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怪物があふれるようになった地球で生き残る、全てを見通せるようになったこの目を使って  作者: よぎそーと
5章

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95 その頃のヒーロー達 11

 敵が押し寄せてくるのをミオは感じ取っていた。

 大地のエネルギーの中にいるのだ。

 そこで起こった事は何らかの形で伝わってくる。 衝撃や残留思念として。

 死んで肉体を失った者たちの思いがそこかしこにあふれる。



 悲鳴。

 嗚咽。

 苦痛。

 これらが波となって押し寄せる。

 それを否応なしに受けて、ミオは顔をしかめる。


「なんで」

 どうしてこうなったのか?

 さっぱり理解が出来なかった。

 自分はヒロトモと結ばれ、勝ち組になったのにと。

 良い男を取り込み、自分の血を引く子供も生まれて。

 怪物の中での序列の中で上位に食い込んだのだと。

 それなのに、居場所が失われていこうとしている。



 ミオの序列は怪物社会の中でのもの。

 この社会が崩壊したら何の意味もない。

 どれほどの高位にいようとも、土台となる枠組みがなくなれば消滅する。

 今、ミオはその危機に直面していた。



 失われるのは立場や地位だけではない。

 命すらもあやうい。

 既に仲間の多くは消滅している。

 ミオのいるのは奥まった階層なので、まだ敵は見えてない。

 だが、いずれやってくるのは目に見えている。

 急いで逃げなければならないが、逃げ場はない。

 既に大地の中まで敵の領域は及んでる。

 そこを突破する事など出来ない。



 仮に包囲を抜けたとしよう。

 だが、どこに行けば良いのだ?

 ミオは既に大地のエネルギーによって生きている。

 天空の領域では死ぬしかない。

 天空のエネルギーはミオにとって毒に等しい。

 そんなものを浴びれば、確実に死ぬ。



 そもそも大地がなくてどうやって生きていくのか?

 肉体のない霊魂になっても、大地のエネルギーの中でならば存在していられる。

 だが、それは地球があってこその話。

 天空の、宇宙に飛び出してしまったらそこで終わる。

 あとは死ぬしかない。

 肉体を失うだけではない、霊魂を消滅させる事になる。



 生き残りたければ、敵を撃退するしかない。

 それが出来るならとっくにやっている。



 もう終わってるのだ。

 逃げ場もない、敵は攻めてくる。

 なら、あとは死ぬだけ。

 それまでの時間を稼ぐ事くらいしか出来ない。



 それでもミオはあがいていた。

 ミオのいる階層にはもうすぐ敵がやってくる。

 時期に滅びるだろう。

 だが、もっと奥、中心に行けばどうにかなる。

 そこにいる怪物の強さはミオも知っている。

 それらのいる場所に逃げ込めれば、おそらく生き残る事が出来る。

 それだけ強力な存在が地球の中心にいる。

 そこにこもれば、敵を撃退する事もできる。



 その為にミオは動き出す。

 なんとしてでも奥地に入ろうと。

 問題なのは、侵入して来た敵だ。

 それらをどうするか。

 しかし、これは優秀な手駒がどうにかしてくれる。



「母さん!」

 その手駒がミオに声をかける。

「ここはもうだめだ。

 逃げてくれ」

 そういう子供達。

 ミオが出産したヒロトモの子供達。

 父親に似て実に優秀だ。

 高い能力をもっている。

 いずれも天使にまで成り上がってくれた。

 この戦闘力がある駒ならば、時間を稼いでくれるはず。

 しかも、自発的に助けようとしてくれる。

 まことに、子供というのは便利な道具だった。



 そんな子供達に守られながら、より深い階層を目指す。

 逃げ込む多くの怪物達と共に。



 しかし、人々の侵攻は早く。階層の制圧は進む。

 階層に宇宙からのエネルギーが届き、階層そのものが天空の領域となる。

 その中に取り込まれ、ミオも足を止めるしかなくなる。

 囲まれた天空の領域に飛び込めば死ぬ。

 逃げ場はもう失われた。



 しかし、子供達はそんなミオを救おうとする。

「いくよ、母さん」

「少し我慢して」

 この200年の間に生まれた子供達は、我が身を盾としてミオを守ろうとする。

 天空の領域の中を突っ切って、奥の階層へと向かおうとする。

 そんな事をすれば、子供達は確実に死ぬというのに。

 親であるミオを守ろうとする。

「ありがとうね」

 そんな子供達にミオも礼を言う。

 口にするだけなら何の労力もいらないのだから。

 それで納得してくれるというなら、いくらでも言葉など吐き出そうというもの。



 ここで手駒を失うのは痛い。

 しかし、失ったらまた生めば良い。

 残念ながらヒロトモはもう死んだようなので、ヒロトモの子供はのぞめない。

 しかし、種など他にいくらでもある。

 残った者たちから優秀な子種をもらえば良い。

 この段階で生き残ってる者ならば、ヒロトモと同じかそれ以上に優秀な種なのも確実だ。

 それらを注ぎ込んでもらえば、また手駒は作れる。

 ここまで考えて、ミオは見切りをつけた。

 自分の子供達に。



 そんな母の思いなど知らずに、子供達はミオを抱えるようにして天空の領域に飛び込んでいく。

 その先にある、奥の階層を目指して。

 自分たちはそこにたどり着けないとわかりながら。

 ただ、ミオだけを生かすために。



 そんな子供達に抱えられながら、ミオは天空の領域の中を進んでいく。

 生まれた多くの子供達が、障壁となってミオを守っていく。

 それらが外側から一人、また一人と消滅していく。

 ミオはその中心で守られながら奥へと向かう。



 だが、その前に子供達が完全に消滅する。

 最後の一人もミオの代わりに息絶えて。

 子供の全てを犠牲にして、それでもまだ次の階層には届かない。

 制圧された領域はそれだけ大きく広かった。

 注ぎ込まれる天空のエネルギーも。



 そのエネルギーの中で、ミオは消えた。

 霊魂すらもかけらも残さず。



 その様子を見て、イツキはただ淡々と声を漏らした。

「ふーん」

 特にこみ上げるような感情はない。

 ただ、心の中にあった淀みやつかえが消えた。

 気分がすっきりとした。

 思ったよりも自分が気にしていたのだと、このときイツキは初めて知った。



 そして、爽快感をおぼえた。

「良かった」



 そんな一幕もありながら、地球の攻略をすすめていく。

 残すは、中心とその周辺だけ。

 攻略まであともう少しとなっていた。






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