第7話
「最高だよな、こんな食事が毎晩食べられるんだぜー」
「正也、お前食い過ぎだって。一応ボーカルはビジュアルも大事なんだし・・・」
「とか何とか言って俺にそのステーキ食べさせないつもりじゃ無いだろうね?芳樹君」
「ばれたか・・・」
軽井沢に来てから10日が経った。
毎日8時間以上練習できてしかも食事も最高に美味い。夜は外で花火をやったり
肝試しをやったり・・・朝は朝で近くの湖まで自転車で出かけたり。
高校生の俺たちがこんな贅沢をしていいのか?ってぐらい自由を満喫していた。
「次のライブが待ち遠しいよ。10月22日だったっけ? どんな客が来るんだろ?」
芳樹が線香花火を慎重に持ちながら言った。
「かわいい女子がわんさかとか・・・もう卒業を前に卒業しちゃう感じ?」
「あほか・・・正也はそれしか頭に無いからな・・・部屋だってAVだらけだし・・・
サルかよ。 隆一なんか部屋に戻ってもギター弾いてんぜ」
「そういうケン君の部屋から俺のAVが出てきたんだけど? しかも熟女物・・・
ママが恋しいのかなぁ?」
「うっせー」
「あと1週間だ。初めての単独だからな・・・思いっきり暴れようぜ」
少し肌寒い9月に軽井沢の空気のせいか俺は妙な身震いをした・・・
22日のライブは最後の曲を演奏し終わってもアンコールが鳴り止まない。
結局12曲のオリジナルとアンコール4回というステージにで、3時間近く
観客達と熱い時間を過ごした。
移動の車の中でも興奮がなかなか覚めず、ホテルに戻っても眠ることが出来なかった。
次の日軽井沢のペンションに戻る車の中では、全員疲れ果てたような顔をして
自分達の演奏の録音を黙って聴いてたっけ。
10月にFMラジオのライブをやった頃には、俺達の事を日本人全員が知ってるんじゃ
ないかと思うぐらいどこに行っても人が集まってきていた。
「隆一・・・なんか有名になるってメンドクセーなぁ・・・何にもできねーじゃん」
正也がふてくされたように飲みかけの缶コーヒーを投げ捨てた。
「レコーディングが終わったら東京に住むとこ用意してくれるそうだ・・・」
軽井沢もこれから冬に入る。ここに全員で居られるのもあと数日の話だ。
ずっとこんな感じでみんなでバカなこと言って過ごしていたかった。
本当にそう思っていたんだ・・・




