彼は往く
煌々と。
辺りを照らす焔と共に紅の弓矢が辺りに舞う中、彼は往く。
混沌と。
大きな闇、穴が世界を覆っても、ある詩人のように彼は往く。
歴史がどんなに残酷で有れど、
望んだ者の詩を薔薇に変えて、
いつか目覚める者に思いを託す。
白き鳥と共に彼は往く。
死がどれ程の時を蝕もうとしても、
想いは消えない。
砂が落ち、焔が消えたとしても。
夜空に舞う蝶と共に彼は往く。
忘却が喪失を水底に沈め、
喪失がさらなる忘却を生み出そうとしても、
大切な者への想いは届く。
失われた詩が辿り着いたように、
求めた彼女が答えてくれたように。
澄み渡った空を見上げて少年と共に彼は往く。
第二の歴史が獣と共に生まれた。
約束を荒らし、想いを切り離し、
目的のために焔を屠るものが現れたとしても、
二つの境界線の先に――
生まれてくる世界は存在する。
終わりのない歴史と白い鳥と共に彼は往く。
二つの意思が交じり合い楽園が開かれる。
幾度と無く継がれる想い。
時がどんなに経とうとも、
心は、求めるものは変わらない。
楽園に吹く風を背に受けて彼は往く。
焔を灯した物語が意思を持ち描かれる。
朝と夜を彷徨う焔。
居場所を探す双子の人形。
幾多の想いと焔の明かりを宿しながら、
大きな書物を抱えて彼は往く。
運命が動き始める。
有る者は抗い、
有る者は従い、
有る者は知らぬまま。
運命の糸を紡ぎながら彼は往く。
ヒカリを集めた童話の頁が開かれる。
いくつもの記憶、
いくつもの記録、
咲く事のない薔薇があったとしても、
その先にはきっとヒカリが――
闇が明けた路をしっかりとした足取りで彼は往く。
彼は様々な路を歩く。
そんな彼に、
今は唯一つの言葉を。
生誕おめでとうございます。
そして、貴方に計り知れぬ感謝を。
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