汝は乙女なりや?
「汝は乙女なりや?」
→Yes No
こんな問いかけで始まる乙女ゲームを俺は知っている。
タイトルはそのまんま「汝は乙女なりや?」
学園が舞台の在り来たりな乙女ゲームとして、余り世間の関心を得られなかったこのゲームだが、発売と同時にその評価は一変した。
ドット絵で登場するヒーロー。開始5分での卒業エンド。まさかの主人公交代………等々。数個例をあげただけで、その異常性が伝わったことと思う。
さて、急にそんな乙女ゲームの話をされても諸君らは反応に困ることだろう。だが、安心してくれ。俺はもっと困った。
何故なら、そのくそみたいな乙女ゲームの中に俺はいるのだ!
俺が乙女ゲームに転生したことに気づいたきっかけだが、それは受験の時にゲームの舞台となる学園「ああああ学園」の名前を見たとき………ではなく。いや、気づけよ俺!後、どこで手ぬいてんだよ制作!
学園に住まうドラゴンを目にしたとき………でもなく。世界観!世界観どうなってんの!
入学式で、挨拶中にだんだんと姿の変わる学園長を見たときだった。
確か名前は阿波泰三。普段はバーコードハゲの中年親父だが、ランダムのタイミングでだんだんと銀髪緋目のイケメンに変身するという誰得スペックの攻略キャラ。
タイミングを間違うとヒロインとのあれやこれやの相手もバコハゲになるうえ、スチルもバコハゲで保存されてしまう。どこに力いれてんだよ制作!
で、挨拶中に貧血…実際は知恵熱だが。倒れた俺は前世の全てを思い出したのだ。
とまぁ、これはどうでもいい。お察しの通り俺はモブだからだ!時々徴兵フラグや奴隷フラグや改造人間フラグや消失フラグやメガネ人格乗っ取りフラグやモブ顔面同一化フラグや主食ポップコーンフラグややり過ぎキャラ付けフェスティバルフラグや人間失格フラグや死亡フラグはあるものの、おかしいのは学園周りのみで基本的には普通の世界。
前世で死んだ?俺からすれば、第2の人生をもらえたことは感謝以外の何物でもない。
だが、そんな俺でもどうでもよくない…もとい、どうしても確かめずにはいられないことがある。
この乙女ゲーム。数々のエンディングの1っとして、BLエンドがあるのだ。そう、BLである。BLなのだ!BL、ボーイズラブである。
今まで女の子としてイケメンとイチャイチャしていた主人公が、BLルートに入った途端「私、ついてるの」である。ゲームならば、画面越しにツッコミをいれるだけだが、現実となれば話は違う。
いつ彼女に息子が出来るのか?言い方が悪かった、いつ彼女に息子がつくのか?そもそも彼女は今現在彼女なのか?あぁ、ものすごい興奮をおぼえる!
俺の介入により、着実にBLルートに入る下準備は進んでいる。だが、その前に確かめなければならない。
そう………
「ごめん、後ろ通るね」
「あ、う…うん」
ヒロインが俺が座っている席の後ろを通る。机と椅子の隙間は数多の計算の末に絶妙の配置になっている。わざわざ座っている人を退けなくてもギリギリ通れる隙間。しかし、しっかりとお互いの身体が触れ合うそこにヒロインは身体を滑り込ませる。
さぁ、味わわせてもらおうか。貴様の股間に男の神秘が備わっているかどうかをなぁ!ヒロインの身体の感触が椅子に深く座った俺の背中に伝わる。
………!!!?
背中に感じるこの2っの膨らみは!もしかして、たまぶく………
「ありがとー」
「………うん」
えぇ、おしりでしたとも。後ろ向きに通るとは、その可能性を失念していた!また失敗した。早く確かめなければいけないのに!
えぇい!
汝は乙女なりや?