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断罪されて地獄に堕ちた悪役令嬢ですが、モフモフが可愛いくて天国です  作者: 星井ゆの花


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07


 コンコンコン!

 翌日、部屋のドアをノックする音がして、着替えが終わったばかりのマリアンヌは急いで扉を開けた。すると目の前には使用人達の連絡係の姿、緊急ということで直に要件を伝えにきた。


「ごめんなさいね、マリアンヌさん。今朝は昨日とは違うお散歩コースに出て欲しいの。何でも、狆様を散歩後はそのままトリミングさせたいとかで」

「トリミングですか。行きつけのお店とかあるのかしら」

「ええ。食事も今日はそちらで摂ってもらうから、そのつもりでお願いね」


 マリアンヌは昨日と同じお散歩コースへと出掛ける準備をしていたが、コース変更の知らせを受ける。要はシャア・チンクがモニターを募集していた公園に立ち寄らないことになったのだが、まだ栄養ドリンクを試飲していないマリアンヌはちょっぴり残念な気持ちになった。


(もし、今日も同じお散歩コースだったらあの栄養ドリンクを試してから出掛けたのだけど。別のコースなんじゃ、モニターの感想を伝えられないし。まだ飲まなくていっか……)


「あら、その栄養ドリンク何処で」


 バッグから社畜印の栄養ドリンクを取り出して、一旦部屋に戻ろうとすると連絡係から呼び止められる。


「たまたま公園の東屋で、栄養ドリンクのモニター募集をしていたんです。新入りの人に配っているとかで、まだ飲んではいないんですけど。今日は予定が変更になりましたし、いいです」

「そう? 社畜印って……これ、例の社畜さん達が愛飲している危険なドリンクよ。貴女みたいな普通の人間が飲んで大丈夫なのかしら。私は鬼族だから、平気だろうけど」

「えっっ。この栄養ドリンクって危険だったんですか。てっきり、身体に良いものだとばかり」


 成分表を確認すると、タウリンやビタミンなど一般的な配合物で、とても安全そうに見える。だが、【社畜魂】という一つだけ見慣れない成分が。


「栄養ドリンクっていうのは、元気の前借りをするわけだから、無理しなきゃいけない時に飲むものなのよ。ただ、社畜になってしまうと通年栄養ドリンクが欠かせなくなるらしいの。依存性が極めて高いっていえばいいのかしら。人によってはお米やパンの食事代わりに、栄養ドリンクを飲んでしまうらしいわよ」

「依存性、しかも食事代わりに……だから危険なドリンクって仰っていたんですね。きっとこの社畜魂って成分が厄介なんだわ。けど、大丈夫! 私って、パンが無ければお菓子を食べるタイプですし。あっ……このフレーズ、我が故郷の格言なんです! 素敵でしょう。このフレーズがきっかけで、菓子パン文化が発展したんですよ」


 唯一覚えている生まれ故郷の格言、『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない』を自慢げに披露する。誰が作った格言なのか定かではないが、マリアンヌはその素敵な格言を自分の座右の銘として心に刻んでいた。


「……! パンが無ければお菓子を……そ、そう。けど、お菓子って菓子パンも含まれるのね。うーん、じゃあ依存性に負けて社畜化なんてことはないわね。格言か、けどマリアンヌさんって異世界出身だから例の姫君ではないし。けど何かしらインスパイアされた異世界とか……」


 連絡係の女性は青鬼族だから元々肌はブルーベースだが、気のせいでなければ『サァッ……』とさらに顔色が青くなった気がする。思い切ってマリアンヌは、地獄に来てからずっと気になっていたことを質問してみることにした。


「あの、時々皆さんお話しされているんですが、私ってどなたか著名な方に似ているんですか」

「似てるっていうか。ほら、世界には似た人が三人いるっていうじゃない。他人の空似何でしょうけど、もしかしたらマリアンヌさんの故郷はそのお方の思想が基盤になった世界なのかも。あはは、気にしないで……今度美味しい菓子パン紹介してちょうだい。じゃあ私はこれで……お仕事、頑張って」



 * * *



 さて、連絡係がかの有名な姫君を思い起こして慌てたのには理由があった。地獄には時折、歴史上の著名人がやって来る。そして、場合によっては彼らの知名度を利用して、新たな派閥を構築しようと企む者が出て来るのだ。

 マリアンヌは異世界人の魂ということで、かの有名な姫君ではないことが証明されている。だが、彼女の座右の銘はかの姫君からインスパイアされたものであることは明白であった。それゆえ、マリアンヌの故郷が例の姫君に強く影響を受けているだろうことが予測された。


 万が一、のことを懸念して連絡係はこのことをツナ様に報告する。ツナ様は愛犬の秋田犬を膝の上でモフりながら、連絡係の嫌な予感に耳を傾ける。


「……ということでして。マリアンヌさんを悪い方で利用しようとする輩が、出てきるのではないかと不安です」

「ふむ。確かに、マリアンヌは純粋ゆえ他人を信じすぎる。悪い輩に騙されて、新たな為政者という傀儡にされたら……と考えるとゾッとするな。それに、社畜印の栄養ドリンクを配っているという企業……社員の社畜を随分とこき使っている様子。おそらく、ブラック企業というやつだろう。注意せねば。よし、くノ一に見張らせるとしよう」


 ツナ様が言うや否や、背後から現れた美しいくノ一が町娘に扮してすぐさまマリアンヌの跡を追う。モフモフ天国の畜生道に、ちょっとした波乱が始まろうとしていた。


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