表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪されて地獄に堕ちた悪役令嬢ですが、モフモフが可愛いくて天国です  作者: 星井ゆの花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/13

11


 二足歩行でほぼ人型といっても過言ではないヤギ族の山羊沼さんと、正統派の白アルパカ代表のアルルンが小屋のボス権利を巡って一悶着。


「パカパカ、きゅんきゅん」

「くくく……そういえば、貴様は羊小屋のメリーヌとやらに夢中という噂だったな。お仕置きにはちょうど良い、いいかよく聞け。あのメリーヌとかいうメス……胎内に仔羊を身籠ったらしいぞ」

「パカッ?」


 聞き分けのないアルルンにお仕置きと称し、彼の弱点であろうメス羊について嫌な情報を吹き込む。愛しの彼女、メス羊のメリーヌが妊娠したと言うのだ。

 だが、寝耳に水といった反応のアルルンからすると、アルルンの子というわけではないらしい。そもそもアルパカと羊はカップリングとして成立しない。しかし、その事実をアルルンは知らない模様。


「くくく。悔しいか、悔しかろう。貴様が触れ合いコーナーで、パカパカと人間や鬼族相手にファンサしている間、あのメス羊は何処ぞのオスと……。はははっこりゃあ傑作だな。お前、幾らあのメス羊に貢いだ? 他所様の女に入れ揚げて、無謀なローンで無駄なリングとネックレスを購入しただけだ」

「……!」


 アルルンがメリーヌに夢中になり、無謀な金額のアクセサリーセットを貢いだという話は事実のよう。次第に、アルルンを取り巻くオーラが暗くなる。


「大切なアルパカ毛を無惨に刈り取り、プライドまで刈り取られた挙句、見事に寝取られていたんだ! お前が貢いだ約束のリングは、今頃ネットオークションで叩き売りされているよ」

「パッパカな?」

「ほらこのスマホ画面を見てみろ」



 証拠画面と言わんばかりに、フリマアプリ【メリカル】の画面を見せつける。


『頂き物ですが使わないのでお売りします。ビヨンドシーのリングとハートのネックレスのセットです。新品未使用』


 超人気ブランド、ビヨンドシーのオシャレで可愛いハートのリングとネックレスのセットは、まさかのシリアルナンバー入り。

 そしてそのシリアルナンバーは、アルルンが自らの毛を売り捌いてでも彼女にあげた思いのこもった贈り物の証拠だった。


「だとさ。貴様の精一杯は、あの女のフリマアプリの小遣い稼ぎで消えたんだよっ」


「パカパカ、パカパカ! パッパカ〜! ブルル、ブルル……ペッペッ!」


 アルルンの刈り取った毛は、賢者の贈り物にすらなれなかった。

 怒りと悲しみとやり切れない悔しさで、思わず泣き叫びながら唾を吐いて暴れ始めるアルルン。


「くくく、なかなか良い感じに仕上がってきたな。純白でピュアなアルパカの貴様に、心まで腹黒い黒山羊のオレが復讐方法を教えてやろう」

「パカァ……」

「お前も知っている通り、羊小屋の先にはジンギスカンハウスがある。お客様に喜んで頂けるように、新鮮な羊肉を提供するためだ。メリーヌを奪った恋敵を殺るなら、ジンギスカンハウスに送り込めば良いだけ。だが、そうそううまい具合に事は運ばないだろう。黒魔術にでも手を染めない限りはな!」

「パカカ……黒魔術?」


 幻聴でなければ、アルルンがアルパカ語を忘れて人語を喋った気がする。だがほぼ人型の山羊沼さんと対等に渡り歩くアルルンが、本当は人語が喋れても不思議ではない。もしかすると、擬人化すら出来るのかも知れないが、本人にその気がないのだろう。

 それはともかくとして、黒魔術とは一体何の話なのだろうか。ジンギスカンハウスに送り込むとは……?


「はいはーい。今日のアルパカ朗読劇場はここまででーす! ジンギスカンハウスは、別の産地から冷凍で羊肉を送っているので、牧場の子ではありませんよ。時間が押しているので、次のお客さんに列を交代してくださいねっ。さっ退場お願いしまーす。山羊沼さんのブロマイドやアクリルスタンドを購入される方は、改めて売店の列に並んでください」

「なぁんだ朗読劇だったのね。あまりにも迫真に迫っているから、本当に事件が起きたのかと思っちゃった」

「それにしても山羊沼さんかっこよかったね〜。ブロマイド買っちゃおうかなぁ。アルルンも意外と擬人化したらイケアルパカだったりして」


 いろいろと謎の多い話の流れだが時間がやって来たのか、係員がその場を仕切り始めた。お客さんも、本当の事件ではなく朗読劇だと分かり安心して殆どの人が退場する。


(おそろしい内容のシナリオだったけど、ここは地獄なのだからダークテイストの朗読劇でも不思議ではないのよね。しかも妙にリアリティーのある内容で……本当に朗読劇だったのかしら。朗読劇って、座ってシナリオを朗読するんじゃなかったっけ。ちょっと違うような……それにアルルンは狆様に何かを訴えていたし)


 狆様の表情を確認すると『ここは危険だから早く出よう』と、狆様が急かしている気がした。



 * * *



 アルパカ小屋を出ると他のお客さん達は、イケヤギの山羊沼さんブロマイドを手に入れるため売店に列をなしていた。


「ふう……何だか予想に反してハードな触れ合いコーナーだったわね。狆様は大丈夫だった」

「きゃうん」


 シャア・チンクはというと、売店に臨時の試供品コーナーを設置して、お客さん達に社畜印の栄養ドリンクを配布している。


「あっマリアンヌさん、お陰様で試供品もどんどん捌けて行ってます。山羊沼さん効果ですかね」

「ふふっ。シャアさんもおしごと順調みたいだし、ひとまずは安心だわ。けど、アニマルセラピーどころか、動物の世界も荒れているという現実を見せつけられた気がしたけど。それで良かったのかも」

「ははは……アルルンの悩みに比べたら、僕たちの悩みなんて小さいのかも知れませんね」


 心の何処かで、あの揉め方は朗読劇ではなく現実なのではないかという気がしていた。けれど、その勘が当たっていたことに気づくのはもう少し後である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ