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0.パンの唄
わたしにとって彼らはパン。
生きていようが心があろうが関係ない。
他の人間だって同じ。彼らも生きていて心のある他者を喰って生きるもの。誰も喰われる者の事なんて考えない。誰も自分の事を責めたりしない。
だから、わたしはちっとも異常じゃない。
わたしを蔑むことが出来る者がいるとすれば、水と空気と光だけで生きていられるような者だけ。
彼女は違う。彼女もまた他者の命を理不尽に狩る者。
けれど、彼女はわたしを蔑んでいる。鍵をかけられたその心の奥では、業火のように感情が燃え盛っているようだ。
彼女の名前はアマリリス。
わたしにとっては彼女もまた、少し珍しいパンの一つでしかない。