第4話
「さあ・・・それでは発表します! 今回のチャンピオンは・・・・・・
ソニックエンジン! 高校生バンドが優勝だぁ!!」
会場から大歓声が聞こえている。
俺たちはまるで他人事のようにその歓声を聞いていた・・・
「それでは審査委員長よりコメントをお願いいたします」
司会のボビー・ジェームスがトロフィーを渡したばかりの中山俊二にマイクを向けた。
中山俊二は音楽プロデューサーとしても有名だが、元はサイノスというバンドの
ギタリストで日本でも屈指のテクニシャンである。
「おめでとう! 今回はいいバンドが多かったんだけど君らには他とは違うパワーを
感じたよ。特にギターの隆一君だっけ? めちゃめちゃいい音出してた。
もうそのままレコーディング出来るよ・・・ってことでいい話っ!
今回主催のジャックレコードさんが是非君達をデビューさせたいそうだ。
どう?最高のプレゼントだろ? おめでとう!」
その辺りからの記憶が曖昧なんだけど・・・
まるで夢の中に居るような感覚で、正気に戻ったのは家に帰ってシャワーをしている
頃だった。
「デビューかぁ・・・」
なんだか急に誰かと話がしたくなってケンに電話をしていた。
「あっ・・・隆一かぁ・・・おはよう・・・」
「悪りぃ・・・こんな時間に・・・」
「いいよ・・・てか、夜中の3時じゃん! 明日学校だぜ・・・」
「俺達・・・優勝したんだよな?」
「そうだよ・・・」
「デビュー出来るんだよな?」
「うん・・・デビューするらしい・・・あれ?・・・夢じゃねーよな?
隆一・・・あれマジ話だよな?? ウォーーー!!!!」
電話の向うで大声を出しながら叫んでやがる・・・
「ウルセー!!近所迷惑だろ!・・・やったな? やったんだよな?俺達・・・」
「隆一ぃ~~・・・寝れねーよ」
「テメー今まで寝てたくせに・・・」
結局俺は一睡もせず登校するハメに・・・
デビューCDのレコーディングは11月からの予定だった。
その前に数本のライブもスケジュールに入っている。
芳樹も正也も進学どころの話ではないようだった。
こんなチャンスは一生に一度あるかないか・・・
全員の気持ちは決まっていた。
だがその前にやっておかなければならない事があった。
あのギターを自分のものにしなくてはいけない・・・
あれがなきゃバンドは無理だ。
来週先輩の家を訪ねよう。そしていくらでもいいから譲って欲しいと頼もう・・・
もう金とかじゃなかった。
あのギターは誰にも渡したくなかったんだ・・・




