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断罪されて地獄に堕ちた悪役令嬢ですが、モフモフが可愛いくて天国です  作者: 星井ゆの花


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01


 かつて、中央大陸に魔法国家フレンチェルと呼ばれる大国があった。優秀な魔法使い達が大陸中から集い、魔法研究所は多くの書物と魔力が高い宝石で満ち溢れていた。

 しかし、良い暮らしをしているのは貴族階級と彼らに癒着している魔法使い達だけで、農家などの庶民は常に貧しい暮らしを強いられていく。


 悩みの種は、高すぎる納税額や現国王の悪政だけでは無かった。


 次期国王であるラゼル王太子の婚約者マリアンヌは、兎にも角にも我儘だ。庶民が節約しているのを気にもせず、領土からの納税を愛犬のお洋服やオモチャ代に使ってしまう。


「マリアンヌ嬢は、また愛犬のために我らの蓄えたお金を無駄に使ったのか」

「骨付き肉なんて庶民は滅多に食べられないのに、犬に与えるために骨の部分だけ残して他は捨ててしまったそうよ。お肉の部分を恵まれない人にあげれば良いのに」

「ええいっ。やってられるかこんな国っ。ストライキで、あのバカ王太子の目を覚まさせてやるっ」


 贅沢三昧のマリアンヌが王妃にならぬよう、ついに庶民達はストライキを起こした。マリアンヌを王妃にするなと看板が至る所に掲げられ、王宮にはクレームが連日殺到。何度注意しても改善する気配すら見られないマリアンヌは、ついに王太子に見限られる。


「いよいよ、ラゼル王太子も嫌気がさして婚約破棄するんだとか……」

「けど、マリアンヌ嬢の家柄に対抗出来るお妃候補なんてとてもじゃないけど……」

「それがね。伝説の聖女様が異世界から現れて……マリアンヌ嬢はお役御免になったそうだよ。乙女ゲームの悪役令嬢、それが異世界でのマリアンヌの通り名らしい」


 人々の願いが神に通じたのか、異世界より現れし聖なる乙女プルメリアの登場により、王太子は心変わりをした。有体に言えば、マリアンヌ嬢から聖女プルメリアに乗り換えてしまったのだ。


「おおっ愛しいプルメリア」

「嬉しいけど、貴方にはマリアンヌ嬢という婚約者が」

「マリアンヌとは、別れるよ。しかし、あの女の家はかなり裕福でね。我が国もあの女の財力とコネクションを簡単に切れない。どうしたら?」


 金髪碧眼のマリアンヌ嬢は、大陸の基準からすると自慢の美女だったが、異世界より現れたプルメリアはオリエンタルな魅力溢れる黒髪の美女だ。


 色白の豊満な胸に赤子に戻ったような気持ちで甘えて、彼女の赤子として生まれ変わるかの如く魂の奥底まで気力を注いだ。

 まったく違ったタイプの美女にハマった王太子は、身も心もプルメリアに浸かり切っていた。


「私、マリアンヌのペットにドレスを汚されましたわ。なのに、マリアンヌも従者も、私より犬の方が上だと。王太子様、私への愛が本物ならばあの犬狂いのマリアンヌをギロチン台で殺して下さいな。きっと異世界の地獄、畜生道に堕ちるでしょう。それが、我が国が平和になるための最後の手段なのです」

「おぉそれは名案だ。オレは、プルメリアの願いならなんでも叶えると誓うよ。それがかつての婚約者を地獄に堕とすことになってもね」

「嬉しい……早く私に真実の愛を見せてください」


 散々愛し合ったある日、プルメリアは邪魔な女を殺すように可愛らしくおねだりをした。

 要らなくなった恋人への仕打ちは非常に厳しく、人々の要望に応えるため、そして聖女プルメリアのご機嫌を取るためにマリアンヌは処刑されることになった。



 庶民も聖女も王太子も、待ちに待った悪女マリアンヌ断罪の日。公開処刑の広場には、多くの野次馬や報道陣が殺到。大陸随一の美女と謳われたマリアンヌの金色に輝く髪はショックで白く染まり、その顔色は青く頬は痩せこけていた。



「なんでも異世界では、乙女ゲームの悪役令嬢などという不名誉な渾名までついているらしい。そんな悪女には、地獄がお似合いだっ。異世界の地獄畜生道で、ケモノどもに囲まれ奴隷生活でも送るがいいっ」

「いやぁあああああっ!」


 ザシュッ!


 唯一、死の間際にマリアンヌに駆け寄ったのは、彼女が溺愛していた愛犬のパピヨンだったという。



 * * *



「はふはふ……きゃうーん」


 哀れなマリアンヌが小型犬の甘えてくる声で目を覚ますと、そこは枯れ木が寂しく揺れる切り立った崖っぷちだった。


 見慣れない白黒まだら模様の小型犬は、愛犬のパピヨンと同じくらいのサイズ。ジャパニーズスパニエルことちんと呼ばれる有名な犬だ。が、残念ながらマリアンヌの国には本物の狆はいない。大きな瞳が愛くるしく、耳は垂れていて柔らかそうで、マリアンヌはその犬に詳しくないもののすぐに気に入ってしまった。


「ここは何処、あら可愛いワンちゃん。多分、ジャパニーズスパニエルって犬種よね。キミ、ここでは何てお名前で呼ばれているの。ふふっこんなモフモフちゃんがお出迎えしてくれるなんて、天国かしら。ええと、あの肉球マークの愛くるしい看板は……ようこそ、畜生道へ……?」


 王太子の予言通り、地獄の一つ『畜生道』に堕とされたマリアンヌだったが、そこは愛犬家の彼女にとっては天国のような場所だった。

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