45 避難先はどこも壊滅していた
近隣の避難所を全て攻略していく。
公民館に小学校、運動場などなど。
様様な所に設置されていた避難所と、そこに集まっていた者達。
それらの多くは既に壊滅していた。
内外から襲いかかる怪物によって。
あるいは人同士の諍いで内部崩壊を起こしていく。
物資の分配でのもめ事はどこでもつきものだった。
そうでなくても、乱暴者が力で物資を強奪してる所もある。
独裁的な統制による秩序で人々を収奪してる所もある。
怪物がいなくても、このようにして壊滅していった避難所は事欠かない。
もっとも、乱暴者や独裁者はいずれも怪物になる。
これらも怪物による被害に分類しても良いのかもしれない。
いずれにせよ、まともな人間などどこにもいないという事の証明でしかないが。
かくて様様な理由で壊滅していった避難所を巡っていき。
ごくわずかな救われるべき者をすくい上げていく。
どの避難所でも数人程度しかいないこれらがイツキの求める人材である。
そういった者達と巡り会えたのはありがたい。
だが、大勢の中でこれだけしかいないという事実には嘆くしかなかった。
他にも、避難所から逃げ出した者達もいる。
内部で怪物が発生して逃げるしかなかったり。
乱暴者や独裁者の圧政から逃れたり。
そういった者達も小数だが避難所の外にいた。
他にも避難所の方が危険だと考えて家に残っていた者や。
職場の方が気心のしれた者が多いからという者もいる。
こういった家や職場に残っていた者達でも、真面な者達は合流していった。
そうでない者は放置していく。
場合によっては先んじて殲滅していった。
いずれ怪物になる要素しか無い者達で固まってる所もあったからだ。
生かしておく理由がない。
まだ人間のうちに、まだ対処が簡単なうちに処分する方が楽だ。
怪物になるのを待って手間をかける理由など何一つない。
そうして各所を破壊・殲滅して、人々を解放していった。
その途中でイツキもいわくのある場所に向かった。
逃げ出してきた中学校である。
正直なところ、乗り気にはなれなかった。
また鬱陶しい連中と顔を合わせる事になると。
だが、避けて通る事は出来ない。
危険になりうる存在は根こそぎ排除するしかないのだから。
イツキの通っていた中学校もその一つだ。
「やるか」
気持ちを無理矢理奮い立たせて動きだす。
仲間を引き連れ、中学校へと向かう。
だが、この意気は空振りに終わる。
イツキが出向いた時には、中学校はもぬけの殻になっていた。
死体は幾つか転がってるが、生きてる者はいない。
生徒に教師。避難者などはどこにもいなかった。
「どうなってんだ?」
気になって能力を使う。
ここで何があったのかを見ていく。
過去の状態、そして、ここにいた者達がどこに向かっていったのかを。
答えはすぐに見つかった。
頭を抱えたくなるような結果が見えてしまった。
「……バカが」
もともとバカだった。
人間のクズだった。
だが、ここまでの事をするとは────。
全てを見終わったイツキは頭を抱えたくなった。
だが、今はもうどうにもならない。
仕方なく、持ち出せるものだけ持ち出してその場を去っていく。
幸い、食料などの物資は残されていた。
もういらないからと放置されたものだ。
ならばイツキ達でありがたく使っていく事にした。
「そこまで化け物になりたいのか」
食料がいらなくなるような状態。
それは、人間を完全に捨て去る事で出来るようになる。
そこまでして人である事を捨てたいのか?
イツキにはそんな考えや気持ちが全く分からなかった。
分かりたくもなかった。
ただ、これで道は完全に分かたれた。
それは悟った。
もともとどうしようもなかったが。
これで完全に軌道修正は出来なくなった。
「しょうがない」
そうは思うが、やるせなさも残る。
もっとどうにかならなかったものかと。
なるわけがない、そう思いつつも。
救いのない結果に向かっていった者達。
それらへの侮蔑と軽蔑を抱きながらイツキは中学校をあとにした。
憐憫や同情など全くしない。
するような者達ではないのだから。
ただ、そのあらましや顛末を仲間に伝えていく。
ここでどのような事が起こり。
どのような選択をしたのかを。
それが何をもたらすのかを。
伝えるイツキも気が重かったが。
聞いた仲間はより沈鬱な表情をしていった。
「バカだ」
「ダメだ、そいつら」
口々にそう言いながら。
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