第17話
この時間の公園は人影もまばらで、すぐにケンを見つけることが出来た。
「よかった・・・無事だったか・・・」
「どうしたんだ隆一?・・・よく分ったなここが」
「ああ。さっきお前のマンションに行ったんだけど・・・とにかく無事でよかった」
「無事でって・・・何の話だ?」
俺はリリイから聞いた話をケンに伝えた。
最初は笑いながら聞いてたケンも、思い当たることがあったようで顔を強張らせながら
俺を見ていた。
「いま隆一君が言った通りにすれば、あなたに取り憑いている霊は諦めて別の場所へ
行くわ」
「隆一・・・いいのか?そのギター燃やしてしまって」
「お前の命が掛かってるんだ。そんな事言ってる場合じゃないだろ?」
「二人とも聞いて。霊感の強いわたしが一緒に着いてきたことによって芳樹君の霊は
一時的にどこかへ退散してるはず・・・でもまた戻ってくるわ。
今夜2時過ぎにケン君の身体に取り憑いた瞬間を狙って除霊するの。
そうすれば二度と現れることは無いでしょう」
「ありがとう。じゃあ俺はこのままケンの家で待機していて、0時を過ぎたらコイツを
連れて高見神社に行くよ。色々ありがとう・・・君がいなかったら・・・」
「気にしないで。今度お昼ご飯おごってもらうから。くれぐれも気をつけて・・・
ケン君から目を離しちゃダメよ」
「ああ。分った・・・」
リリイが帰ったあと俺たちはケンのマンションでお袋さんの手料理に舌鼓を打っていた。
「どうかしら?隆ちゃんの口に合った?」
「久々のお袋の味って感じでメッチャ美味いっす」
「そう。よかった・・・健一も沢山食べなさいよ。アンタ痩せすぎなんだから」
「分ってるよー。隆一・・・俺、このマンション出て実家に戻ろうと思う。
東京は何かと便利だけど・・・俺の肌に合わねーわ」
「いいよ。ギターがなきゃバンド続けられるかどうかもわかんねーし・・・」
「ホントにいいのかよ?それで・・・」
「ああ。もっと早く気がつけば芳樹もあんな目に合わずに済んだんだ・・・
兎に角、俺達の手でこの連鎖を断ち切らなきゃ」
「そうだな。ギターが存在するかぎり続いていくんだもんな・・・」
深夜0時を回った頃二人はタクシーで高見神社に向かった。
リリイの知り合いの宮司が居るというその神社は、埼玉に入って少し走ったところに
在った。
それほど大きくはないが静かな佇まいで、深夜のせいか少し怖い感じすらした。
「なんか肝試しみたいだなあ・・・そういえば軽井沢のペンションでよくやったよな」
「そうだな・・・それほど時間は経ってないのに随分昔のことのような気がする・・・」
神社の中に入ると、リリイの知り合いだという宮司さんが小さな穴を掘っていた。
「やあ。君たちが・・・理恵子さんから話は聞いてるから。じゃあもう暫くしたら
始めようか・・・多分2時過ぎに何か変化があると思う・・・」
俺たちは静にその時を待った。
腕時計の針が2時15分を示した辺りでケンが少し身震いした。
「寒いのか?」
「いや・・・なんか急に・・・ゾクゾクって・・・」
「入ったようですね・・・じゃあ始めましょう」
宮司は何か唱えると二人の前で清めの儀式を始めた・・・




