82 人と怪物の戦場 1
「いくぞ」
仲間を率いてイツキは進軍をはじめる。
天空と大地の領域の境目。
そこを踏み越えていく。
まずは天空の領域の方を拡大する。
より多くのエネルギーを空から引き寄せる。
これにより大地のエネルギーを押しのける。
その分だけ天空の領域が広がる。
もちろん怪物側も対抗する。
大地からエネルギーを引き寄せ、天空の力を押し返そうとする。
しかし、呼び込むエネルギーの量も質もイツキ達の方が上回る。
引き寄せる者達の数が違う。
空から降ってくるエネルギーは確実に大地のエネルギーを押しのける。
怪物側は確実に後退していく。
大地のエネルギーが湧き出る地点へと。
今回の戦いは、単なる場所の確保ではない。
大地のエネルギーが噴出する地点の制圧だ。
そのため大地のエネルギーは他の地域よりも格段に多い。
それを押さえつけるために、可能な限り多くの人々を集めている。
おかげで他の地域はかなり手薄になっている。
怪物に取り戻される場所も出てくる。
だが、これらは既に見えている。
そうなると分かっている。
それでもイツキは噴出点の制圧を開始した。
ここを制圧すれば、近隣から大地のエネルギーを枯渇させられる。
一時的な縮小に追い込まれても、たやすく取り返す事が出来る。
むしろ、ここを放置していたら、どれだけ天空の領域を拡大しても意味がない。
簡単に奪われてしまうのだから。
絶対にここは避けて通れなかった。
確実に潰して、今後に生かさねばならない。
ここを制圧出来れば、より大きな活路を開ける。
だから戦力の大半をここに集めた。
大地と怪物を退けるために。
それは敵も分かっている。
だから大地の中を通って各地から怪物が集っている。
この場所を死守するために。
地表でも各地から怪物が押し寄せてきている。
決してこの場を奪われまいと。
攻防は一進一退を示していく。
攻め込んだと思ったら押し返される。
押し込んできた敵を撃退していく。
それでもわずかながらにイツキ達の方が優勢だった。
少しずつだが、確実に大地の領域を制圧していっている。
大地のエネルギーの噴出点を押さえ込もうとしている。
とはいえ、敵も黙っているわけではない。
噴出点である地脈や霊脈の漏れ出る場所。
その奥には膨大な大地のエネルギーの流れがある。
ここを通って怪物が溢れてくる。
増援が次々にあらわれる。
いずれも異形・異様のバケモノばかりだ。
獣や虫の姿はもとより。
これらが歪に融合したありえない姿をとっている。
頭だけ動物や虫になってる人間くらいならまだ良い。
胴体のあちこちから獣や虫の頭をはやしたものとか。
手足が何本も生えてるとか。
自然ではありえない姿をもった怪物があらわれている。
一つの肉体に複数の怪物が入り込んでるためだ。
こうした融合体というべき存在もあらわれてきている。
これらが人々の前に立ちはだかり、大地の噴出点を守ろうとする。
これらを退け、人々は怪物の出現する場所を消そうとする。
強靱な肉体を持つ怪物は、その力で人々を粉砕する。
火炎や暴風という超常現象も発生させる。
これらが人々を巻き込んで、多大な損傷を与えていく。
負けじと人々も超能力を発動させていく。
精神に衝撃を与え、念動力で打撃を与える。
発火能力や電撃によって怪物を打ち倒す者もいる。
誰もが己の持つ能力を使って怪物を撃退していく。
これらの指揮を執りながら、イツキは勝利を目指していった。
イツキの持つ全てを見通す目は、勝利への道を見つけている。
敵がどう動くのか、自分たちはどう動けば良いのか。
これらの全てが見えている。
一見して劣勢に見えても、それは勝利のための布石であったり。
優勢な部分ではさらなる勝利を重ねたり。
人々の損害を出来るだけ出さずに。
怪物には多大な打撃を与えながら。
勝利へ向かっていく。
ただ、先を見通すからこそ見えてしまうものもある。
これからあらわれる巨大な敵の姿も。
地中からあらわれる敵の増援の中でも、最大最強といえる存在。
それが出てくれば、味方にも多くの被害が出る。
避ける事の出来ない脅威が迫る。
対処法はあるにはある。
損害を減らす事は出来る。
だが、なくす事は出来ない。
これが単に怪我や傷を負うだけなら良い。
しかし、避けられない死者も出てくる。
それが辛いところだった。
だが、そんな死者も出来るだけ減らす。
無くせなくても増やしはしない。
そんな気概でイツキは指揮を続ける。
テレパシー、念話を通して戦場全体に指示を飛ばしながら。
その時が来る。
大地の中から強力な敵がやってくるのが見える。
まだ出現する前に、指示を出す。
「下がれ」
前線を下がらせ、敵の出現に備える。
それに併せて怪物も前進するが、それは後方からの援護射撃で遮る。
敵と味方の間に隙間が出来た。
怪物との距離が出来たことで、後退もなめらかに行われる。
地脈・霊脈との噴出点の間に距離が出来る。
この空間が後に続く衝撃を緩和させる事になる。
強力な存在があらわれる瞬間の。
それは、出現と同時に周囲に威圧的な衝撃を放つ。
意図したものではない。
膨大な力が周囲に溢れただけだ。
それだけ出てきた怪物は巨大な力をもっている。
存在するだけで周囲を圧倒するほどに。
「出たな」
予見していた存在。
それが目の前にあらわれる。
巨大な霊気をまとった危険な存在。
姿形は人と変わらない。
それでも本質や性質は怪物だ。
そんな敵は、あふれる霊気が炎のように吹き出して揺らめいている。
それは巨大な翼が幾重にもかさなってるように見えた。
神話や伝承にある存在。
炎に置き換えられた人間がそうなるという。
また、吹き出るオーラは翼のようにも見えたとか。
そんな存在がイツキ達の前にあらわれる。
「────天使」
人の姿をもった怪物。
それは人にありえない巨大な霊気をもってあらわれた。
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