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間章 ―モラール―
時折、銃声が響き、絶叫のような悲鳴が聞こえる。
音楽室と呼ばれていた部屋は半ば崩壊し、先程まで少女が座っていたグランドピアノにも蔦がまわり始めていた。
_やけに静かだった。環境ではなく、彼の心が。
黒髪の彼_少女にモラールと呼ばれていた男は、次々と咲く青い彼岸花を通り過ぎながら、戸の前に立った。手には男の背をゆうに越す大鎌が握られていた。緩やかにカーブした刃に、柄には蔦をあしらった模様が刻まれている大鎌だ。
「残念ですが、あなたたちにはここで死んでもらいます。ワタクシのためにも」
男の目は、戸の前で震える二人の女子生徒を捉えていた。
「や、やめ」
女子生徒の言葉を遮るように、男は刃を振り下ろした。シュッと空気が切るような音がしたかと思うと、赤い花が散った。
「それでは」
二人の女子生徒の首が落ちた頃には、その男の姿がなかった。