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0.人形の唄
人形となった僕の口は動かない。人形となった僕の目は動かない。
それでも、僕の耳だけは、主人となった恐ろしい魔女の元に舞い込む噂を拾い上げては固く閉ざされた心に沁み込む。
僕が願うのは遠く離れた義兄のこと。
彼の未来をどうか僕自身が縛ってしまうことがないように。
僕を人形に変えた魔女は、いつも、いつも、義兄を気にして噂を集める。そうして、舞い込んだのは義兄の旅の壁となり得る別の魔女の存在。
彼女の名はアマリリス。
見ることも、喋ることも出来ないまま、僕は祈り続けた。どうか義兄に取り憑く悪魔の目論見を、台無しにしてしまう壁となってくれるよう。