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0.魔女の唄
魔女。
私がその言葉から受ける印象は、暗くて不吉なものだった。冷たい月のような存在。禍々しい空気が純朴な人間達を侵すような気味の悪さ。
けれど、今の私は違う。魔女なんかよりもずっと怖いものを知ってしまった。これまでずっと信じていたものが覆された瞬間。それは、私自身の死を間近にしてようやく訪れた。
これから先、私は今までの私を捨て、今まで毛嫌いしてきたはずの存在に寄り添う事になるだろう。
彼女の名はアマリリス。
その名前は私にとって、救いをもたらす女神のようだった。