幸せの黄色いネクタイ
肌寒く青白い空の下。立ち入り禁止と書かれた看板の奥にある公園には人影もなく、いくつかの遊具と中央にそびえ立つ一本の大木が生えているだけだった。雪の重みに耐えるため全ての葉を地に落とした大木は寂しげで、この公園に酷く似合っていた。しかしその大木の小枝に黄色いネクタイが縛り付けられていた。モノクロに包まれた公園に溶け込めず、主張の激しい綺麗な黄色である。
それを訝しげに見ていたら不意に声をかけられた。
「この木は、春になったら満開の桜を咲かせるんだ」
振り向くと一人の少女が同じように大木を見上げながら僕に語りかけていた。
「あのネクタイを縛ったのは君?」
「そうだよ」
少女はうれしそうに笑いながら言った。
「何でネクタイなんだ?ハンカチならまだ分かるけど」
「幸せの黄色いハンカチの話?まぁそれを意識してないと言ったら嘘になるけど。君はあの映画を見た?」
「うーん、見ては無いかな。有名なシーンとして取り上げられているのをテレビで見ただけ」
「そっか。あの話は刑務所に入った男が妻と別れて、出所したときにまた結婚してくれるのなら黄色いハンカチを家に吊り下げておいてって話。このネクタイは少し意味合いは違うんだ」
「誰かを待ってるわけじゃないの?」
「違うよ。これはお父さんに向けたメッセージ。あの映画が好きだったお父さんならきっと届くと思って」
「だったってことは・・・」
「うん、死んだ。半年前に癌で。あのネクタイはお父さんがいつも勝負どころの日に付けていた勝負ネクタイなんだ」
「・・・派手だね」
「まぁね。でもこのネクタイを付けていた日のお父さんは確かに気合が入ってた。この桜の木ね、秋の間に切り倒されるはずだったんだよ」
「ん?この公園って来年にはマンションの建設が予定されてるんじゃないの?」
「だからお父さんは戦ったんだ。この地区の人たちをまとめて建設反対運動を行った。古くから守られてきた我が地区最大のシンボルであるこの木を守るためにね。そしてこの木は守られることに決まった。だからその前に死んでしまったお父さんに向けてこのネクタイを縛ったんだ。気づいてくれるように」
「この木を守りそして死んでいった父に贈るメッセージか。これだけ派手なんだ、きっと気がつくと思うよ」
「うん」
少女は満開の笑顔でそう答えた。
駄作ですいません・・・ここまで読んでくださってありがとうございました。