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0.死霊の唄
もうこの声も届かない。もうこの心も響かない。
わたしは死霊。本来ならばこの世の狭間に吸い取られ、新しい命に代わるだけの存在のはずだった。けれど、わたしはわたしのまま、永遠の檻の中に閉じ込められたまま、心から愛したたった一人の男の破滅を眺めるようにと呪われた。
何の罪でこんな事になってしまったのだろう。
考えたところで死霊のわたしにはどうしようもない。
死んだ身体を奪われて、わたしはただ支配されるのみ。そんなわたしに縋ることが出来るとすれば、それは一人。
その名はアマリリス。
愛した人の破滅を止められるかもしれない、神に選ばれた赤い花。