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第13話

隆一が住んでいるマンションは吉祥寺の駅から5分ほど歩いた場所にあり、ツアーや

レコーディングの時以外はほとんどといって良いほどここに引き篭もっていた。

もちろん引き篭もるといってもゲームをしたりするわけではなく、ギターの練習を

しているか好きな音楽を聴いているというような生活である。

部屋は1LDKで12帖のLDKと8帖のベッドルームだ。

LDKには3人掛けの白いソファーと55インチのテレビ、それにブギーのアンプが

置いてあり、壁全体に収納棚が作り付けられていた。


「おじゃましまーす・・・そっか、やっぱ誰もいないんだ・・・」

少し酔いが醒めたのかさっきよりはまともな口調でリリイが言った。


「まあ、何にも無いけど・・・くつろいでくれよ」


「ホント・・・何にも無いんだねー。シンプルでいいじゃん。

このソファーで寝ていいの?」


「そっちは俺が寝るから、あんたはベッドで寝ればいいよ」


「そんなの悪いわよ。わたしこっちでいい」


「じゃあ好きにしろよ・・・俺ちょっとシャワーしてくるから」


「あっ、いってらっしゃーい・・・・・・さてと・・・」

リリイは周りを見渡した。その目線は何かを探しているかのようである。


「あった!・・・・・・これかぁ・・・・」

リリイが見つけたのは黒いギターケースであった。

壁の収納棚の一部がギター置き場になっていて、アコースティックやエレキが

数本ずつケースに入って保管されていた。


「これがあのギターね。・・・・えっと・・・どうやって開けるんだ?これ・・・」

ケースにはダイアル式の鍵が掛かっていて番号を知らなければあけることが出来ない。

リリイは適当に回しながら何度も開けようと試みたがそれは徒労であった。


「何やってるんだ?・・・勝手に触るなよ・・・大事なギターなんだぞ、それ」


「知ってるよ・・・いわく付きのギターなんでしょ?」


「あんた何でそれを・・・」


「言わなかったっけ? 触れば何でも分っちゃうって・・・」


このストラトの件は俺と川上先輩しか知らないはずだった。

まだメンバーにも何も言ってない・・・

この女・・・数本あるギターの中から何故それだと分ったんだろう?


「わたしが何でこれだとわかったか知りたいの?」


「えっ!?・・・・・・」


「マー君・・・正也君にねこの前CD借りたの。それでちょっと気になることが

あったのよ。そう思ってたら昨日あなたたちが来たでしょ? ビックリしちゃた」


「気になることって・・・なに? 音を聴けば分るようなこと?」


「1枚目のCDと先日のデモ・・・聴き比べるとはっきり分るわ。

確か・・・1枚目を録り終えて少ししてドラムの方が亡くなってるのよね?」


「そうだけど・・・」


「あなた、多分わかってたと思うけど・・・このギター手に入れてから一番変わったの

ドラムの人だったんじゃない?」


「・・・ああ、芳樹はおとなしいヤツでなかなか前面に出る演奏が出来なかった。

それなのにこのギターで弾きだした途端、性格が変わったように叩きだしたんだ」


「やっぱりそうだったのね。このギターにはきっと何か秘密があるわ。

それを解き明かさなきゃ・・・」


「どうなるんだ? 解き明かさないと・・・」


「またメンバーが死ぬことになる。正也か・・・ベースの人・・・」


「なんだって!? それはいつなんだ!?」


「まだ少し時間はあると思うの。1週間?2週間かなぁ・・・」


「そんなに早く?どうすればいいんだ?どうやったらアイツらを守ることができる?」



俺は藁にも縋る思いで、この女に全てを話すことにした・・・



           ☆挿絵(By みてみん)








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