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第一話 ひとりの夜は、読んではいけない 三
私は両手で耳を覆った。
けれど、インクの羽を震わせて歌うその声は、
指の隙間をすり抜けて、
歪んでしまった私のこころのかたちを正確に撫でていく。
それは、私の中にあったものだった。
それらがすべて空中に溶け出し、
一羽の鳥となって、泣いているように聞こえた。
最後のさえずりが、夜のしじまに溶けていく。
小鳥の真っ黒な瞳が、私をじっと見つめている。
どこにも行けないままの私を。
やがて、小鳥は詩集の開かれたページに降り立ち
その中に入り込むように消えた
私は、濡れた手で、本に触った
ページは、指の湿りのあとを残していた
それ以外は
何もなかった
窓の外
夜の境界線が
消えようとしていた。




