97 そして、空へ
大地を失い、人々は居場所を失った。
人々だけではない。
地球上に存在していた動植物も。
土や岩といった無機物も。
存在していた者たちは自分たちの立つ場所を失った。
しかし、既に多くが宇宙のエネルギーを受けていた。
存在そのものも変わっている。
どれもが宇宙の中で生きていけるような存在になっていた。
それを進化というのか。
あるいは変化というのか。
それはわからない。
だが、多くの生命は宇宙に適応していった。
大地がなくても生きていけるように。
星命体。
星命種。
スターシード。
呼び名は何であれ、宇宙に抵抗した種族として、人類は生き延びていく事になった。
地球にいた多くの生命や無機物も。
広大の宇宙の中を、気の合う誰かと共に。
あるいは一人孤独を楽しみながら。
地球にいた者たちは望むように振る舞っていく。
束縛はない。
制限はない。
全てが自由。
何をするのも、何をしようとも誰も妨げない。
ただし、この自由こそが自由を縛っていく。
何をしても良い。
誰もがこのような自由を持つが故に、相手の自由を妨げる事は許されない。
自由は互いに自由を縛っていく。
これだけは守らねばならなかった。
だが、誰に言われるともなく誰もが守っていた。
自分と相手の自由を。
これに名を与えるならこうなるだろう。
尊重。
今、誰もが互いを尊重し、己を尊重している。
そんな中で広大な宇宙の中を漂っていった。
イツキもそんな一人だった。
誰かに束縛されない。
誰をも束縛しない。
そんな気ままさを楽しんでいた。
もう大地に縛られる事もない。
好きなところに好きなだけいられる。
誰かにわずらわされる事はない。
だが、その目はどうしても様々な事を見てしまう。
この宇宙の中にある問題を。
地球のような問題のある場所は他にもある。
それらがどうして目についてしまう。
放っておいても良いが、それはそれで気分が悪い。
かつての出来事を思い出してしまう。
「しょうがないか」
知ってしまった以上は無視も出来ない。
放置していたらどんな問題になるかもわからない。
だからイツキは目にしてしまった問題を解決する事にした。
幸い、やり方はわかってる。
イツキの目は全てを見通してる。
それに、既に一度成功させた。
経験もある。
これらをもとにすれば、そう難しいものではない。
「さっさと終わらせよう」
ゴミや汚れのようなものだ。
実害はなくても、気に障る。
これがストレスになる。
そんなものを残しておくつもりはない。
さっさと片付けてしまおうとイツキは問題の発生源に向かっていった。
地球の問題は解消され。
イツキは解放された。
しかし、それでも宇宙はイツキを放っておいてはくれない。
「面倒だな」
愚痴をこぼしながらもイツキは解決に乗り出していく。
宇宙を少しでも過ごしやすくするために。
手間ではある。
だけど、それほど嫌ではなかった。
終わらせれば良いだけなのだから。
ただ、それでもうんざりしてしまう。
目に飛び込んでくる問題の数は多い。
全てを片付けるのにどれだけかかるのか知りたくもないほどに。
だが、手をつけていけば必ず終わる。
それもわかってるから飛び込んでいく。
「退屈はしないで済むか」
苦笑をしながら。
その耳にはまだあの時聞こえた音が聞こえてくる。
全てが目覚める音。
因果が共鳴しあってるシルシ。
リーン、とあの時聞いた音が。
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これで最後。
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