8 その頃のヒーロー達 1
イツキが車で逃げ出す前。
空にオーロラがあらわれ、人が怪物に変化していた時。
それを見ていた者達はおおよそ二つに大別された。
一つは、この状況を全く把握出来ず、右往左往してる者。
これらは窓の外の光景に驚き、同級生の変化を見て呆気にとられていく。
そして何も出来ずに命を終えていく。
仮に生き延びても、状況を好転させる事のない傍観者にならざるをえなくなる。
大半はこちら側だった。
しかし、そうでなもう一方がいる。
イツキと同じく何らかの能力に目覚めた者達。
彼等は手にした、身につけた能力を使って目の前の問題に対処しようとしていった。
イツキが脱出した教室においても。
「あぶない!」
そう叫んで少年が飛び出す。
目の前で変化した怪物に向かって。
その手から光りを放ちながら。
少年が手にした光。
それは棒のように、剣のように見えた。
振りかぶった少年は、躊躇わずに怪物に叩きつけていく。
怪物が近くにいた者に襲いかかろうとしていたからだ。
残念ながらその手が届くより早く、怪物の方が動いていた。
近くにいた同級生は、怪物の鉤爪を頭にくらっていく。
一撃で頭が吹き飛んだ。
おかげで痛みすら感じる事無く死ねたのは、不幸中の幸いだろうか。
苦痛にのたうちまわらずに済んだのだから。
しかし、そんな怪物も振り下ろされた光りの棒によって一撃で死んでいく。
頭に叩き込まれたそれは、接触したところから怪物を融かしていった。
バーナーから噴出される炎で鉄が溶かされるように。
加害者たる怪物は瞬時に被害者となって命を終えていった。
しかし、これで終わりではない。
教室の中には他にも怪物がいる。
それらを倒さない限り危機は続く。
残り2匹。
光りの棒を生み出した少年はそれらに向かっていく。
こうして教室の中に死体が一つ出来上がり。
後を追って怪物3匹も死んでいく。
その死体はどういうわけか霞のように消えていく。
粉のようになって、風に吹き飛ばされるうように。
そんな異様な最後を見ながら、教室にいる者達は察していく。
異常事態が起こってると。
そして。
そんな中で救いとなる存在が同じ教室にあらわれ。
彼によって生き残った自分達は救われたのだと。
危機は続いてるが、そんな事実が彼等の救いになっていった。
ただ、まだ外には怪物がいる。
この事にまで考えが及んでる者はいない。
そして、何よりもだ。
教室から出て行った者がいる事に気付いてる者もいない。
そこまで気が回る者も、気づいてもこの状況で省みる必要があると考える者もいない。
教室にいる少年少女達は、目の前で起こった出来事について考えるだけで精一杯だった。
それが幸か不幸なのかは分からない。
だが、この時点での彼等には余裕というものはなかった。
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