77 無駄な努力ではない、害悪をなしてる、そんな者をどうして放置する必要があるのか?
「やってるなあ」
ヒロトモが空から降りてくるエネルギーを遮っている。
それはイツキの目にも見えていた。
「ようやるよ」
我が身を犠牲にしてエネルギーの中に突入する。
そうして大地のエネルギーを呼び込む。
背後にいるミオに回復をしてもらいながら。
苦痛にまみれたその行為には呆れるしかない。
いいように利用されてる。
イツキの目にはそうとしか映らなかった。
大地に、そしてミオに。
そそのかされてるというか、たぶらかされてるというか。
「ようやるよ」
同じ言葉が何度も出る。
生死がかかってるのだから当然ではある。
ヒロトモもミオも大地のエネルギーによって生きている。
そんな彼等にとって、大地を遮る空の力は脅威でしかないだろう。
拡大する天空の領域によって居場所を奪われているのだ。
抵抗するのは当然だ。
ただ、ならば大地と縁を切れば良い。
天空の力を受け入れれば良い。
そうした方がよっぽどマシだ。
無理して大地の側にいる必要がない。
ただ、それが出来ないのもイツキには分かっている。
ヒロトモは大地の力にひたりすぎた。
体のつくりそのものが大地に根ざしたものになっている。
もう天空の側になる事は出来ない。
天空のエネルギーを受けたなら、その瞬間に体が崩壊していく。
だからこそ、天空の領域に入った瞬間に苦痛に苛まれているのだ。
怪物化してると言ってよい。
もともと素質があったのだろう。
そんな者は空の下では生きていけない。
姿形が人間であったとしてもだ。
細胞の質、なにより霊魂の性質が空と相容れない。
そんなヒロトモは大地と共に生きていくしかない。
大地に取り込まれたというべきか。
ミオにいたっては言わずもがない。
救いもなにも、元々がどうしようもない。
こちらもなるべくしてなったというべきだろう。
空と相容れないのだからどうしようもない。
そんなヒロトモやミオは、大地の力を保つしかない。
空の力を撥ねのけるしかない。
これからも生きていくために。
そのために命がけの作業をするしかない。
必死なのだ。
それは分かる。
目から伝わってくる。
彼等の励む姿が。
その異図や思いが。
あらゆる事を見通す目は、ヒロトモやミオの行動をしっかりとらえてる。
その心境も。
だからといって同情はしない。
その思いの全てが邪悪なのだから。
「怪物を救ってどうすんだよ」
生きとし生けるもの。
その中に怪物を含めてどうするのか?
他者に危害を加える存在を生かしてどうするのか?
生きてる限り様々な存在の脅威になる物体を置いてどうするのか?
そこにいるだけで他の者達は危険にさらされる。
そんな状態を続けてどうするのか?
みんなが生きられる場所。
それは、誰かが地獄に落とし込まれるという事だ。
様々な者達がいるというのは、悪辣非道な輩がのさばるという事だ。
こういった者を排除しないで同居させるという事だ。
被害者が拡大するに決まってる。
分別や選別をしなければならない。
でなければ、普通に生きてる者達が被害をうける。
それを理解せずに嫌悪する。
だから地獄のような世界が出現する。
ヒロトモ達はそれが分かってない。
ただただ全ての存在を平等に扱おうとする。
「それが大地なんだろうけどさ」
イツキにとっては迷惑なだけだ。
空の下で生きる者達にとっても。
イツキが救った者達の全ては怪物の脅威にさらされていた。
危険な存在に虐げられていた。
怪物と隣り合っていたために。
怪物の要素をもつ者達のせいで。
今、ようやくそこから解放されたのだ。
ようやく平穏を手に入れたのだ。
大いなる空によって。
これを失うわけにはいかない。
安寧を手放したい者はいない。
誰もが一緒という地獄を再び出現させるつもりは誰にもない。
だから空の下で生きる者達は動いていく。
空の力をもっと地上におろそうと。
自分達の居場所を守ろうと。
二度と怪物に虐げられないように。
ヒロトモが、他の怪物が必死になって空の力を遮ろうとする。
その間に他の場所で天空の領域が作られていく。
空に救われた者達によって。
空によって能力を引き出された者達によって。
「少し遅れるけど、これならどうにかなるか」
事の進捗が目に飛び込んでくる。
増減を繰り返す天空の領域。
しかし、増加速度の方が勝っていく。
空によって目覚めた者達によって、力が次々に呼び込まれていく。
その力によって怪物が滅していき、その分大地の領域を守る者達は減っていく。
やがて空が地表を覆う事になる。
その時、人はようやく怪物という脅威から逃れる事が出来る。
時間はかかるが、その時は確実にやってくる。
イツキの目はその瞬間を確かに見ていた。
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