『後輩』からの相談事
「はあ……」
カフェで談笑をしていると、不意に『後輩』が溜息を吐いた。
「如何かしましたか?」
先程までの楽しそうな雰囲気から一変し、物憂げな表情である。何時も元気な彼女にしては大変珍しいことだ。俺はカップを置くと、首を傾げた。
「聞いてよぉ! もう、本当に困っている!」
「ええ、それで?」
感情的になっている彼女は、テーブルに両手を着くと身を乗り出す。彼女の様子から、困っていることは事実のようだ。俺は話しの先を促す。
「……えっと、はじめは元気だったのよ? 飛んだり跳ねたり、鳴き声も沢山上げていたの……。私が掴んだら、嚙んだり、引っ搔いたりして……」
「ええ」
彼女は椅子に座ると、困っている原因に関して口にし始めた。俺は相槌を打つ。
「ちょっと暴れん坊だから、怪我をしないように柔らかいクッションで保護してあげて……でも最近元気がないの……」
「具体的にどのように、元気がないのですか?」
飼育環境に関しては問題なさそうだ。元気がないことに関して、具体的な理由を尋ねた。
「えっと……ずっと、寝転んでいて……触っても大人しくて……」
彼女は視線を下げると、両手を忙しなく動かしながら元気がない状態を告げる。
「そうですか……食事は何を与えていますか?」
相槌を打った後に、俺は珈琲を飲む。そして食事の内容に関して、尋ねる。食べ物はアレルギー反応や好き嫌いがあるのだ。
「……? しょくじ?」
「ええ、食事です」
俺の言葉に彼女は首を傾げた。そのことに関して、元気がない理由が判明した。
「えっと……その『しょくじ』って、必要なの?」
「勿論です。生命維持に食べ物・飲み物が必要不可欠です」
不思議そうに尋ねる彼女に肯定の言葉をかける。事前に『先生』にも言われた筈だが、忘れていたようだ。
「うっ……えっと……二週間ぐらいは大丈夫だよね?」
「残念ですが」
彼女は不安気に俺へと確認をするが、その数字は完全に境界線を超えている。俺は首を横に振った。
「えっ!? 嘘っ!? 駄目なの!? なんで??」
「はぁ……『先生』に連絡します」
抗議の声を上げる彼女を無視して、俺はスマートフォンを手にした。
「はぁぁ……折角気に入った子だったのに……でも、『先輩』に相談して良かった! 問題解決だよ! ありがとう『先輩』!」
「お役に立てたなら良かったです」
『先生』に短くメッセージを送ると、彼女は元気を取り戻した。俺はカップを掴むと、珈琲を飲む。
「うん! あ! あの子! 凄く可愛い! 次はあの子にしょう!!」
窓ガラスの外には、沢山の人が行き交っている。彼女は次の子を見付けたようだ。目を輝かせて、外を見ている。
「では、次は失敗しないように気を付けてください。人間は繊細なのですから」
無駄な忠告だとは思うが、俺は『先輩』としての助言を口にした。




