67 敵対勢力 市役所 3
怪物同士が殺し合い、町の至るところが破壊されていく。
残った人間がそんな騒動に巻き込まれないよう、建物の中に潜んでいる。
ギリギリ保っていた治安が完全に崩壊していく。
とはいえ、これがあるべき本来の姿。
それが表に出てきただけでしかない。
怪物の暴行を放置し、人々に我慢を強いていた。
そうして出来ていた見せかけの平穏。
それが崩れただけ。
画策したのはイツキだが、火種があったから燃え広がっていったのだ。
何もないところに問題を起こしたわけではない。
争いあってる怪物共は、同類同士で次々と殺し合っていく。
巻き込まれて死んでいく人間もいる。
イツキはそこに最後の一押しを与えていく。
「市長達が逃げるぞ!」
そんな叫び声をあちこちであげていく。
「食料を持ち出すつもりだ!」
「残った備蓄だ!」
「急げ!」
そこかしこで叫び声があがる。
もちろん嘘である。
少なくとも市長達はまだ残ってる。
だが、真相などどうでも良い事。
叫び声を誰かが信じればそれで良い。
最初に動いたのは誰だったのか。
それは分からない。
だが、誰かが最初に動いた。
叫び声を信じたわけではない。
だが、本当かどうかと疑いはした。
だから確かめようとした。
市役所へ行って。
それを見た別の誰かも追い掛ける。
まさか本当なのかと思いつつ。
そうして何人も市役所へと向かっていく。
それを見た他の者が、更に他の者もと段々と多くの者達が続いていく。
最後には市役所近辺にいた多くの者が走っていった。
市役所へと向けて。
そうなると誰もが叫び声の内容を口にしていた。
「市長が逃げたぞ!」
「食料を持って行かれた!」
「させるかよ!」
「逃がすか!」
誰もが市長が食料を持って逃げたと思いこんでいた。
市役所に怪物が殺到する。
食料を求めた人間も。
その全てが市役所に突入していく。
建物の中に残っていた者達は、次々に殺されていく。
もちろん市役所の中の者達も抵抗する。
武器になりそうなものを手に。
怪物化してる者は己の肉体で。
魔術や超能力を使える者はそれを放って。
思わぬ攻防戦が始まっていく。
当然ながら、外から押しよせる怪物の方が多い。
それらは中にいる者達を殺しながら、次々に奥へと向かっていった。
迎撃する者達は勢いに押されて後退していく。
市役所の中に死体が転がっていく。
様子を見ているイツキと仲間達は、騒動が落ち着くのを待つ。
あちこちで叫んだデタラメは望んだ通りの効果をもたらしてくれた。
普通なら信じられる事はなかっただろう。
だが、切羽詰まったこの状況で、生死に関わる食料問題が絡んでいる。
まさかと思いつつも、本当だったらと心配する者も出て来ただろう。
そういう者が動きだし、つられて他の者も動きだす。
連鎖反応が起こって人々が一気に動きだす。
おかげで市役所は人に囲まれている。
一番最初に突入した怪物に続き、人々が押しよせている。
中では凄惨な殺し合いが起こってる。
怪物の中には壁をよじ登り、最上階まで向かってる者もいる。
そいつは市長室に飛び込んでいる。
イツキの目には、その様子がしっかり見えている。
突入した怪物によって、市長と取り巻き達が殺されてるのが。
その場にいた市長、議員、官僚が皆殺しになっていく。
権力は持っていても、超常能力をもたない一般人だ。
怪物相手に素手で戦えるわけがない。
抵抗する事も出来ずに市長達は死んでいった。
それを知らない者達は、市役所のあちこちを探っていく。
持ち逃げされようとされてるはずの食料を。
自分達で確保しようと。
それが原因で、今度は突入した者達同士で殺し合いを始める。
もはや敵も味方もない。
誰もがすぐ隣にいる者を殺していく。
それが市役所の中で次々に起きていく。
そんな市役所に、あとから来た者達が更に突入していく。
転がる死体を踏みながら。
「ひどいもんだ」
そうなるように仕向けたとはいえ、目の前で起こる事に呆れる。
食料が大事なのは分かるが。
それを求めて集まって、結局は殺される。
哀れというしかない。
その果てに、生き残りがわずかとなったところで、イツキ達も突入する。
残った敵を殲滅するために。
「いくぞ」
声をかけて仲間を促す。
殺し合いの現場に向かい、最後の一撃を加えるために。
それから一時間。
市役所に突入したイツキ達は、最後の生き残りも殲滅した。
怪物になってるものも、まだ人の形を保ってるものも全て。
そして、残っていた物資を手に入れていく。
持ち出される事無く保管されていた食料を。
その他、使えそうな備品や器具を。
ここに置いていても無駄になるのだから。
「こいつは俺達が有効活用するから。
安心して昇天してくれ」
倒れた者達にそう声をかけながら。
最後にイツキ達は、死体を処分していく。
死体に火を付け、そこに地脈・霊脈から引っ張ったエネルギーをぶち込んで。
魔力・霊気の炎は一気に拡大し、市庁舎を包んでいった。
その中にある死体ともども。
そのほとんどが取り憑く事も出来ないほど損壊していった。
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