85 負けるべきところでは負けるべき、他で勝つために
「こんなもんか」
目に飛び込んで来る様々な情景。
そして未来への道筋。
眺めながらイツキは今後の指示を出していく。
ヒロトモという強力な敵がいる場所での勝利は不可能。
これは早々に分かってる事だった。
だから、ヒロトモのいる戦場では勝利は狙わない。
可能な限り敵に出血を強いて、犠牲を出させる。
これに集中している。
負けない戦い。
勝利は求めない、ただ、負けずに粘るだけ。
望むのは相手の消耗。
少しでも出血をさせ、少しでも多くの敵を倒す。
怪物の数を減らす。
最終的には撤退する。
その場を明け渡す。
残念だが、これは仕方がない。
どのみち、維持出来る訳がないのだから。
それだけヒロトモは強い。
だが、負けると分かってるなら対応も出来る。
別の場所で勝てば良いと。
実際、これは上手くいっている。
勝てる場所ではイツキ達は勝っている。
それも多方面で。
むしろ、こちらの方が重要だったりする。
その為に、敢えて地脈や霊脈の噴出点を明け渡したのだ。
確かに地脈や霊脈の噴出点を奪われるのは痛手になる。
だが、他の部分で十分に補う事が出来る。
手に入れてる重要拠点の数ならばイツキ達の方が多いのだから。
全体で見れば、獲得してる利益の方が大きい。
それに、奪われたのならば取り返せば良い。
何時までも敵の手に渡すつもりはない。
頃合いを見て取り戻せば問題は無い。
ヒロトモがいる戦場では負けても、他の怪物が相手なら勝てるのだ。
無理してヒロトモに勝つ必要はない。
今回もそんな戦いの一つだ。
味方には死なない程度に頑張ってくれと伝えてある。
負けて構わないから生き残ってくれと。
「意地を張るのはここじゃない」
どうしても負けられない戦いがあるにしても、それはここではない。
そして、どうしても勝っておきたい場所。
さほど重要ではないけど、勝っておいた方が良い場所。
その戦場の様子はイツキの目にしっかり届いてる。
勝利という形で。
敵は潰走、場所は制圧。
味方の損害も少ない。
この上ない勝利だ。
それでも戦死者は出る。
いたましい事だが、どうしても避けられない。
せめてこの数が少なくなるようつとめているが。
無くす事は出来ない。
イツキの能力でも、これ以上はどうしようもない。
最善を見る事は出来ても、無傷で終わらせる事は出来ないのだから。
それでもやっていくしかない。
平穏を手に入れるためにも。
「それまでは幸せにやってろ」
遠くに見るヒロトモとミオ、その間に生まれた赤子。
状況が悪化してるにも関わらず、見える範囲の幸せを堪能してる暢気さ。
それに呆れながら思う。
「これが幸せなのか?」
怪物のヒーローとヒロインの姿は、単なる現実逃避にしか見えなかった。
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