第2話
☆
このギターを借りてから、俺達のバンドの演奏は今までとはまったく違うアグレッシブな
ものになっていた。
特にドラムの芳樹の叩き方が大きく変貌してる。
元々おとなしい性格だったこともあって、ドラミングに関してもどちらかといえば
控えめで曲によっては少し歯がゆさを感じることも多かったのだが、ギターの図太い
音に触発されたのかバスドラの音量が倍になってんじゃない?ってぐらいペダルを
踏み込んでいた。
それとボーカルの正也だが・・・スタジオで練習してるだけなのにまるで目の前に
数万人の客が居るんじゃないかってぐらいオーバーなアクションをキメテやがる。
俺はこの時点で8月のバンドコンテストのグランプリは間違いなくこの手の中にある
という確信に近いようなものを感じていた。
「なあ、今日の練習はこれぐらいにして久しぶりにみんなでメシでも食おうよ」
ベースをアンプに立てかけながらケンが俺の方を見た。
「そうだな・・・じゃあいつものファミレスで作戦会議といくか」
まだ高校生だった俺たちはスタジオ代や楽器のローンで練習以外の日はほとんど
バイトだったから、全員でゆっくり話をする時間も最近はめっきり少なくなっていた。
高校最後の夏休みをジャックレコードの主催するバンドコンテストに捧げている・・・
そんな表現がピッタリと当てはまるような生活をしていた。
「それでさー・・・あのギターっていくら位すんの?」
正也がナゲットを咥えながら聞いてきた。
「俺もよく知らないんだけど・・・同年式のストラトの相場が60万ぐらいなんだ。
だけどあのギターはどう見てもそこらのとはワケが違う。いったいどの位するのか
分んないよ」
「えっ? 川上さん教えてくれないの・・・値段」
不思議そうな顔をして芳樹がこっちを見た。
「聞いたんだけど・・・貰ったんだってさ。 知り合いのギタリストに・・・
だから値段のことは分らないって言ってた」
「貰ったって!?・・・チョーラッキーじゃん! だからお前に貸してくれたんだぁ・・・
納得だわ。 てか、お前・・・買いますって言えばいいじゃん? タダだったんだし
ひょっとしたら安く譲ってくれるかもしんないよ?」
「俺も正也の言うこと分るわ・・・一度聞いてみろよ川上さんに」
ケンがキャラに似合わない真剣な顔で言った。
「このコンテストが終わったら言おうと思ってた・・・逆に・・・あのギターがなきゃ
バンドは続けられない・・・そう感じてたんだ・・・」
俺は心の中で感じていたことを初めてみんなに伝えた。
それほどバンドにとって・・・いや、今の俺にとって無くてはならないものに
なってたんだ・・・あの黒いストラトキャスターは・・・




