最終話 一件落着、そして修羅場
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「じゃあ、わたしが寝てる間に全部解決しちゃったんですね」
夕方、久しぶりに勇者のパーティー五人が食堂に揃っていた。無事サキュバスの呪いが解けアンディが目を覚ましたのだ。
しかし聖女マリアは不満顔だ。
「結局Fがなんだかわかりませんでした。ルチア様もヒイロ様も教えてくれないし」
(いや、絶対教えられないだろ)
ルチアとヒイロは顔を見合わせて苦笑する。
「アンディさんはしてもらったんですよね!」
「えっ? あ、あー、そうらしいな」
マリアから話を振られたアンディは上の空だった。
「Fってなんだったんですか⁉」
「いやぁ、俺が目を覚ました時にはもう終わってたみたいでさ。何をされたかもわかんなかったよ」
ポロムの希望通り、アンディは大人のお店のお姉さんにFされたと聞かされていた。
(いやぁ、めっちゃ気持ちよかったんだよなぁ。Fってこんな良かったっけ? 久しぶりだから覚えてないけど、前はそうでもなかったよな。もしかして隣町のお店って超レベル高いのか?)
「またそうやってはぐらかす。ポロムちゃんだってFが何か興味ありますよね」
マリアの隣ではポロムが大好物の肉料理を堪能していた。
(あれ? ポロムちゃん、どうしたのかしら?)
ルチアは猫耳少女の異変に気がついて首をかしげた。
いつもなら豪快に塊り肉にかぶりつくポロムが、今日は薄いハムをぺろぺろ舐めまわしていたのだ。
「別に、Fなんて顎が疲れるだけにゃん」
「えっ? ポロムちゃんも知ってるの?」
「……あんなに大きいなんて予想外にゃん。顎痛い」
(顎って……まさかポロムちゃん、自分で?)
「うわーん、わたしだけ仲間外れですかぁ!」
ルチアの疑問をよそにマリアは一人泣きわめく。
それを必死でなだめるヒイロだった。
「ええと、そんな楽しいことでもないからさ」
「そうそう、世の中には知らない方がいいこともあるし」
「マリアちゃんにはまだ早いって」
だが、マリアは聞く耳を持たなかった。
「じゃあいつならいいんですか?」
「うーん、魔王を討伐した後かな?」
「じゃあ、魔王を倒したらヒイロ様がマリアにFを教えてくださいね」
「えっ? 僕が? い、いやぁ、どうかなぁ」
「お願いです、ご褒美にFさせてください」
「それって、どっちのご褒美?」
戸惑う素振りを見せながらも、マリアにすり寄られてヒイロは満更でもなさそう。そんな幼馴染にルチアは冷たい視線を向けた。
「いいんじゃないですか。魔王討伐の恩賞として、王子が教えてあげれば」
「何言ってるんだルチア! 君も知ってのとおり、僕に教えられるほどの経験なんかないてって!」
「それじゃあこうしましょう。ルチア様はよくご存じみたいですから、ルチア様がヒイロ様に教えて、それをヒイロ様がわたしに教えてください」
「えっ? それは……いいのかな? ルチアはどう思う?」
「いいわけないでしょ!」
(修羅場にゃ)
(修羅場だな)
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ちなみに魔王討伐後、爵位を叙されこの地方の領主となったアンディは隣町を公認の花街とした。剣聖のお墨付きを得て、町は国中から観光客が集まる一大歓楽街になったという。




