83 人と怪物の戦場 2
燃え上がる炎のようなエネルギー。
魔力や霊気と呼ばれる、生命力の輝き。
それを放ちながらあらわれた敵。
天使と呼ぶにふさわしい姿がそこにあった。
とはいえ、神の使いというわけではない。
少なくとも神話や伝承にあるような神の僕ではない。
それは怪物でしかない。
人類の敵だ。
実際、怪物の一種である。
姿形こそ人間と同等であるが。
だが、本質や性質は人とは違う。
精神性は怪物と同じ。
すなわち、強弱で判断する野蛮性の持ち主。
今もそれは、大地の力の中から現れて、まわりにいた者達を攻撃しようとしている。
炎のように放ってるエネルギーを周囲に拡大しながら。
「死ね」
宣告と共にエネルギーが放たれる。
炎の性質を伴って。
炎はそこにある何かに付着する。
つきまとって消滅させる。
灰になるまで消し去る。
殺戮と殲滅の代名詞。
それを容赦なく放ち、人々を焼き尽くそうとする。
そんな天使の力を見て、イツキはすぐに解析と分析を始める。
相手の力がどういったものなのか、どうやって用いてるのか。
その全てを調べていく。
弱みを見つけていく。
同時に自分でも使えるようにしていく。
調べ上げればイツキも相手の力を使えるようになる。
この能力を使って、イツキは様々な能力を身につけてきた。
怪物から様々な能力を奪ってきた。
今も同じように天使の全てを見極めようとしていく。
だが、それもすぐに終わる。
見て分かったのだが、相手から学ぶものはない。
天使が使ってる能力は、今までイツキが見てきたものと同じ。
力の強さは絶大だが、本質的な部分は同じ。
これといって見るべきものはない。
「なんだ」
少しは得られるものがあると思っていたが。
残念な結果になった。
もっとも、これは今回だけではない。
怪物との戦いでは最近ずっとこの調子だった。
怪物の用いる能力は確かに様々だ。
しかし、ある程度の共通点もある。
単に威力が違うだけという事もある。
今、目の前の天使が放ってる火炎のように。
火炎そのものは今まで使ってきた怪物もいる。
これらと天使が使ってる能力に大きな違いはない。
ただ、威力の差があるだけだ。
この威力は、使ってるものの強さに応じたもの。
天使の場合、持ってる霊気や魔力といった力が大きい。
だから周囲に大きな火炎をまき散らせる。
しかし、それだけだ。
ただ強いだけ。
特にめぼしい部分はない。
目新しい何かもない。
ようは、たき火と同じ。
火炎放射器と同じ。
そして、対処も同じ。
既にこれまで何度も見てきた攻撃手段だ。
対策も出来上がっている。
相手が火炎なら、やるべき事は一つ。
水をかければ良い。
火炎は水によって消える。
単純明快な道理だ。
特別な何かなど存在しない。
周りにいる人々は、即座に対応を開始している。
自分たちの周囲に水の性質を持つエネルギーを張り巡らせていく。
霊気や魔力といった力を、水に変換していく。
それだけで火炎を防ぐ事が出来る。
加えて、火炎を燃え上がらせてるものを断ち切っていく。
火炎は単独では存在しない。
燃える何かがあってはじめて存在する。
それは空気であったり薪であったり。
燃やせるものが無いなら、火は発生しない。
そんな火炎の素になるものを消していく。
この場合、大地から組み上がってくる膨大なエネルギー。
これを天使が汲み上げて、火炎としている。
このままでは終わることなく炎が周囲にまき散らされる。
そこで、まずは天使と大地を切り離す。
天使の周囲に断絶を作り出していく。
その為に、まずは空からエネルギーを呼び込む。
大地の対極にあるエネルギー。
これによって大地のエネルギーを消滅させていく。
人々が誘導するエネルギーが天使と大地の間に入っていく。
膨大なエネルギーは天使の周囲を覆い、大地と断ち切っていく。
さすがにまずいと思ったのか、一度大地の中に戻ろうとする。
しかし、イツキがそれを阻む。
「逃げるな」
周囲のエネルギーを動かし、天使の退路を断つ。
使ってるのは大地のエネルギー。
これを動かし、天使の動きを封じる。
「なぜ────」
驚愕する天使。
だが、別に不思議な事はない。
イツキの能力は見通す事。
そこにあるものの使い方や動かし方も見通す。
だから天空のエネルギーを引き寄せる事が出来た。
しかし、天空の力だけが使えるわけではない。
分析や解析が出来たなら何でも使える。
それこそ大地のエネルギーであってもだ。
とはいえ、効率は悪い。
相性というのだろうか。
イツキの性質や能力だと天空のエネルギーを引き込む方が楽だ。
比べると大地のエネルギーを動かすのは手間がかかる。
なので好んで使う事もない。
とはいえ、時と場合によっては遠慮する事なく使う。
今のような場合などにはだ。
逃げようとした天使を阻むなら、天空のエネルギーを用いた方が良い。
だが、引き込むには時間がかかる。
大地のエネルギーが邪魔をするからだ。
ならば、そこにある大地のエネルギーを利用した方が良い。
効率は悪いが、即座に使う事が出来る。
この大地のエネルギーを使って敵を阻む。
敵の力を使って敵を倒す。
逃げ場を失った天使はあわてる。
無尽蔵に引き出すことが出来たエネルギーも失った。
今、天使は己の持つ魔力や霊気といった力のみで行動するしかない。
逃げ場だった大地すら失って。
そして、生き残る可能性はない。
力を失った天使と違い、イツキは天空より力を引き出し続けている。
瞬間的にはともかく、持久戦になったら勝ち目はない。
天使の魔力は消費する一方だが、イツキ達は延々と補充と補給を受け続けるのだ。
「じゃあな」
膨大なエネルギーが空から降りてくる。
大地を遮る事で天空のエネルギーが通りやすくなった。
その巨大なエネルギーが天使を覆う。
瞬間的に魔力を放って抵抗する。
一瞬だけ天使の周囲を魔力が覆った。
ほんの少しの間だけ天使は生きながらえる。
しかし、覆った魔力も天空のエネルギーによって破壊される。
滝のように降り注ぐエネルギーの中に押しつぶされ、天使は消えていった。
残った怪物も同じだ。
逃げ場を失い、天空の値エルギーにさらされていく。
そのエネルギーが怪物を消し去っていく。
逃げ込もうにも、大地のエネルギーで作られた壁が阻む。
そんな怪物を空が飲み込んでいく。
一瞬にして怪物が消えていった。
あたりには静寂と平穏が残る。
湧き出る大地のエネルギーも、降り注ぐ天空のエネルギーによって打ち消される。
大地の中まで入りこめないが、地表に出るのを防いでいく。
地表にあふれるエネルギーを減らしていく。
周辺に満ちる大地のエネルギーも消えていく。
供給源が無くなったのだ、残ったエネルギーもいずれは無くなる。
空から降り注ぐエネルギーによって打ち消されていく。
怪物も生きられなくなっていく。
空に覆われた場所は怪物をむしばむ。
体も霊魂も打ち消されていく。
_______________________
気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を
_______________________
寄付・投げ銭はこちらへ
ファンティアなので登録必要だけど
↓
【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457
これまでの活動と、
これからの執筆のために。




