91 明日のための避けられない犠牲
地脈・霊脈に飛び込む第一陣。
世界各地から侵攻を開始した人類は、内部を次々と制圧していった。
内部には当然怪物がひしめいているが、これらはもう障害ではない。
超能力に目覚めてる人類は怪物と同等に戦う事が出来る。
上位の怪物ならともかく、標準的な存在なら負ける事はない。
中に飛び込んだ者たちは、怪物をものともせずに進んでいく。
地脈というエネルギーの中、怪物が有利なのにもかかわらず。
地脈は怪物に力をもたらす。
また、肉体を得ていない、霊体の怪物もひしめいている。
にも関わらず、人は怪物を撃退して進んでいく。
立ち塞がる怪物をものともせずに。
それだけ人類の力が増大しているということ。
超能力が当たり前になって既に200年。
新たに生まれた世代は超能力が当たり前になっており、手足のように扱う。
その使い方は、大地の目覚めとともに超能力に目覚めた者たちよりも優れている。
このようなものが200年の間に大勢生まれている。
怪物相手に負けるものはない。
たとえ怪物の方が能力が優れていてもだ。
力の使い方次第で勝ち目も出てくる。
また、人々は怪物よりも多い。
人数の多さで圧倒できる。
とはいえ、地脈や霊脈の内部という迷宮の中。
物理的なものではないが、広さには制限がある。
一度に展開できる人数には限りがあり、この点では人間の方が不利になる。
はずなのだが。
今度は怪物の大きさが問題になる。
人間と同等の大きさの怪物ならともかく。
強力な怪物の大半は巨体をもっている。
全長10メートルに及ぶ獣型とか。
身長10メートルにもなる巨人とか。
これらは一匹で人間何人分もの広さをしめてしまう。
当然、迷宮同然の地脈・霊脈の中でそれほど多く展開出来るわけがない。
これに対して人間は何倍もの人数で立ち向かう事が出来る。
強力でもたった一人に対して、何人もの力がを併せて立ち向かえる。
怪物の強さが、場所の広さによって制限されていく。
これが地表であれば別だっただろう。
大勢の怪物に対して、人々は蹴散らされていく事になる。
地表で戦ってる頃は、こうした事も発生していた。
だが、広さに制限のある地脈・霊脈の中ではこうした事は起こらない。
本拠地でありながら、怪物は苦戦を強いられる事になる。
だが、エネルギーそのものは延々と供給される。
地脈や霊脈というエネルギーを糧とする怪物だ。
魔法や超能力といった力を無限に使う事が出来る。
弾薬を無限に継ぎ足される機関銃のように。
しかし、これは人々とて同じこと。
人々が進む度に、天空のエネルギーが地球の中に浸透していく。
人々の侵攻に続く形で、一拍遅れる事にはなる。
しかし、超能力に必要なエネルギーは確保出来る。
この点でも人類は怪物と互角の状況を作り出していった。
人類に負ける理由はない。
あるとしたら、突発的に何かが起こる事くらい。
しかし、それとて何の問題もなく対処が出来る。
イツキの能力によって。
全てを見通す目。
この能力によって何がどこでどのように起こるかがわかる。
対処方法もすぐに見つかる。
必要な情報は全て目が教えてくれる。
この能力はいまだに健在で、イツキに様々な事をもたらしてくれている。
それでも対処出来ない事もあるが。
ならば逃げれば良い。
勝てないところに居座っても無駄でしかない。
道は一つではないのだ。
その場で勝てない、通れないなら別の道を進めばよい。
幸い、道はいくつもある。
無理して通らねばならない場所はない。
地脈や霊脈は無数といえるほどに道がある。
これらが絡み合い、様々な通路を作ってる。
この交わりの中で、効率のよい所を通ればいい。
その中で最も効果的な道をイツキの目は見ている。
その通りに進むだけで敵を攻略していける。
解決方法を見ながら事に及んでるのだ。
負けるわけがない。
勝利の約束された戦い。
イツキ達人類はこれを淡々とこなしていく。
それでも避けられないのが犠牲だ。
どうしても何人かは命を落とす事になる。
これは避けようがない。
また、戦いの中で誰が死ぬのかはわからない。
全体の流れは決まっていても、その中でどのような動きが発生するかはわからないからだ。
小さな部分では様々な可能性が発生する。
これはどうしようもない。
わかるのは、何人くらいの犠牲が出るかという事。
その内容がどうなるかは、結果が出るまではわからない。
生き残る可能性の高かった者が死ぬ場合もある。
犠牲者の数も、予想範囲の中で多いのか少ないのかはわからない。
それでも、最終的な勝利はゆるがない。
犠牲の大小と、結果が出るまでの時間がどれだけなのかが違うだけ。
なので、勝敗について悩む必要はない。
ただ、犠牲の数だけはどうにもならない。
これがせめて少ない事を願うだけである。
それでも、死の悲しみは大地が目覚める前ほど大きくはない。
死んでも空に帰るだけ。
霊魂は宇宙というエネルギーに満ちた空間の中で生き続ける。
ただ肉体を失うだけでしかない。
それでも、死が悲しい出来事なのは変わらない。
霊魂との会話もふれあいも出来るとはいえだ。
肉体を失い、接点が減るというのは寂しい。
そのような事は出来るだけ無くしたいとは誰もが考える。
それが出来ないからこそ、嘆き悲しむのだ。
このような犠牲が出るのも、全ては怪物がいるせいである。
怪物という危険物がいる限り、平穏は訪れない。
かつての地球でありふれていた侮蔑と虐待がはびこってしまう。
この原因である怪物を取り除かないかぎり、人々に平穏は訪れない。
今ここでの犠牲に涙をのむか。
継続的な悲劇を受け入れるか。
人々は前者をとった。
だからこそ、戦いを止めるつもりはない。
「進め」
地表からイツキは指示を出す。
その声は、意思は宇宙のエネルギーを通って全体にもたらされる。
イツキが見ている最適解とともに。
攻略情報たるこれをもとに、人々は動いていく。
我が身を犠牲にすることをいとわず。
己の命が、明日の誰かにつながると信じて。
「────すまん」
そんな人々に、イツキはただ小さくあやまる事しか出来なかった。
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