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29章  年末から、新年へ

この事件はここで終わりです。

よんでいただきましてありがとうございます。


続きの事件も浮かんでます。

次回はサブタイトルが「名台詞のある本屋さん」になります。


開始は来年以降になります。みかけたらご一読いただけると嬉しいです。




「そうね。そろそろ……」

『いたければ、いつまでもいていいんだぞ』


 言ってみた。返してくるか。


「そうきたの……。じゃあ、『ありがとう。でも行くわ』」


 攻殻のセリフをなぞらえ合えるのがとても素敵だ。もっともっと会話したいけど、楽しみを次に持ち越すのもいい。


「暗証番号でも伝えておきましょうか?」

『次に再開するときの、合い言葉』のつもりかしら?」

「そう……」


 ここまで阿吽で会話ができるなんて。今日は夢の祭りのようだ。目の前の沙希さんは、ネットならぬ、人の波に消えようとしているけれど。


「暗唱番号は、今確認しなくてもわかってるはずだから。今度再開したときに、言ってみてもらえなすか?」

「そうします。じゃぁ、時間とらせてしまってすみません」

「こちらこそ。楽しいランチでした」


 沙希は、ペコンと頭を下げ、コスプレ広場への流れに乗って行った。


『さて、どこへ行こうかな。会場の海は広大だ』


 雄二は、独り言をつぶやいてから、歩きだした。



     ◇


 午後四時。皆がその場で拍手で閉会を祝う。

 沙希も、西ホールで拍手をして、帰路の駅へ向かう。

 東ホールの人と合流する、エントランスまで来た時。


「あ……」


 まさかの再開。早すぎると思うよりも、どれだけ縁があるんだろうと、沙希は思わず笑ってしまった。


「これだけ人がいる中で……。十秒もタイミングずれてたら、気付かなかったでしょうね」


 雄二が、笑みを浮かべてそう言いながら、沙希の横に来た。


「そうね。本当に……」


 沙希たちはすぐに人の流れに乗った。


「そうだ。暗証番号から始めなきゃ。だったね」


 雄二は沙希を見て、促す。


「『2501』これでいいかしら?」


 沙希は攻殻機動隊にでてくる番号を告げた。


「そう。じゃぁ、再開を祝して、打ち上げにでも。……時間は大丈夫ですか? 誰か、お仲間さんと待ち合わせしてます?」

「仲間と打ち上げ予定あったら、今ここでつるんで歩いてるわ」

「それもそうだよな……」


 雄二は軽く笑ってから、沙希がもってる紙袋に手をのばした。


「何か……?」

「持ちますよ」


 言うと、雄二は薄くて重い本が詰まった紙袋を持ってくれた。

 

       ◇


 昨日のお祭りから一転。元日から沙希は、仕事モード……というか仕事だ。

 ショッピングセンタが元日営業するので、中にある書店も、仕方なく開店しているのだが、隣がおもちゃ売り場なのが幸いして、子供がお年玉でついで買いしてくれるので、営業しているメリットはそこそこある。

 そうでなくても、ショッピングセンタではあちこちで福袋を売り出しているから、お父さんは荷物持ち兼、運転手で駆り出されるのだ。親子が漁りに行ってる間の、格好の時間潰しの場を提供していることになる。

 元日に出勤するのは、沙希と川西さんだけ。

 学生バイトさんは、学校などないはずなのに、こういう時はやってこない。もっと貪欲に稼ぎにきてほしいものだ。

 今日はラストまでいないといけないので、いつもよりも重役出勤。昼ごろに出勤した沙希は、レジに向かう。


「おはようございます」


 丁度レジにお客さんがいないタイミングで川西さんに声をかけた。


「あ、おはようございます。今年もよろしくお願いします」

「こちらこそ。今年もよろしくお願いします」


 新年の挨拶をして、ふと川西さんの手を見ると、右手の薬指に銀の指輪がはめてある。

 右だけど……でもいつもはどこにも指輪をしていない。

 沙希の脳裏に、先月、川西さんをみていた男性の姿が浮かぶ。

 まあ……あの人でないにしろ、何かあったんだろうな。

 敢えて口にはしないけど、その指をみて自然と笑顔がでた。

 毎年漫然とルーティンワークのように仕事をしていた沙希だが、今年からは何か変わりそうだ。

 すーっと深呼吸すると、沙希にとって新年初のお客様がレジにやって来た。


「いらっしゃいませ」


 沙希は丁寧に頭を下げてから、川西さんと二人で接客を開始した。


                              

                                 

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