エピローグ
いつの間にか離れ離れになっていた。
お姉ちゃんが灰になって消えてから、数分が経った時だった。身を裂くような鋭い強風が吹いた。砂や小枝が肌を叩く。抵抗も虚しく、風はいとも簡単にわたしたちを持ち上げ、壊れた壁から外に放り投げた。明らかに自然な風ではなかった。
気がついた時にはモラールはいなかった。辺りを見回しても見えるのは木々だけ。それと、土砂に飲み込まれたあの学校。多分ここは学校の裏山だろう。
「モラールのことだから探しに来るだろうし、ここにいればいいや」
「ねえ、お嬢さん。死神だよね」
「!」
近づいてくる音がしなかった。声で後ろに『何か』がいるのはわかったけど、気配が全くしない。そもそもいるのかすら分からない。
「わざわざ振り返らなくてダイジョウブだよ。キミは今回ジャマモノだから」
「お嬢様!」
「モラール?」
モラールの冷たい手がわたしを包みこんだ。
「キミは別のボクと話してたはずだけど。どう振り切ったか知らないケド返してくれないかな?それは後でボクが殺し」
「黙れ」
「………ふーん。キミも変わったね。そんなにそれがダイジなんだ。ああ、分かった。シャルルに似てるからか。でも、もうカノジョが言った時効はとっくに過ぎてる。ボクは問答無用でキミを殺すことができる。だから返せ。それとも、それと死にたいのかい?」
「っ。__お嬢様」
わたしを抱いていた手がそっと離れた。
「ワタクシの後ろの戸が見えますか?」
「…うん」
モラールの後ろには窓すらの装飾がない真っ黒の戸が立っていた。
「ではその中で待っていてください。すぐに戻りますので」
戸を引くと、視界が一気に赤く染まった。赤いバラだ。その上では白く淡く光る蝶が飛んでいる。花畑の奥には、大きな屋敷が立っていた。
「ねえ、モラ」
振り返ると、モラールは大鎌で灰色の『何か』を空へ吹き飛ばしていた。
死神の終末1、ありがとうございました。
2については、検索をかけて頂くか、Xでのポストをご確認して頂ければ幸いです。https://x.com/Nina0aiIllust?t=hu3qWmOUIY-Fi2myEHsmXg&s=09