・・懐かしい。そうか会いにきてくれたか」



雪乃の目には大粒の涙が溢れていた。優しすぎるが故の行動、そのまま泣き崩れていくその姿にそっと外套を羽織らせて落ちていた鞘に刺さっているフリをしておいた脇にきくつ挟んで刀を収め袋の中に戻して雪乃に返してやる。いくら見切っていたとはいえ、小さな切り傷ができているがそこまで気にしていない。


「源一:さて、今日の儂は機嫌がすこぶる悪い。花世のこともしかり雪乃のこともしかり、そこにおる金髪のもの・・よう覚えておるぞ。飲み屋街で儂にぶつかってきた小僧か・・なるほどそういうことか」


指差した先にいたのは髪を金色に染めピアスを開け取り巻きの中心に入る男、坂本真斗だ。坂本自身も源一郎のことをみて覚えていたのか不敵に笑みをみせながら指を鳴らしながら取り巻きの一人に何かを伝えて始める。


「まさ:おっさん、あの時ぶつかったの俺も覚えてるよ。まさかあんたが『妖怪日本兵』ってやつなの?マジウケるんだけど」

「源一:御託を並べるのはそこまでにしておけ。花世と儂の千人針を返してもらおうか。それで許してやる。」

「まさ:ふーんまぁいいや。とりあえずおっさん。『妖怪日本兵』の正体暴かせてもらうぜ」


その言葉に触発されてか源一郎を睨みつけていた十数名ほどの男子高校生達は手に持っていた鉄パイプをちらつかせ始める。物音が聞こえ振り返るとすかさず加勢しようと軍刀に手をかけそうになった創真をみて源一郎は首を横に振りながら笑い始めた。



「源一:創よ。それはいかん、それをすればただの暴力ぞ。それはこのジジイは望まぬ」

「創:でもいいのか?」

「源一:伊達に日本兵やってるわけではないからな。雪乃を儂の代わりに守ってくれ。それだけで良い。ここからは儂の戦いだ。」

「創:負けんなよ。絶対に」

「源一:儂はそう簡単にくたばらんさ。まぁ見ていろ。これが本当の戦い方だ」


坂本の方に向き直すとさっきまでの金色よりももっと深く輝きを放つ金色の目が強く見つめている。そして鉄門を斬った時以上に源一郎を取り巻く空気がガラリと変わり始める。

その姿に坂本以外の取り巻き達は後ずさりを始めだす。君が悪いというよりも相手にしていい代物ではないと直感的に本能が囁いたのだ。




『逃げねば、やられる』




「まさ:・・お前ら弱気になってんじゃないって!・・・・・・なんだよあいつ。さっきよりも雰囲気が違うっていうか」

「源一:かかってこい。まとめて相手してやるさ、軍人に勝てるだなんてそう簡単に思わん方がいいが・・な」

「まさ:上等だぜ!やってやろうじゃん。いくぜ!」


次回に続く


別話

「花:ひいおじいちゃん。今日なんの日か知ってる?」


「源一:う〜ん?知らんな。どうした?」


「創:鈍感だね・・・まぁいいか」せーの


「「ハッピーバースデーひいおじいちゃん!」」


「源一:・・・・・アァァッァァァ忘れとった!今日は儂の生まれた日か。105歳か。年はとしたくないな」


「浩一:そう言わないで。これ誕生日プレゼントです」スッ


「源一:ほう?これは・・・なんとビール!しかもお気に入りの酔わぬビールではないか」一箱全部、早速ぐびぐび


「浩一:早いですって」


「晶:私からはこれですよ」茶色の甘い塊をスっ


「源一:なんともほのかに甘いかおり。どれどれ・・・どしてもうまいべ!」ムッグムッグ


「晶:ザッハトルテというチョコレートのケーキです。」


「源一:チョコレゐト。。。。高価なものではないか」


「源:今の時代は結構安くなっています。お父さんこれどうぞ」袋をすっ


「源一:これは。良い手ぬぐいではないか」


「源:一緒に銭湯行きましょう」


「涼:私からはこれです。」美味しそうな料理をスッ


「源一:これは!なんと鱧の湯引きか!うんンンンン魔まっマッマママまあい!!」モッッグモッグ


「涼:気に入ってくださって嬉しいです!」


「花:私達からはこれ!」スッ

「創:姉ちゃんと俺と恵美からだ!」スっ


「源一:これは!温泉旅行券か!」


「花:梅子ひいおばあちゃんと一緒に行ってきてよ」「創:ちなみに下呂温泉だよ!」


「源一:うれじいゼェェ」ビェえええええええ!!


「梅:私からはこれを」スっ


「源一:??????????」


「梅:私が誕生日プレゼントでございますぅ!」酔っ払ってる







「「「「「「「「あかーんんんンンンン!!!!!!!!!!!」」」」」








おしまい

あー一万字超えましたわ〜。許してくだせぇみなさま

スマートフォンでお読みの方は縦向きにするのではなく横向きにすると少し見やすいと思います

「花:もっと見やすくしなさいよ」

「筆:善処します」

次回予告

ついに始まる、戦闘。敵からの攻撃もスイスイと避けながら鼻をほじくる源一郎

途中、西川、坂本の強烈な攻撃に隙を突かれそうになる

一方、花世はというと女子高生達からカバンの中にあった雑誌「品川ウォーク」を見ながら行きたい店が載っていたことに感銘し雑誌を譲って欲しいとねだられるが、最初に印刷された雑誌として譲ることを拒んだものの何かの縁として

その女子高生達から雑誌に載せて欲しい内容について聞き出す。(商人魂ですね)

坂本と一線を交えながら奥に嫌な存在を確認し、その正体を暴いた


次回

ひいおじいちゃんと戦闘(本作戦)

次回もお楽しみに


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